理想のピアニスト(第23回、続・アマチュアのピアニストの腕)

作成日:2012-08-11
最終更新日:

前回からどう考えが変わったか

第19回はアマチュアのピアニストの腕について考えたのだが、 そこで続くと書いたきりで、そのあと何を書きたかったのか思い出せない。 したがって、今思ったことを書いて一応の結論にしたい。

私は腕の立つアマチュアピアニストが多くいるに違いないということを書いて、これからある結論を弾きだそうとしていたはずだ。 しかし、今となってはこのことから新たな結論は出てこない。 その代わり、アマチュアだからこそできる解釈があるのではないかということに至った。 プロは腕を求められるために、訴えたいことがおろそかになってしまいがちである。 その点、アマチュアは腕のほうはさておき、訴えたいことから先に考えられるのではないか、 そこにアマチュアのプロに対する優位があるのではないか、 そんなことを考えた。

ショパンの幻想ポロネーズ

前回の話の前にこんなことがあった。 今から 10 年ぐらい前だろうか。学生時代の友人の S くんが、同じく友人の H くんと私を家に招いた。 S くんにピアノを弾いてくれと勧められた私は、 どういうわけか幻想ポロネーズを弾いた。結局最後まで弾けなかったけれど、 H くんには「まるちゃんが幻想ポロネーズを練習している」と思われたようだ。 そのときに図にのって、幻想ポロネーズを別の機会に別の仲間の前で弾いたところ、メロメロになってしまった。それが前回の話である。

今度は前回の話の続きである。自分の弾いた幻想ポロネーズがメロメロだったと書いたが その場にはピアノ弾きが何人もいた。その中で、メロメロのポロネーズを聞くに堪えかねたのだろう、 K くんが後をとって弾きだした。ピアノに対する情熱は誰よりも優る K くんでさえ、 「ああ、弾けないよ」といっていたが、それは私の水準よりはるかに上であった。「去年弾いたのになあ」 とぼやく K くんの幻想ポロネーズを聴きながら、 もう自分が幻想ポロネーズを人前で弾くことはないだろうと決めた。

説得力

その K くんは、現在もあくなき探究心でピアノを練習し、演奏会で自分の演奏を披露し、 批評を世に問うている。 彼の演奏は強い説得力に満ちている。私に言わせれば半端なプロをしのいでいる。 それは、第2回アマチュアショパンコンクールで第3位になったことからも明らかだ。 「世界三大素人」K くんのようなアマチュアピアニストは日本にも、世界にも多くいてほしい。

追記:上記で書いた後、何回か K くんの演奏を聴く機会があった。相変わらず「強い説得力に満ちている」。 ところで、「自分が幻想ポロネーズを人前で弾くことはないだろうと決めた」と書いていることが、 これを自分で裏切っているのだからあきれたものだ。 2015 年の暮、結局前半を人前で弾いてしまったのだ。これからは断言はしないでおこう (2016-03-26) 。

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MARUYAMA Satosi