「はじめに」から引用する
本書は大学 2 ~ 3 年次で学ぶ確率・統計の入門書ないしは参考書であり, 数学をとくに専門としない理工系の学生を対象としている.
Studio RAIN 氏による統計学の有名教科書の誤りに気づく (studio-rain.cocolog-nifty.com) というページの指摘でわかったのだが、私が借りた刷の同書には看過しがたい誤りがある。
3-3 モーメントと変数変換で、p.52 の (3.38) 式が
`g(y) = f(x) (dx)/(dy)`
となっているが、この式は Studio RAIN 氏によれば次でなければならない。
`g(y) = f(x) abs((dx)/(dy))`
理由は氏のページを見ればわかる。
同じく 3-3 モーメントと変数変換の節で、p.51 の [例 3]では、p.50 の [例 2] を引用している。 [例 2] は、確率分布が問題 3-2 問 2 の確率密度で与えられているときのモーメント母関数を求めるものだ。 ここで問題 3-2 問 2 の確率密度は次で与えられる(本書 p.47):
さて、本書に関するブクログ確率・統計 (理工系の数学入門コース 7)(booklog.jp) の感想・レビュー・書評を見てみると、次の質問があった。
モーメント母関数の説明で、モーメント母関数を用いても、問題3-2問2の平均および分散と一致すると記述されているところがありますが、分散は1/6ではなく、1/18であるはずなのですが、どなたかどちらが正解かわかりますか?
少し考えてみて、結論を出した。答は、どちらも正しい。
モーメント母関数を用いても、問題3-2問2の平均および分散と一致すると記述されている
、
とあるがこれは質問者の早とちりである。本書の p.51 を以下引用する。
(前略)`k = 1, 2` について具体的にかくと`E[X] = (2 * 1!)/ (3!) = 1/3, E[X^2] = (2 * 2!) / (4!) = 1/6`これらの結果からえられる `mu, sigma^2` は問題 3-2 問 2 の答に当然のことながら一致する.
ここで、問題 3-2 問 2 の答は `mu = 1/3, sigma^2 = 1/18` である。なるほど、`mu = E[X]` であるが、 `sigma^2 != E[X^2]` である。後者は一般に当然であって、本書 p.49 にある (3.34) 式で `sigma^2` と `E[X^2]` の関係が次のように示されている。
`sigma^2 = E[X^2] - mu^2`
これらの結果から得られる、と本書にあるので、分散 `sigma^2` は `sigma^2 = E[X^2] - mu^2 = 1/6 - (1/3)^2 = 1/18` というように求められる。この 1/18 が問題 3-2 問 2 の答に等しい、というのが本書の意味だ。
p.172 の 第 6 章演習問題を見た。
[5] ボタンをおすと 000 ~ 999 の数字が並ぶ機会がある. この機械で 1000 回ボタンを押すと,777 のように 3 つの同じ数字の並ぶ場合が 15 度あった。(後略)
これはいわゆるスロットマシンの大当たり(ジャックポット)のことをいっているのだろうか。 なお、本書の ISBN は 4-00-007777-5 であるが、偶然だろう。
p.189 の 問題 7-2 を見た。
市場を占有している N と S という 2 つの銘柄がある. (中略)
この N と S という銘柄は具体的なモデルがあるのだろうか、と考えた。結論は、 ウイスキーであれば具体的なモデルが考えられる、ということだった。N と S なら北と南のようで、 具体的なモデルを考える必要はないのはわかっているが、つい考えてしまう。
p.192 の Coffee Break で、ゲームにおける「つき」の確率という題目がある。このような書き出しだ。
筆者はゲームやかけごとが好きで,囲碁,将棋,麻雀,パチンコ,花札, なんでもござれである.
この後は「つき」について麻雀を例に説明されている。そういえば、 著者を知る人は「薩摩ジャンキチ先生」と呼んでいたことを思い出した。
書 名 | 確率・統計 |
著 者 | 薩摩順吉 |
発行日 | 1989 年 2 月 8 日 (第1刷) |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 2300 円 |
サイズ | |
ISBN | 4-00-007777-5 |
その他 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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