「まえがき」から引用する。
(前略)コンピュータ・ソフトが容易に手に入る現在,実験データを手計算で解析することは,時間の無駄と考える人も多い。 しかし,コンピュータの中で,どのような解析が行われているのかがわからずに,単なるブラック・ボックスと考える人と, 概略でも良いから,その解析内容がわかっている人とでは,解析結果の解釈と活用の妥当性に大きな差が出る。 そこで,本書では,あえて,コンピュータの利用を想定せずに,手計算で,解析をしながら,その意味を理解できるようにまとめた。(後略)
私のように、本書の記述に基づいてコンピュータのプログラムを書いて、そのプログラムで値を求めようとする人は、
解析結果の解釈と活用の妥当性
の能力で劣っていると著者からは思われるだろう。
p.79 にある演習問題の 1. はこんな問題である。計算結果は繰り返しのある二元配置の問題を参照のこと。
電子管の電子放射電流がエージング条件 A とカソード B によってどのように影響されるかを実験した結果, 次のようなデータが得られた.(後略)
この問題文の解釈にとまどった。まず電子管
とはどのようなものかが気になった。真空管のことかと思って調べてみると電子管には真空管のほか、
ガス封入管などの気体封入管も含まれることがわかった。次に、エージング条件
ということばがひっかかった。
私は学生時代の卒業実験で、エージングという作業を思いだした。これは、高真空を得るために容器を加熱して容器壁の気体分子を追い出すための作業だった。
ここでは、カソードから電子線を出しやすくするための準備や作業のことをいうのだと理解したが、本当かどうかはしらない。
そして、カソード
である。このことばも久しぶりである。さて、カソードによってどのように影響されるか
ということばを、
どう理解すればいいのだろうか考えてしまった。カソードの形状だろうか、それとも材質だろうか、面積だろうか、あるいはほかの因子だろうか。
そんなことを考えても統計の解析にはまったく影響しないので、我ながらこまったものだ。
以下はp.95 以下、「表 8.4 直交表による実験」を使った計算の復習である。下表は、p.99 の上の表を改変したものであり、 分散の小さな A, E を誤差項にプールする前の表である。なお、本書には寄与率 `rho` が出ているが、ここでは省略した。また、 分散比 `F_0` に 5 % 有意であることを表すアスタリスク * がついているがこれも省略した。その代わりに、P 値を求めて表示している。 本書 p.99 上の表の、要因「加熱時間 C」 の分散比は本書では 75.0 だが私の計算では 74.7... である。 同様に要因「混合時間 D」の分散比は本書では 54.4 だが私の計算では 54.7 である。 このように値が異なるのは、誤差の分散 `V` が本書では 11.2 と書かれているが私の計算では 11.25 (厳密値)であり、本書の分散比を求める計算はこの 11.2 で進めたことが理由と思われる。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
混練強さ A | |||||
分散材料 B | |||||
加熱時間 C | |||||
混合時間 D | |||||
肉厚 E | |||||
誤差 e | |||||
計 |
本書の手続きによれば、有意とならない要因については誤差項をプールすべきである。本書 p.99 の中央にある表が、 誤差をプールした場合の分散分析表である。私も作って下記に載せた。寄与率、アスタリスクの省略、P 値の表示は上と同じである。 また、本書では誤差をプールする前と後を同じ表にしているが、私は誤差をプールする前の値は省いて表示した。 最後の[手順11]は断念した。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
分散材料 B | |||||
加熱時間 C | |||||
混合時間 D | |||||
誤差 e | |||||
計 |
次は p.107 以降の分散分析表である。要因の順序は本書とは異なる。これは、整列の順序の問題である。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
圧力 A | |||||
A×B | |||||
A×C | |||||
A×D | |||||
時間 B | |||||
B×C | |||||
酸化C | |||||
C×D | |||||
スキマD | |||||
振幅E | |||||
誤差 e | |||||
計 |
次は p.109 の分散分析表に対してプールを行なったときの値である。要因の順序は本書とは異なる。これは前項で述べた通りだ。
プールした要因は、A×B、A×C、B×C の 3 つである。スキマ D も分散 `V` が小さいが、交互作用 A×D が有意となっているので、
この交互作用に関係する主効果はなるべくプールしないほうが良い。
という p.109 の記述に従い、プールをしない。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
圧力 A | |||||
A×D | |||||
時間 B | |||||
酸化C | |||||
C×D | |||||
スキマD | |||||
振幅E | |||||
誤差 e | |||||
計 |
こんどは繰り返しのある場合の検定方法をまとめた。 p.113 の[例8.4] の数値を p.116 下側の表にならってまとめた。 本書の通り、1次誤差 e1 を(実験単位内の)誤差 ewで検定した結果 e1 が有意でなかったので、 ewで検定する必要がある。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
レバー A | |||||
A×B | |||||
A×C | |||||
アンカ B | |||||
可動片 C | |||||
端子 D | |||||
1次誤差 e1 | |||||
実験単位内誤差 eW | |||||
計 |
ここまででギブアップである。本当にこのプログラムでいいのだろうか。p.123 にある演習問題 4 をやってみよう。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
加熱冷却速度 A | |||||
A×C | |||||
曲り矯正量 B | |||||
B×C | |||||
曲り矯正方法 C | |||||
炉入荷姿 D | |||||
誤差 e | |||||
計 |
本書ではこのあとA, B, Dについてプーリングを行なっているが私の計算は省略する。
次に3水準にいってみよう。まず交互作用のない、p.126 例 9.1 からやってみよう。繰り返しはある。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
出力バイアス電流 A | |||||
入力トランス抵抗 B | |||||
回路方式 C | |||||
1次誤差 e1 | |||||
実験単位内誤差 eW | |||||
計 T |
なんとか p.129 [手順12]にある分散分析表と同等のものができた。これでいいことにする。本当は要因のプールが必要であるが、割愛する。
今度は交互作用のある、p.130 例 9.2 に挑戦する。p.133 [手順12]の下の表とほぼ同じ表が得られた。
要因 | 平方和 S | 自由度 `f` | 分散 `V` | 分散比 `F_0` | `P` 値 |
焼付条件 A | |||||
酸化チタンの種類 B | |||||
B×C | |||||
B×D | |||||
酸化チタンの含有率 C | |||||
C×D | |||||
ビヒクルの種類 D | |||||
下塗り塗料の種類 E | |||||
誤差 e | |||||
計 T |
このあと、9 章の演習問題もあるが、割愛する。
次は p.162 にある付表 6 直交配列表から 6.2 `L_(16)(2^15)` の一部である。
No.\列 |
次は p.163 にある付表 6 直交配列表から 6.2 `L_(9)(3^8)` の一部である。
No.\列 |
書名 | すぐに役立つ実験の計画と解析 基礎編 |
著者 | 谷津進 |
発行日 | 1991 年 10 月 5 日 第1版第1刷 |
発行元 | 日本規格協会 |
定価 | 2136 円(税別) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-542-50208-2 |
NDC | |
備考 | 川口市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 統計活用術 > 統計の本 > 谷津進:すぐに役立つ実験の計画と解析 基礎編