「まえがき」から引用する:
(前略)本書はこれから数理論理学を学ぼうという人達のために書かれた教科書である. その中には,哲学,法学,経済学,経営学等を専攻しているいわゆる文系の学生もいるであろうし, また,情報科学および情報工学を専攻している学生もいるであろう.もちろんのこと数学専攻の学生もいるであろう. このように,文系理系を問わないで幅広い層の読者を想定して執筆したつもりである.(後略)
問題は文中にある。しかし、問題の解答はなく、また参考文献もない。
要再読である。
p.172で「ウォンのアルゴリズム」が紹介されている。Wang のアルゴリズムのことだが、Wang はウォンと読むのだと初めて知った。 なお、Wikipedia では「ハオ・ワン」の名前で紹介されているが、Wang のアルゴリズムには触れられていない。
p.5 から引用する。
言語 \(\mathcal{E}\) のモデルまたは構造\(\mathfrak{A}\) とは \(\mathfrak{A}\) の対象領域と呼ばれる空でない集合 \(A\) と \(\mathrm{P, L}\) 及び\(\mathrm{E}\) の \(\mathfrak{A}\) における解釈とそれぞれ呼ばれる \(A\) 上の性質\(\mathrm{P^\mathfrak{A}, L^\mathfrak{A}}\) 及び \(A\) 上の関係 \(\mathrm{E}^\mathfrak{A}\) よりなる.
まず \(A\) のフラクトゥール \(\mathfrak{A}\) が読めない。「文系の学生」が読めるだろうか。いや、理系の学生でも数学科の学生以外読めないのではないか。
他にも読めないフラクトゥールがある。p.12 からわずかに改変して引用する。
問題 4 人間全体の集合を \(H\) とする.\(M(x)\) を “ \(x\) は男性である” を,\(F(x)\) を “ \(x\) は女性である” を意味するとする. また \(C(x,y)\) を “ \(x\) と \(y\) は夫婦である” を意味するとする.そのとき,対象領域を \(H\) とし,\(\mathrm(P, L, E)\) の解釈をそれぞれ \(M, F, C\) とする言語 \(\mathcal{E}\) のモデル \(\mathfrak{H}\) を考える.そのとき,Ax.1-4 を \(\mathfrak{H}\) で解釈した日本語の文を云え.
ここでも \(H\) のフラクトゥール \(\mathfrak{H}\) が読めない。\mathfrak{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} としてみて、一番似ている H だろうと見当を付けただけだ。
さて、Ax.1-4 とは何か。p.4 にあるので戻ろう。
Ax.1 \(\mathrm{P}(x)\) かつ\(\mathrm{P}(y)\) なる異なる対象 \(x, y\) が存在する.
Ax.2 \(\mathrm{P}(x)\) かつ\(\mathrm{P}(y)\) なる異なる対象 \(x, y\) について,\(\mathrm{E}(x, z)\) かつ\(\mathrm{E}(y, z)\) となる \(\mathrm{L}(z)\) なる対象 \(z\) が唯一つだけ存在する.
Ax.3 \(\mathrm{L}(x)\) なるいかなる対象 \(x\) に対しても \(\mathrm{E}(y, x)\) とならない \(\mathrm{P}(y)\) なる対象 \(y\) が存在する.
Ax.4 \(\mathrm{P}(x)\) かつ\(\mathrm{L}(y)\) なる対象 \(x, y\) について,\(\mathrm{E}(x, y)\) でないとする.そのとき,以下の条件を満足する \(\mathrm{L}(z)\) なる対象 \(z\) が唯一つ存在する.
- \(\mathrm{E}(x, z)\) である.
- \(\mathrm{P}(w)\) かつ \(\mathrm{E}(w, y)\) かつ \(\mathrm{E}(w, z)\) なる \(w\) は存在しない.
ここで、P L E は述語である。Ax.1-4 は何を言っているのかさっぱりわからないが、さっぱりわからなくて当然で、これがわかるようにすることは、意味を定めていくことだからだ。 本書の実際の構成は、A1-A4, A'1-A'4, A''1-A''4 の実例を作り、これらを抽象化した記述として Ax.1-4 を作っているからだ。ちなみに、A''1-A''4 はどのように定めているかを pp.3-4 から引用しよう。
A''.1 平面には少なくとも 2 点がある.
A''.2 異なる 2 点を通る直線は唯一つのみしかない.
A''.3 いかなる直線にもその直線上にはない点が存在する.
A''.4 直線外の一点を通りその直線と交わらない直線が存在する.
