概要
「まえがき」から引用する。
(前略)数学は抽象思考の強い学問ですが,他の自然科学と同様に,多くの具体的事象の観察と試行錯誤の積み重ねがあって,ようやく抽象化されてゆきます. 始めから抽象化された一般的概念や定理が,パッと生まれるわけでは決してありません.
本書は,このことをつねに念頭においた組み立てになっています.(後略)
ジョルダン標準形やケーリー・ハミルトンの定理については、紹介はされているが証明はされていない。行列式の定義は、偶順列と奇順列の定義から導いている。グラム・シュミットの方法は取り扱われていない。
感想
有吉九段
p.130 に次の記述がある。
エピローグ:タイプといえば,N 先生は将棋好きで,タイプは,自玉いっさいおかまいなしの棒銀一本,超早指し,超猛烈な攻め将棋である. 何よりも特徴的なのは,駒の置き方である. 有吉九段のように,駒がマス目の下線にくっついているのと反対に, マス目の上線にくっつき,はみ出しているのもあって,攻撃性があらわである.
有吉九段の駒の並べ方について、 松本博文氏による次の記事が参考になる。中央派VS下側派 将棋の駒はます目のどこに置く? (news.yahoo.co.jp)
読み方
行列式を計算する方法として知られているサラスの方法(『内田伏一・浦川肇:線形代数通論』では、関孝和・サラスの方法)は、
本書 p.18 ではサルス(Sarrus)の方法
として解説されている。また、線形計画法で有名なシンプレックス法は、p.153 ではシムプレックス法
と表記されている。
行列の位
『第4章 掃き出し計算法と行列の基本変形』の第 3 節を見た。p.45 では、次の定義が掲げられている。
行列 `A` の位(ランク)とは,次の 2 条件をみたす正またはゼロの整数 `r` のことである:
(イ)`A` の `r` 次小行列式中に,ゼロでないものがある.
(ロ)`l gt r` ならば,`A` の `l` 次小行列式は,すべてゼロである.
ふつう、行列のランクのことは日本語で階数という用語を当てると思う。
次元定理
線形代数のいわゆる次元定理は、『第7章 線形写像』の p.90 で次のように説明されている。
定理 7.2 線形写像 `F:RR^n rarr RR^m` と,`(m times n)` - 行列 `A` を同一視するとき,`dim "Ker"(F) + "rank"(A) = n`.
本書では、「次元定理」という用語は出ていない。また、この定理 7.2 の証明そのものの証明は与えていない。しかし、具体的な行列でこの次元定理が成り立つことを適宜問をはさみながら示していて、 この具体的な行列から得られる等式の論法を利用して上記の定理 7.2 が成り立つ、という展開をとっている。これは、前書きに書かれている内容を反映していると思われる。
書誌情報
| 書名 | 線形代数 12 章 |
| 著者 | 難波誠 |
| 発行日 | 2002 年 4 月 10 日 第 1 版 第 5 版 |
| 発行元 | 裳華房 |
| 定価 | 2200 円(税別) |
| サイズ | |
| ISBN | 4-535-78219-9 |
| NDC | |
| その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |