旋法について

作成日:2010-03-14
最終更新日:

1. 要旨

和声学でしばしば言及される旋法を確認し、実例と比較した。 実例での旋法は多様であり、分析は一般に困難である。

2. 旋法とは

Wikipedia によれば、次のように定義される。

旋律の基礎となっている音階や、その音階に基づいて旋律を作るときの作法。

3. 教会旋法

教会旋法とは、グレゴリオ聖歌の分類に用いられる旋法。 転じて、ジャズにおいて、コード(和声)に対応して使用可能な音の並びを表した旋法。 ともに古代ギリシャの旋法名から分類名を定めているが、グレゴリオ旋法の分類名とジャズの旋法の分類名は異なる。 通常は(少なくとも私の感覚では)、現代音楽すべてで教会旋法といえばジャズの旋法を表し、 したがって旋法名もジャズの分類名を使う。以下はその名称である。

4. ビートルズの教会旋法

きっと誰かが書いているだろうが、重複を恐れず書く。

ドリアン

ノルウェーの森 (Norweigian Wood) のサビの部分はドリアンである。

エリナー・リグビー ("Eleanor Rigby") は冒頭からサビが歌われるが、 その後のAメロはドリアンである。 おそらくオリジナルはホ短調であろうが、

G A H G - E - . | G A H D - Cis H Cis | - H A H - A G A |

上で強調したところがドリアンたる特徴である

ミクソリディアン

ビートルズのノルウェーの森 (Norweigian Wood) の冒頭の部分はミクソリディアンである。 私の絶対音感ではおそらくこの曲はイ長調であろう。 歌の冒頭がこうなる。

E - - Fis E D | Cis - - H D Cis | A - - G D Fis | E

この 3小節め、Gis ではなく、G になっているところがミクソリディアンである。

そのほかにミクソリディアンが出てくる曲がある。

5. クラシック音楽における教会旋法

イオニアン

現代の長調である。実例は多いので省略する。

ドリアン

バッハに「ドリア調トッカータとフーガ」BMV 538 があるが、実際にはドリア調には基づいていない。 有名なニ短調のトッカータとフーガ BWV 565 と区別するための識別語句と考えればよい。 英語 Wikipedia によれば、ベートーヴェンの荘厳ミサ曲やブロッホの曲にあるらしい。

フリジアン

フォーレの弦楽四重奏曲冒頭のメロディーがフリジアンであろう。英語 Wikipedia では、レスピーギのボッティチェリ・トリプティークにその例があるという。 この Wikipedia では、またこれを訳したと思われる日本語の Wikipedia では、ブルックナーの交響曲、 ヴォーン=ウィリアムスのトマス・タリスの主題による幻想曲、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」などが該当する、 と書かれている。

ロクリアン

主音に対する完全五度がないため、非常に使いにくい。 フォーレの弦楽四重奏曲の第2楽章に例があることしか知らない。

ストラヴィンスキーの管弦楽曲「ペトルーシュカ」の第1楽章にある 「ロシアの踊り」の冒頭がロクリアンであると指摘する人もいる。

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MARUYAMA Satosi