「ニ」で始まる音楽家についての談笑

作成日:1998-06-30
最終更新日:

はじめに

以下は私の師匠、ふる氏からまりんきょの部屋にあてて投稿された作品です。 まりんきょによるわずかな変更を除きそのままです。

「ニ」で始まる音楽家についての談笑


題名:「ニ」で始まる音楽家についての談笑

作者:ふる

本文:

 名前が「ニ」で始まる音楽家というのは、結構インパクトのある人が多い
ということにふと思い当たった。音韻からして人名としてはそうそうあるも
のではなく、しかも思いつくのが一癖もふた癖もありそうなのばかりだから
驚きである。
 能書きはこのぐらいにして、さっそく挙げてみよう。

 ニールセン、ニキッシュ、ニレジハージ、…

 作曲家のニールセンは、「不滅」のほかはピアノ曲しか知らないが、後期
には調性を崩してかなりヨレた曲を書いた形跡がある。
 ニキッシュは全くわからないが、相当イカレた指揮ぶりだったらしい、と
根拠もなく推定しておこう。
 ニレジハージはあいにく聴いたことがないが、ピアニストの演奏に造詣の
深いかのス○トロ廃人K氏が「彼の狂気がほしい」と賀状に書いてくれたこ
とがあるから、やはり相当のガイキチなのだろう。

 この3人を見ただけで、結構キテいると思うのは筆者だけだろうか。しか
もこれ以外の音楽家となるとそうそう名前が出てこない。

「ニ」というのは母音の中で一番きつめの[i]と、子音の中ではわりと柔
らかい[n]を組み合わせた変態ちっくな音である。そういう音で始まる名
字で幼少の頃から呼ばれていると性格まで尖鋭化してしまうのだろうか。

 ニコラーエワあたりになると多少マトモだが、しかし、ショスタコの「24
の前奏曲とフーガ」を何度も全曲録音し、しかもこの曲の演奏中に舞台で倒
れ亡くなったというのはタダモノじゃない。

 曲の名前では、「ニーベルンゲンの歌」が浮かぶが、ワグネルなどたいし
て知らぬショスタキストの筆者としては、「人間の主題」(レニングラード
交響曲の第1楽章に出てくる牧歌的な主題)を一押ししたい。一見牧歌的な
主題を繰り返しながらいつのまにやら耳をつんざくような音響に変わってい
くさまには、底知れぬ恐怖が感じられる。なお、黛の交響曲「涅槃」の梵語
はニルヴァーナであった。

 ちょっと脱線して物書きの世界を覗いてみると、やはり、(アナイス=)
ニン、ニーチェなどというエキセントリックな名前が出てきてしまう。
「ツァラトゥーストラ」は音楽にもなったわけだからあながち脱線とも言え
ないか。

 閑話休題。先の3人は、作曲家のニールセン、指揮者のニキッシュ、ピア
ニストのニレジハージと、きれいに「ニ」ッチが分かれていることにあらた
めて気づく。よくしたものである。この3人をかみあわせれば(闘犬でもす
るんか?)何やら凄いものができるのではないかと欲も出てくる。

 ニールセンの曲を、ニキッシュの指揮、ニレジハージのピアノで...オケ
はニューヨークフィルじゃなくて、ニューフィルハーモニア管弦楽団に出て
もらう。故人には「バックトゥーザフューチャー」よろしく生き返ってもら
えばよい。考えただけで背筋が震える。あ、ニジンスキーに出てきて踊って
もらおう。歌い手もほしい...いた、「にしきのあきら」が。彼はバックの
音楽に関係なくひたすら「愛してる」を繰り返す。リズムを狂わされたニジ
ンスキーが脚を広げたまま転倒しニキッシュが棒を落としニレジハージが弦
を切りオケは軋り曲はもはや原形を失い迷走寸前。そこに「音楽院予算削減
反対。ニキータの方がまだ良かった」という幟を掲げたニコラーエワが上手
からまったりと登場...

 と、ここまで書いてきて「ニールセンにピアノとオケのための曲があった
のだろうか」と不安になってきた。まぁ、もしもの時は西村朗に編曲を依頼
すればよい。え?演奏会場は?ニースではない。京都に決まっている。どう
せロクな演奏になりっこないのだから、さっさと切り上げてニシン蕎麦でも
食べに行こう。

(了)

原註:ニキータはフルシチョフのファーストネーム。

終わりに

私は「にしきのあきら」が出たあたりで笑い転げた。いやあ、師匠は違います。

この文章に触発されて、 「暗い音楽」なる返歌を書いた。しかし師匠にはかなわない。

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MARUYAMA Satosi