第二次世界大戦の言論統制を実行した悪名高い情報官、鈴木庫三の素顔と思想を探る。
私が思っていたのは一般的な言論統制とは何かとか、どんな国でどんな事例があったかとか、そういう概説だった。 しかし実際は、鈴木庫三という一軍人の伝記である。もちろん、この軍人の周りからいろいろなことがわかるので、損はなかった。
言論統制者としての鈴木庫三は、サーベルを振り回していたとされる。サーベルとは何だろう。 ひょっとして、プロレスラー、タイガー・ジェット・シンが振り回していた凶器と同じものだろうか。 フェンシングの剣もサーベルというのではなかったのかな、といろいろ考えた。
「しちょう」と読む。本書 p.80 から抜粋する。
輜重兵、「英文日記」で綴られたとおり「輸送兵」a transport soldierである。
輜重の輜とは衣類を載せる車、重とは荷を載せる車の意で、部隊の移動に際して糧食、被服、武器、弾薬など軍需品の輸送を担う兵科である。
p.10で「陸軍省情報部・陸軍輜重兵少佐 鈴木庫三」が本書での初出。
鈴木庫三による、陸軍大学校(以下陸大)卒業者の別称。天保と省略することもある。 陸大卒業者がつけた徽章の形状が天保銭と似ていたことからの俗称。実質的に高級指揮官の選抜コースであり、その後軍中央のポストを独占し、 昭和の戦争を指導することになる。
第二次世界大戦における、陸軍文化と海軍文化の対立。「紙の戦争」との対比で著者が呼んだことば。
著者は、勝者がどちらであったのかと問いかけている。以下引用する。
それは明らかである。スマートで都会的な海軍を「善玉」、野暮ったく田舎じみた陸軍を「悪玉」として描く「海軍史観」が、
今日まで歴史の主流である。
p.347
出版業にとって生命線である紙をめぐる実質的な利害の衝突p.295。ただし同ページでは「紙の戦争」は出てこない。 p.303 で小見出し<「紙の戦争」の勝者>で初めて「紙の戦争」が出てきて、説明が始まるのは p.306 である。
社会的に形成された習慣(p.347)。
書名 | 言論統制 |
著者 | 佐藤 卓己 |
発行日 | 2004 年 8 月 25 日(第版) |
発行元 | 中央公論新社 |
定価 | 980円(本体) |
サイズ | |
ISBN | 4-12-101759-5 |
その他 | 越谷市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録> 佐藤 卓己:言論統制