ヴァイオリンソナタの系譜

作成日:2008-10-05
最終更新日:

有名なヴァイオリンソナタ

かねがね不思議に思っていることがある。 ヴァイオリンソナタを一望に見渡せる日本語のサイトがないことだ。 ということで、少しやってみることにした。

まず、有名なヴァイオリンソナタはどんなものだろうか。 日本語の Wikipedia で、 ヴァイオリンの項から抜き出してみた。これらを第1群とする。

同じ Wikipedia でヴァイオリンソナタ一覧の項にはあり、 ヴァイオリンの項にはない作曲家は次の通り。これらを第2群とする。

私の試みは、まず最初に挙げた有名なヴァイオリンソナタ(第1群)、 ヴァイオリンソナタ一覧のみに出てくる、準有名なヴァイオリンソナタ(第2群)についで、 そこそこ有名な第3群、無名の第4群を合わせて挙げていくことである。 以下、上記に出ていない作曲家たちの曲は第3群か第4群かであるが、そのいずれかは判定していない。

ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル

私の感覚では、ヘンデルのヴァイオリンソナタは第1群か第2群でもいいと思うが、 なぜか出ていない。

初級者用のソナタとしてよく用いられるニ長調のソナタは、本当に好きだ。 堂々たる第1楽章、付点のリズムが心躍る第2楽章など、 ヴァイオリンソナタの原点と勝手に思っている。

アントニン・ドヴォルジャーク

ソナタとソナチネがあり、 私が聴いたのはソナチネだけである。全体にほのぼのした感じに満ちていて、安心できる。 途中に童謡「まさかりかついだ金太郎」に似た旋律が出てくるからかもしれない。

イルデブランド・ピツェッティ

ヴァイオリンソナタが2曲ある。ハ短調(1900)、イ調(1920)のうち、 イ調が有名である。私もこちらしか知らない。 冒頭は深刻そうに始まるが、その後のヴァイオリンは流麗そのものである。 もっと知られてよい曲だと思う。

この曲を知ったわけはこうだ。私は 1987 年から 1995 年まで、 bit というコンピュータサイエンスの雑誌を講読していた。 この雑誌の広告のなかで、ひときわ目を引く意見広告があった。 小野勝章さんという方が経営する小野勝章事務所の広告で、 自社の宣伝、求人とともに、小野さんの意見が堂々と毎月載っていたのだった。 さて、1990年ころだろうか、 ある月の広告の意見を見ると、珍しく音楽の話であった。 諏訪根自子の弾くピツェッティのヴァイオリンソナタがよかった、 今聞きたいが手に入らない、という主旨だった。 もちろん、諏訪根自子の録音はないはずだ。 しかし、音楽そのものだったらどこかで録音があるに違いない。 その広告が頭にあって、ピツェッティのヴァイオリンソナタを聞きたいと思ったのだった。

その後、レコードに代わり CD が質量とも多く出てくる時代になり、 ピツェッティのヴァイオリンソナタも手に入れることができた。 私がこの曲を聴くときは、この曲の美点もさることながら、 この曲を聴くことができるという生に感謝することが大きい。

さて、小野さんの消息だが、事務所の広告も1993年ころから出なくなっていた。 気になったがどうしようもない。その後、 ひょんなことからある年に逝去されたことを知った (逝去については今野 浩:工学部ヒラノ教授と昭和のスーパー・エンジニアも参照)。 その後、氏はこのピツェッティのソナタを聴くことができたのだろうか?

オットリーノ・レスピーギ

ロ短調 (1916-17)がある。Wikipedia によればブラームス風と解説されている。 そのように聴くこともできるが、 場面転換の見事さはもったりしたブラームスよりも際立っている。

この曲を始めて知ったのは、知人の U くんから借りたレコードで、 それにはフォーレの第2番のヴァイオリンソナタがカップリングされていた。 演奏者はヨセフ・スーク。 フォーレには違和感を多く抱いたが、こちらのレスピーギには感動した。

フランシス・プーランク

詩人ガルシア・ロルカを悼んで書かれた曲である。 私の印象では、第1楽章は少し理屈っぽい感じがする。 最初、長調と短調をわざと区別するような書き方からである。 しかし、第2楽章のゆっくりした流れにくると、理屈はどうでもよくなる。 第3楽章は荒々しさを感じるが、ヴァイオリンの音色で緩和され終結する。 プーランクの音楽にしては「足に地がついた」印象を受けるので、 管楽器主体のプーランクとはまた違った美点を見出せるだろう。

アーロン・コープランド

現代のヴァイオリンソナタの中では、一番聞きやすい。 調性は明確である(ト調が基本)。 余計なものをなるべくそぎ落として、そこにある音で勝負という趣である。

フェルッチョ・ブゾーニ

第1番(ホ短調、Op.29 1890)、第2番(ホ短調、Op.36a 1898)、 作品番号なし(ハ長調、1876)の3作品がある。

第1番と第2番を聴いてみた。 ドイツ的な構築美の中に、自由なヴァイオリンが動く、不思議な魅力がある。

篠原眞

現代日本を代表するシリアスミュージックの作曲家。 彼の若書きのヴァイオリンソナタは、 まだ独自の作風を見出す前の苦闘と硬さを感じる。 私はこの曲を生で聴いて、作曲家として生きる一種の決意表明のように感じた。

チャールズ・アイヴズ

全4曲ある。第4番は 「野外集会の子供の日」と題されていて、第3楽章の途中から「♪たんたんたぬきの」で始まるメロディーが聞こえてくる。

その他聴くべきヴァイオリンソナタ

おそらく、次にあげる作曲家のヴァイオリンソナタは聴かねばならないだろう (順不同)。

日本の作曲家も多く残している。

その他、いろいろな作曲家のヴァイオリンソナタ

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MARUYAMA Satosi