先に、ふる氏が私宛に寄せて下さった 「『構造の複雑な英語』への文句」に、 私が「まりんきょによる補足」という、 いい加減なちゃちゃを入れました。 見ている人は見ていました。エスペラントを元気に使いこなしていらっしゃる 後藤 文彦 氏から、私のおかした誤りへの指摘と それにまつわるエスペラントの文法について、お便り(電子メール)をいただきました。 エスペラントの未熟さを反省するとともに、後藤さんに感謝の意を表しつつ、後藤さんのお便りを掲げます。
このお便りを読んで、つくづくエスペラントは楽だなあと思いました。じゃあお前が間違ったのは 何かとどつかれそうですが、いや、なに、esti+分詞の形は受身を除けば使わなくてすむ、ということで ほっとしたのです。
なお、このページの「まりんきょのちゃちゃについて」という題名は、私が便宜上つけたものです。 また、後藤さんが私に宛てたお便りは2通あります。ここでは後にきたほうのお便りを掲載します。
以下は、MARUYAMA さんも既にじゅうじゅう承知の内容も含まれているとは 思いますが、この私の電便が公開されてもいいように、やや一般向きに 書いてみました。 | He's waited/waiten. | はそれぞれエスペラントでは | Li atendis.(彼は待っている) これは「待っていた」の間違いという訳ではないんでしょうか。 | 英語で継続を表す完了形は、エスペラントに相当する形はなく、 | 単に現在(過去、未来)形で代用します。 atendi は継続を表す動詞だから、確かに単なる現在形(atendas) や過去形(atendis)で、「待っている」や「待っていた」などの 継続を表しますが、「esti(英語のbe動詞に相当)+分詞」を使えば、 過去、現在、未来における継続をより厳密に表すこともできます。 例えば、継続を表す分詞接尾辞「-ant-」に形容詞語尾「-a」をつけて、 estis atendanta 過去のある時点で待っていた estas atendanta 今、現在の時点で待っている estos atendanta 未来のある時点で待っているだろう のように表すこともできます。 一方、morti(死ぬ)のように、完結点のある動詞の場合は、 完了を表す分詞接尾辞「-int-」を用いて、 estis mortinta 過去のある時点で既に死んでいた estas mortinta 現在の時点で既に死んでいた estos mortinta 未来のある時点で既に死んでいるだろう のように、過去、現在、未来における完了を表すことも可能です。 その意味では、エスペラントは、esti の過去/現在/未来と 分詞の完了/継続/未然との組み合わせにより、 過去における完了、継続、未然、 現在における完了、継続、未然、 未来における完了、継続、未然、 と九つの時制を使い分けることができます。 但し、通常の会話や文章ではそんなに時制を厳密に表現しなければならない ことはまずないし、完了や継続を仄めかす副詞(「もう既に」とか「今までずっと」) とかを添えれば分詞を使わなくても十分に意味が通じるので、 「esti +分詞」はくどくなるのであまり使われません。 但し、受け身を表す「esti+受動分詞」はよく使われます。 例えば、atendi の場合、「待たれている」という継続を 表す受動分詞は「atend-at-」となり、例えば、 estis atendata 過去のある時点で待たれていた estas atendata 今、現在、待たれている estos atendata 未来のある時点で待たれているだろう のようになります。 | Li estas atendita.(彼は待たされている) | となります。(estasはbe動詞に相当) atendi(待つ)を「待たす」という使役動詞にするには、 接尾辞 -ig- を付けて atend-igi とします。で、継続を 表す受動分詞 -at- を付ければ同様に、 estis atendigata 過去のある時点で待たされていた estas atendigata 今、現在、待たされている estos atendigata 未来のある時点で待たされているだろう のような表現が可能です。 ついでに、morti(死ぬ)に -ig- を付けると、mortigi(死なす→殺す) になり、完了を表す受動分詞 -it- を付けて、 estis mortigita 過去のある時点で既に殺されていた estas mortigita 現在の時点で既に殺されていた estos mortigita 未来のある時点で既に殺されているだろう なども同様に表現できます。 という訳で、以上 整然と並べてきたエスペラントの表現を同じ 意味の英語に訳そうとしてみたら如何に不規則で煩雑になるかは 容易に察しが付くことと思います。
まりんきょ学問所 > ことばについて > まりんきょのちゃちゃについて(作者 後藤文彦氏)