補足すれば、P(a) は「a は平面の点である」と読み、L(a) は「a は平面上の直線である」と読む。さらに、E(a,b) は「点 a は直線 b 上にある」を意味する。 こうすれば Ax.1-Ax.4 の意味がなんとなくわかるのではないか。ついでにいえば、P は Plane を、L は Line を、E は Exist(存在する)を表すと思えばいいだろう。疲れた。
せっかくなので、問題 4 の解答を考えてみた。
Ax.1 を\(\mathrm{P}(x)\) で解釈した日本語の文は、「人間全体には少なくとも二人の男性がいる。」だろう。
Ax.2 を\(\mathfrak{H}\) で解釈した日本語の文は、「異なる二人の男性と夫婦になっている女性は唯一人しかいない。」だろう。
Ax.3 を\(\mathfrak{H}\) で解釈した日本語の文は、「どんな女性でも夫婦となっていない男性がいる。」だろう。
Ax.4 を\(\mathfrak{H}\) で解釈した日本語の文は、「夫婦ではない男性および女性について、その男性の妻である(夫婦を構成する)女性が一人だけいて、かつ先の二人の女性とともに夫婦になっている男性は存在しない。」だろう。 こんな言い方でいいのだろうか。
p.11 の次の問題も考えてみた。
問題2 次の \(\mathcal{E}\) の文を例 1.1 - 1.3 の状況の元で解釈したそれぞれの日本語の文を述べよ.また,その真偽を確かめよ.
- \(\forall x (\mathrm{P}(x) \to \exists y \exists z(y \neq z \land \mathrm{L}(y) \land \mathrm{L}(z) \land \mathrm{E}(x, y) \land \mathrm{E}(x, z))) \).
- \(\forall x (\mathrm{L}(x) \to \exists y (\mathrm{P}(y) \land \mathrm{E}(y, x))) \).
- \(\forall x (\mathrm{L}(x) \to \exists y \exists z ( \mathrm{P}(y) \land \mathrm{P}(z) \land y \neq z \land \mathrm{E}(y, x) \land \mathrm{E}(z, x))) \).
- \(\exists x \exists y( \mathrm{L}(x) \land\mathrm{L}(y) \land x \neq y \land \lnot \exists z (\mathrm{P}(z) \land \mathrm{E}(z, x) \land \mathrm{E}(z, y) )) \).
- \(\forall x \forall y (\mathrm{P}(x) \land \mathrm{P}(y) \to x = y) \).
- \(\exists x (\mathrm{P}(x) \land \forall y (\mathrm{L}(y) \to \lnot \mathrm{E}(x, y))) \).
- \(\exists x \exists y \exists z (\mathrm{P}(x) \land \mathrm{P}(y) \land \mathrm{P}(z) \land x \neq y \land y \neq z \land x \neq z \land \exists w ( \mathrm{L}(w) \land \mathrm{E}(x,w) \land \mathrm{E}(y,w) \land \mathrm{E}(z,w) )) \).
目がちらちらする。でもやってみよう。例 1.1 の状況の元だけに絞る。なお、例 1.1 の状況の説明は割愛する。
(1) は、「すべての参加者は、少なくとも二つの公用語を使用することができる。」だろうか。これは真だ。実はこの式は、§ 1.2 推論の (I) で推論された式そのものだ。 p.15 の式 (1.5) は次のようになっている。 \[\forall x (\mathrm{P}(x) \to \exists z \exists z'(\mathrm{L}(z) \land \mathrm{L}(z') \land \mathrm{E}(x, z) \land \mathrm{E}(x, z') \land z \neq z' )). \] 文字こそ違え、同じ式を指していることは明らかだ。
(2) は、「その会議のどんな公用語も、使用できる参加者がいる。」だろうか。これも真だ。
(3) は、「その会議のどんな二つの公用語も、使用できる参加者が二人以上いる。」だろうか。これも真だ。例 1.1 の (i) から (vi) で例示されている。
(4) は難しくてわからない。降参した。
(5) は、「x と y がともに参加者ならば x と y は同一人である。」だろうか。これは偽だ。
(6), (7) は考える気力がなくなった。
p.109 の上から4行目、フィッチのの体系は,
とあるが、正しくは、《フィッチの体系は,》だろう。
このページの数式は MathJax4 で記述している。
| 書名 | 数理論理学入門 |
| 著者 | 角田譲 |
| 発行日 | 1996 年 6 月 20 日(初版第1刷) |
| 発行元 | 朝倉書店 |
| 定価 | 2900 円(本体) |
| サイズ | A5版 ページ |
| ISBN | 4-254-11062-6 |
| その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |
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