はしがきより引用する。
本書は初学者にできるだけ予備知識なしに,しかもできるだけ材料をしぼって,線形位相空間論の入門書となるように工夫した書である。
同書の 1 ページは次のように始まる。要素と集合の関係を表す記号が \( \in \) と \( \ni \) の両方が出ていることに注意しよう。
`E` をアーベル群(可換群)とする。すなわち \( E \ni a, b \) に対して `a + b in E` が一意に定まり、次の公理を満たすものとする。
`a + b` = `b + a` (1.1) `(a + b) + c` = `a + (b + c)` (1.2) 2 つの要素 `a, b in E` に対して `a = b + c` となる `c in E` が存在する。 (1.3) このことから (1.3) で定まる `c` は一意であることが示される。このとき `c = a - b` で表す。
中略
問1 (1.3)で定まる `c` が一意であることを示せ。
参った。こんなことはあたりまえではないかと思うので、示せといわれるとかえってやっかいだ。どうするのだろう。 だいたい、他書では交換法則、結合法則、単位元の存在、逆元の存在をもってアーベル群を定義している。 まあ、いいや。
これだけだと何なので、最後の章 Montel 空間の演習問題の最後を載せる。なお、 この最後の章の演習問題では局所凸線形空間だけを考慮する、とある。
`E` が局所凸線形位相空間 (Hausdorff) で、すべての有界集合の閉包が完備とする。 `E = E''` (集合として) (すなわち `E` が半回帰的) となるための必要十分条件はすべての `E` の加算稠密な集合を含む閉部分空間 `M` に対して,`M=M''` となることである。
なお、最後に「このことを証明せよ」が省略されている。演習問題解答(略解)には、
この問題が解けたら相当な学力があるものと判定される。
とある。ハハハ。
V のリーゼントカリグラフ体が見られる。
命名の由来については、高村 多賀子:関数解析入門を参照されたい。
今書いたばかりのことを否定するのだが、ひさしのような前髪の盛り上がりは正しくはポンパドールといい、 リーゼントと呼ぶのは誤りである。
このページの数式は MathJax で記述している。
p.57 下から 10 行目、「なることは要易に示される」とあるが、正しくは「なることは容易に示される」だろう。
書 名 | 線形位相入門 |
著 者 | 越 昭三 |
発行日 | 昭和 52 年 3月 10 日(初版) |
発行元 | サイエンス社 |
定 価 | 1300 円(本体) |
サイズ | A5版 ページ |
ISBN | |
その他 | 2017年4月29日、上田市内の古本屋で購入 |