ネットワークスペシャリスト 2014年(平成26年) 午後 1

作成日:2018-09-29
最終更新日:

ネットワーク構成の見直し(問1)

1.1 穴埋め

本文にはこうある。

ルータの QoS としては,RFC 2474 に基づいて, IP ヘッダの[ ウ ] フィールドを DS フィールドとして再定義して通信の優先評価を行う [ エ ] モデルが実装されている。

これがわからない。何度かといて ウ が ToS であることは覚えたが、エ が覚えられない。 DiffServ が入る。相対的に優先度を決める、というサービスだ。この対義語が IntServ である。

1.2 ネットワーク経路の検討

1.3 WAS の導入

ネットワークスペシャリスト試験は、略語のオンパレードである。WAS というのは、午後 I - 問1 に出ているが、 何の略であるか、わからない。それはそれとして、こんな設問がある。

設問3 〔WAS の導入〕について,(1)~(3)に答えよ。
(中略) 本文中の下線⑤の機能はどのような場合に必要になるのか。20字以内で具体的に述べよ。

ここで⑤は次を指す。

⑤データの高速化を自動的に停止する機能

IPA による解答例は「片側のWASが故障した場合」である。一方私は「対向するWASが故障した場合」と書いた。どういうことか。

さて、WAS とは WAN 高速化装置である。WAS はどのように使うか。 実際の問題に挙げられていた図とは異なるが、誇張して示すと次のようになる。

       +―――+   +―――――――+   +―――+  
  A――――+WAS+―――+インターネット+―――+WAS+―――――B
       +―――+   +―――――――+   +―――+  

インターネットは混雑するので、あらかじめA側からB側に情報を送るときに、 A側のWASで細工をしておいてからインターネットに流して、B側のWASでその細工を解いて受け取る、 ということをする。細工そのものは何かということは省略するが、 高速化にあたっては、インターネットの両側に細工するほうと解くほうの両方必要が必要だということがわかる。 なお、今の言い方はインターネットから見てA側のWASは細工をするほう、B側のWASは細工を解くほうに説明したが、 これはA側からB側に情報を送る場合である。当然、B側からA側に情報を送る場合もあって、 そのときはB側のWASが細工をするほうであり、A側のWASが細工を解くほうである。 つまり、どちらのWASも、細工をするほうも解くほうも、両方が可能である。

さて、データの高速化を自動的に停止する機能はどのようなときに必要か、という問いに戻る。 IPA による解答例は「片側のWASが故障した場合」である。たしかに片側のWASが故障した場合で正しいのだが、 ひっかかりが残る。それは、設問で問われているのは データの高速化を自動的に停止するべきWASは、暗黙の内に正常であることが伝えられていることにもかかわらず、 回答では単に片側としか書かれておらず、「故障をしていない側の反対にある片側」であることが伝わらないのである。

長たらしく書くとこうだ。高速化の細工が正常に働いているが側のWASがあったとする(仮に、インターネットから見てB側とする)。 一方、インターネットの向こう側のWASが故障してしまったとする(こちらはインターネットから見てA側である)。 すると、Aから送られた情報は細工ができていないわけで、Bでは細工をわざわざ解いてはいけない。 また、Bから送るときに細工をしてもA側のWASは細工を解くことが故障のためできないので、B側で細工をかけるわけにはいかない。 だから、Bでは、Aの故障を検知したら、細工をかけたり解いたりする設定を無効にしないといけないのである。 そのあたりを単に「片側」というだけでは「どっちのWASなのか」ということがわかりにくい。私は「片側の」ではなく「対向する」という形容句を使ったのは、 今設問で問われている対象のNASではないほうの、もう一つのほうの故障しているほうのNASを使った、 ということを明確にしたかったのである。ネスペ26 道の本でも、p.77 でこういっている。

解答例では「WASが故障した場合」ではなく,「片側の」という言葉が入っています。これを,「対向側の」と置き換えて考えると,納得してもらえるかと思います。 WAS が故障したときに,その装置をどうするかという機能ではなく,対向側の WAS が故障したときの機能について述べられているのです。 よって,「片側の」は重要なキーワードで,ぜひとも答案に書きたいものです。

ネットワーク試験の解答の書き方で学んだことがある。それは、ある重要な、大きなものをはさんで、注目している事物が二つあるとしたとき、 着目しているふたつのうちの一つに対して、もう一つのものを指すときは「対向する」あるいは「対向側の」という形容句を入れると互いを指すものが明確になる、 ということだった。事実、平成 20 年度のネットワークスペシャリスト試験でも「対向側の故障を検知し」ということばが使われている。 これもあって、せっかくの解答例として「対向する」あるいは「対向側の」というキーワードを使ってほしかった。

ファイアウォールの障害対応(問2)

ステートフル

ネットワークスペシャリスト試験は、略語とともに外来語のオンパレードでもある。午後 I - 問2 に、穴埋め問題にこういうのがある。

主系から副系にフェールオーバーした後も通信を継続させるために, FW (注:ファイアウォール)が通信の中継のために管理している情報を自動的に引き継ぐ  イ  フェールオーバ機能を動作させている。

正答は「ステートフル」なのだが、ここでの意味としては「管理情報を引き継ぐ」という意味である。 私が使っている教科書では、 フェールオーバーの説明はあってもステートフルフェールオーバーの説明はない。まあ、教科書に文句をいっても始まらない。

さて、ネットワークスペシャリスト文化でほかにもステートフルを使う場所があるかというと、 ファイアウォールのけるパケットフィルタリングの分野である。 パケットフィルタリングの方法で、素朴な対応から賢い対応に並べていくとこうなる。

スタティック……は一回ぽっきりで判断するのに対し、ダイナミックは……は内部から外部の通信が既にあって、 その後の返信に対応するときに融通性を見せて一時的かつ自動的に対応する。さらにステートフルは、3ウェイハンドシェークを覚えていて、 それに対応するものだ。問題文に戻ると、通信の中継のためだから3ウェイハンドシェーク中のものも引き継いでいるよ、 ということを明示するのがステートフルという言葉につながるわけだ。

何でも GARP

略語にもどろう。2014 年 午後 I - 問2 の、穴埋め問題にこういうのがある。

FW (注:ファイアウォール)には,自ポートに設定された IP アドレスの解決を要求する  エ  を用いて接続機器の ARP テーブルを更新する機能がない……。

ここでの正答は GARP である。GARP とは Gratuitous ARP の意味であり、gratuitous とは、「余計な、根拠のない、不当な」などと穏やかでない意味が並んでいる。 ARP の本来の目的以外で使うから GARP なんでしょうね。ARP の本来の目的とは、IP アドレスから MAC アドレスを得ることだが、 ほかにも ARP プロトコルでいろいろなことが出来てしまうわけだ。GARP もその一つである。ちなみに ARP は OSI の第 2 層に相当する。

ほかの穴埋めでも、けっこう GARP が出てきたような気がする。

ネットワークのセキュリティ対策

ネットワークの切断

サービスを提供する側とされる側での認識が異なる例がある。2014年、午後1 の 問3 で、インシデント管理の穴埋めと格闘していた。 <発見者又は受付担当者の対応>というのと<セキュリティ担当者の対応>というのがある。 私は、このようなインシデント管理では、ネットワークではまずネットワークの切断をするものとかと思っていたが、 業務の中断を考慮しなければいけないため、すぐに切ってはいけないものなのですね。

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MARUYAMA Satosi