林義実:線形代数と幾何

2026-02-27

概要

副題はベクトル・行列・行列式がよくわかる

感想

要再読である。

spherical harmonics 氏による、 H.Anton(山下純一訳),アントンのやさしい線型代数,現代数学社(1979)(spherical-harmonics.hatenablog.com) の書評では、線型代数書評の着眼点として次の5点を述べている。

  1. 計量のタイミング
  2. 行列式の導入
  3. 連立方程式と線型空間どちらが先か
  4. 数値計算を考慮した構成になっているか
  5. (理学か工学か)抽象か具体か

これに基づいて本書を眺めてみよう。

計量は p.6 で「1.2 ベクトルの内積」が出ている。そして、しばらくして p.108 で「7 ベクトル空間」で、 内積をもつベクトル空間を内積空間または計量ベクトル空間という.という定義がある。さらに次のページで、計量ベクトル空間として、 区間 `-pi le x le pi` で定義された連続関数全体からなる集合とした例が解説されている。

行列式は置換を用いて定義されている。

連立方程式は、「3 基本変形」の章、「3.1 連立1次方程式」で説明されている。一方線形空間は、p.108 の「7ベクトル空間」で初めて登場している。

数値計算を考慮した構成にはなっていない。枢軸選択、ガウス・ザイデルの反復法、べき乗法などへの言及はない。

本書は抽象というよりは具体に重きが置かれていると思われる。

スペクトル分解

p.105 では、2次の正方行列 `A` に関する次の式をスペクトル分解といっている。

`A = lambda_2 P_1 + lambda_1 P_2`

ここで、`lambda_1, lambda_2 (lambda_1 != lambda_2)` は`A` の固有値であり、`P_1, P_2` は次で定められる2次の行列である。`E` は 2 次の単位正方行列である。

`P_1 = 1/(lambda_2- lambda_1) (A - lambda_1E), P_2 = 1/(lambda_1- lambda_2) (A - lambda_2E)`

`P_1 と P_2` は以下の関係がある。

`P_1 + P_2 = E, P_1P_2 = O, (P_1)^2 = P_1, (P_2)^2 = P_2`

この方法を見て、固有値が重複した値を取るとどうなるのだろうとか、3 次以上の正方行列の場合はどうなるのだろうとか、いろいろ考えてしまった。

誤植

本書の正誤表(www.morikita.co.jp) が出版社から公開されているが、そのほか私がみつけた誤植がある。

p.118 像と核の関係を模式的に表した図の、`RR^m` の部分空間を表す核が `"Kef" f` となっているが、正しくは《`"Ker" f` 》である。

p.165 下から 11 行め、さらに一般に垂体はその3分の1の体積にとあるが、正しくは《さらに一般に錐体はその3分の1の体積に》である。

数式記述

このページの数式は MathJax4 で記述している。

書誌情報

書名線形代数と幾何
著者林義実
発行日2015 年 9 月 18 日 第1版第1刷
発行元森北出版
定価2200 円(本体)
サイズA5版
ISBN978-4-627-09661-5
その他川口市立図書館にて借りて読む