音を悪くしてまでマルチ・チャンネルが要るのか 既発売の盤で気づくのは、DVDビデオとの兼ね合いからか、5.1ch収録の盤が多いことである。DVDオーディオでは、ハイサンプリング/ハイビットの2chステレオと5〜6chから音を出すマルチ・チャンネルが設定されているが、2chなら192kHz/24bit、つまり
約100kHzまでの周波数が144dBという人間の耳の限界を超えるダイナミックレンジで再生できて、まさに夢の次世代オーディオと言われた。 一昔前のアナログ4chのブームとは次元が違うと思うのだが、記事や論評の流れにはどこか似たところがある。昔の4ch盤には、2つの楽団を前と後に配置して掛け合いで演奏したり、四隅にドラマーを置いてドラムバトルをやるというようなものもあった。クラシックでは、背後でファンファーレが鳴ったり、天上からコーラスが聞こえる趣向もあったが、主にホールの残響や拍手を後方で鳴らした。 もちろん、マルチ規格の政策的な意図にケチをつけるつもりはなく、営業的には、この新しい武器をオーディオ不況脱出の活性剤に利用したいことも理解できる。ただ、音楽とか趣味の世界は、政治や経済からは離れて判断する部分こそが大切な分野である。DVD-Aの規格は多様性があって、多くが制作者側の意向に任されている。営業本位で、折角の高品位音質を生かす地道な努力よりも、安易なサラウンド遊びが流行って、廃れるという顛末を辿らないことを願っている。 |
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コダーイ/
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
作品7 第3・4楽章 アーノルド・イーダス(ヴァイオリン) ヤーノシュ・シュタルケル(チェロ) |
臨場感は後ろから聞こえないといけないのか 昔々、東京のある所に住んで、安いコンサートばかり追っかける貧しい音楽マニアであった。当時は民放TVもクラシック音楽に熱心で、渡辺暁雄/日本フィルの番組などが比較的良い時間帯で放送されていたものだ。この録画は、主に上野の文化会館で行われたが、うまく仕事関係のコネを使って録画会場に入れてもらえるようになった。 |
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DVDマルチのスピーカー配置は左(R)、右(L)、センター(C)、リア左(RR)、リア右(RL)、それにサブウーファー(SW、LFEとも呼ぶ)を左図のように指定している。まさしく臨場感がサラウンドでリスナーを囲む形である。 |
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人それぞれの好みなのでサラウンド効果を否定するつもりはないが、ぜひ望みたいことは、マルチchの盤でも、最高品位の2chも同時収録すること (*1) 、ホールの大きさを強調するばかりでなく、曲に応じてリスニングルームで聴いて違和感のない広がりに収録すること…などである。 |
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確か昔の4chでも、こんな配置を薦めるマニアがいた記憶があるし、私も一時期これで楽しんだ経験もある。ITU(インターナショナル・テレコミュニケーション・ユニオン)推奨の方式とは随分違うのだが、これも趣味の分野では許される自己流アレンジであり、多くのクラシックファンに
ぜひお薦めしたいセッティングである。
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