がんばること

作成日:2000-08-06
最終更新日:

ここの項もこっそり書く。

1. がんばらないで

ある大学の学部報を見ていると、定年退官される先生方の一言がのっていた。 そのなかで、「がんばらないで」という見出しが目をひいた。 どんな中身だったかさっぱり覚えていないけれど、勉強をすすめるべき先生の立場でよく言えるなと感動した。 それ以来何事にもがんばらないことにしている。

2. ある例証

コンピュータ科学に関する一般向けの雑誌はいろいろあるが、日本では"bit"という雑誌が最も有名だ。 2000年8月号の"bit"を見ると、そのなかの連載の「さなげ山通信」で、 著者の木村泉さんがこんな指摘をしていた。

「がんばります」ということばは、 警視庁的・農耕的・積分回路的行動パターンを表しているようだ。 これと対極にあるのは「一丁やりまっせ」ということばで、 こちらはアマゾン的・狩猟的・微分回路的 行動パターンを表している。日本人は「がんばります」度が強すぎる。 せめて全体の 10% でもいいから、 「一丁やりまっせ」を実践してほしい。

私は積分回路的行動パターンが強く、もっと「一丁やりまっせ」をしないと、と素直に思った。 もっとも、がんばり度が足りないから、全体の比率だけは木村さんのお望みになっているのかもしれない。

3. 訳語

「がんばる」を和英辞典で引いてみたら、いろいろあった。私が使えるのは"Good Luck"だけであり、 使えないけれど知っている"Take it easy." や、知らなかった"Cheer up!"があった。 さて、そのなかで"Take it easy." は気楽なかけ声だから、 日本人的に"Work hard!"としてはいけない、 とわざわざ辞書の注釈にあった。これには笑ってしまった。 そう、まさに"Take it easy."のがんばれなら いいのだが、「がんばれ」という字面からはいつも"Work hard!"しか想像できない。

つれあいが買ってきた、 岩波ジュニア新書のピーター・フランクルが書いた「外国語上達法」のなかで、 「がんばる」の訳についての考察があった。ピーターさんはこの「がんばる」に関しては ほぼ私と同意見のようである。その証拠に、日本語で「がんばって」にあたることばは、 英語では " Have a nice day! " でいいそうだ。

4. 怠けること

ということで、最近表題に「なまけ」がついている本を買うことが多くなった。 ただ、小平邦彦の「怠け数学者の記」はまだ買っていない。 小平さんは「文化勲章をもらう前ともらった後の仕事量がほぼ同じ」という稀有な人らしいからだ。 フィールズ賞や文化勲章をもらう人が怠け者であるはずがないと勝手に思っている。

付記:その後、怠け数学者の記を買った。

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MARUYAMA Satosi