I. R. シャファレヴィッチ : 代数入門

2026-03-29

概要

「序文」から引用する:題材は数,多項式,集合という3つの基本テーマに分類されていて,それぞれが数章にわたって展開され,いろいろのテーマの章が交互に現れる体裁になっている.

各章の末尾に問題がある。解答はない。

感想

本書の表題は「代数入門」だが、実際には「数学入門」というのがふさわしいと思う。3つの主題「数」、「多項式」、「集合」の1つあるいは2つに焦点を当てた、計7章がある。

ビュルギの方程式

第1章は整数である。pp.28-29 では、係数がすべて整数でモニックな多項式 `f(x)` に対する性質が述べられた後、ある方程式の解の性質について次のように述べられている。

A B C D

例えば,方程式

`x^3 - 7x^2 + 14x - 7 = 0 \quad (17)`
を考える.(中略)

半径1の円周に内接する正7角形の1辺の長さの2乗はこの根である.さらに,方程式(17) には3つの根があり,1つは0と1の間,1つは2と3の間,1つは3と4の間にある. それらは半径1の円周に内接する正7角形の対角線の長さの2乗になっている.ここで,多角形の2つの頂点を結ぶ線分をどれも対角線と呼んでいる.したがって,辺も対角線として数えている. 正7角形は3つの異なる長さの対角線 `AB, AC, AD` を持っている(図5).これらの長さがすべて無理数であることになった.

この (17) 式を導くにはどうすればいいのだろうか。Wikipedia の「七角形」の記述などから、図 5 の対角線の長さには次の関係があることがわかる。

`AB = 2 sin {:pi /7:} , AC = 2 sin {:{:2pi:}/7:} , AD = 2 sin {:{:3pi:}/7:} ,`

よって、次の式

`(x - 4 sin^2 {:pi /7:})(x - 4 sin^2 {:{:2pi:}/7:})(x - 4 sin^2 {:{:3pi:}/7:})`

を展開して、その結果が (17) の左辺に等しくなれば証明は完了する。しかし、膨大な計算が必要となるだろう。

もう少しスマートにやってみたい。`theta = pi // 7` とおくと、`sin 7theta = 0` である。この左辺は `sin(4theta + 3theta)`であるから、加法定理により次が成り立つ。

`sin 4theta cos 3theta + cos 4theta sin 3theta = 0`

ここで下記の公式を準備する。

以上を準備した上で、上記の `theta` の満たす方程式の左辺に代入する。以下、以下、`sin theta = s, cos theta = c` と記す。

`sin 4theta cos 3theta + cos 4theta sin 3theta = (4 sc(1- s^2))(c(1-4s^2)) + (8s^4 - 8s^2 + 1)(-4s^2 +3s)`

`c^2 = 1- s^2` を使って整理するとこの式は

`s(-64s^6 + 112s^4 - 56s^2 + 7)`

となる。上記が 0 に等しいとすると、`s = sin {:pi/7:}` は明らかに 0 ではないので、

`-64s^6 + 112s^4 - 56s^2 + 7 = 0`

が成り立つ。

一方、半径 1 の円に内接する正7角形の1辺の長さを `a` とおくと、`a` は次の式で与えられる。

`a = 2 sin {:pi/7:}`

そこで、`s = a/2` を上記 `s` の方程式の左辺に代入すると、次の式が得られる。

`a^6 - 7a^4 + 14a^2 - 7 = 0`

よって、正7角形の一辺の長さの2乗は、引用した方程式(14)の解の一つであることがわかる。これは `AB` の長さの2乗が方程式 (14) の解であることが証明できた。

同様にして、AC の長さの2乗を考える。`theta = 2pi//7` とおくと、やはり `sin 7 theta = 0` であるから、`s` に関する 6 次方程式が成り立つ。また、AC の長さを b とおくと、 `b = 2 sin {:2pi/7}` であるから、`s = b/2` を上記 `s` の方程式に代入することにより、`b^2` も `x^3 - 7x^2 + 14x -7 =0` の解であることがわかる。 同様の論法により、AD の長さを `c` とおくと、`theta = pi // 7` も三角関数の等式を満たすこと、および `c = 3 sin {:3pi/7}` であることがわかり、 これらからやはり `c^2` も `x^3 - 7x^2 + 14x -7 =0` の解である。以上で証明された。

なお、たまたま同じころ読んでいたアーベルの証明の「訳者ノート」に、正7角形に関するビュルギの方程式が掲載されていた。この方程式の導出が、上記の解答となる。

数式記述ほか

数式記述は ASCIIMath記法を使っている。

図はSVGを用いている。

訳者の蟹江先生の「蟹」は、正しくは上部が「角羊」のようになっている。

書誌情報

書名 代数入門
著者 イゴール R.シャファレヴィッチ
訳者 蟹江 幸博
発行日 2009 年 8 月 15 日 第1版 第1刷
発行元 日本評論社
定価 2800 円(本体)
サイズ A5 版 316 ページ
ISBN 978-4-535-78400-0
NDC 411
備考 川口市立図書館で借りて読む