石谷茂:行列再入門

2026-05-29

概要

副題は2次行列のすべて

本書出版後、「2次行列のすべて 線型代数の新しい学び方」が、さらにその後「新装版 2次行列のすべて 新しい線型代数の学び方」が、 同じ現代数学社から刊行されている。目次は本書と同じだから、「2次行列のすべて…」や 「新装版 2次行列のすべて…」はいずれも本書を元にしていると思われる。

挿絵のクレジット

本書の全9節の扉には、昔どこかで見た感じの挿絵がある。この挿絵の作者を知りたいが、本書のどこにもその表記がない。誰だろう。

高校で行列が必修だったころ

本書の初版は1990 年 11 月である。まだ高校の数学で行列が必修だったころである。本書やその改訂版を読むときには注意が必要だ。

\( \boldsymbol{R}\) -加群

§1 は「\( \boldsymbol{R}\) -加群としての行列」である。私は最初驚いた。そして次に、\( \boldsymbol{R}\) とは実数の集合 `RR` のことだと思った。 実際、この節の第6項「\( \boldsymbol{R}\) -加群という代数系」では、本書 pp.21-22 で次のように述べられている。 なお、いわずもがなであるが、`h` も\( \boldsymbol{R}\)の要素であり、`B` も `M` の要素であることを付け加えておく。

2次の正方行列全体の集合を `M` とすると,`M` の備えている代数的構造は,次の2つに要約される.

(ⅰ)`M` は加群である.

加群というのは,加法についての可換群のことである.群は一般的には可換的ではないが,とくに可換的なときに演算を加法で表わし,加群と呼ぶのが慣用. したがって加群はことわりがなくとも可換的とみてよい.

(ⅱ)`M` は実数 \( \boldsymbol{R}\) を作用域にもつ.

`M` が\( \boldsymbol{R}\) を作用域にもつとは,`M` の要素 `A` と \( \boldsymbol{R}\) の要素 `k` に対して,`M` の要素が1つ定まる演算 `kA` が定義されていて,次の演算を満たすことである.

`h(kA) = (hk)A`
`(h+k) A = hA + kA`
`k(A + B) = kA + kB`

以上の(ⅰ),(ⅱ)を満たす代数系のことを \( \boldsymbol{R}\)-加群 ともいう.

したがって、本書の記述による限り、\( \boldsymbol{R}\)-加群の \( \boldsymbol{R}\) とは実数の `RR` のことだと思う。ところが、Wikipedia で「環上の加群」を見てみると、左 `R`-加群という用語が定義されている。 Wikipedia では `R` は実数ではなく、代数的構造のうちの環(Ring)を表している。混乱してしまったが、本書を読む限り、\( \boldsymbol{R}\) は実数と思ってよさそうだ。ついでなので、本書 p.23 から次の部分を引用する。

行列の実数倍は,任意の実数と任意の行列に1つの行列を対応させる演算で,`k` を作用子,\( \boldsymbol{R}\)を作用域 という.

数式について

数式表現には、MathJax4 を用いている。

書誌情報

書名行列再入門
著者石谷茂
発行日1990 年 11 月 8 日 第1刷
発行元現代数学社
定価2300円 (税別)
サイズA5 版 198 ページ
ISBN4-7687-0199-X
NBC411.35
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