群と表現 |
作成日:2013-03-05 最終更新日: |
理工学で対象の対称性を記述する道具として群の概念が有用である。 結晶内部での電子の振舞いを記述する量子力学や素粒子論、 そして一般相対性理論でも群論は活躍する。 対象の背後に潜む抽象的な構造から、それを具象化した表現論までを解説する。
「群と表現」という表題は世の中にもあるようだ。「と」という助詞の前後は対照となる事物がくるが、 群と表現というのは対照となるものだろうか。土屋賢二がいう「手編みとマントヒヒのいろいろ」 ものではないか。
まえがきには、「群」とは,ある一定の規則にしたがう操作の全体のことである.
と定義されている。また、「表現」は具体に向かう.
と解説されている。
わたしが思うに、ここの「と」は「群の構造と群の表現」ではないか。
事実第1章は「群の構造」である。しかし、群ということばを2度使うとうっとうしいのだろうから、
慣例として「群と表現」という言い方が定着したのではないか。
この本では、実数体 `RR` や複素数体 `CC` をサンセリフ立体の `sf R` や `sf C` で表現している。 また、一般の群 `G` も同様に `sf G` のように表記されている。 これもありなのだろう。 しかし、以下の引用では通常のセリフのイタリックを用いた。 これは、この応用数学の別の本との整合性をとるためである。
群を勉強するときどうするのだろうか。この本の図1.1には立方体の対称操作がある。4回軸、3回軸、2回軸がある。 こうやって結晶構造を学んだ気がする。しかし、結晶構造の勉強ではその後急に難しくなってしまった。 そんな苦い過去を持っているので、やはり群に関する理解も進みそうにない。
表現は次のように定義される。
群 `G` から `GL ( V )` への準同型写像 `rho` ,すなわち
`rho(a) rho(b) = rho(ab) (AA a, b, in G)`
のように群の演算を保存する写像を `G` の `V` 上の表現 (representation) といい, `( rho, V)` と書く.
これが「表現」の正体だったというわけか。
同書では、テンソル積を次のように定義している。
二つの複素線形空間 `V`,`W` の元 `mathbb v` ,`mathbb w` を並べた`mathbb v mathbb w` の全体が張る空間を `V xx W` とし,次の形のすべての元で張られるその部分空間を `H` とする。
` (mathbb v + mathbb v') - mathbbv mathbbw - mathbb v' mathbbw, mathbb v ( mathbb w + mathbb w') - mathbbv mathbbw - mathbb v' mathbb w, ` ` ( lambda mathbb v) mathbb w - lambda mathbb v mathbb w, mathbbv (lambda mathbb w) - lambda mathbbv mathbb w `
そして商空間 ` (V xx W) // H ` を `V` と `W` のテンソル積といい、 `V ox W` と記す.
なお、商空間については次の注釈がある。
`V xx W` の元につき `H` に属する分はすべて 0 とみなす約束で得る空間.
これを見て、「ベクトル解析と多様体 II」 のテンソルの導入を思い出した。ベクトル解析の本では3種類の導入法が書いてあったが、 商空間を利用する方法は説明が省略されているのだった。それが同書ではどうどうと書かれている。 なかなかうまくいかないものだ。
Lie 代数はドイツ文字で表現されている。たとえば、線形 Lie 群 `G` の Lie 代数 `frg` という書き方になる。どうやらこれは数学では一般的なようだ。
さらにこのあと、第7章 ルートとウェイトで、Lie 代数 `frg` の線形部分空間 `frk` ということばが出てくる。 この `frk` には注釈があり、「ドイツ文字の k」とある。たしかに、この `frk` は読みにくいなあ。
数式はMathJax を用いている。
書 名 | 群と表現 |
著 者 | 江沢 洋, 島 和久 |
発行日 | 年 月 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 円 |
サイズ | |
ISBN | |
NDC |