田中克彦:ことばは国家を超える

作成日 : 2022-12-07
最終更新日 :

概要

副題は「日本語、ウラル・アルタイ語、ツラン主義」

感想

田中克彦の別の著書で、トルコ語と日本語が似ていることを知った。今回は朝鮮語(韓国語)と日本語が似ていることが、 たった一つの例だが p.83 で示されている。おもしろい。

ラ行で始まる単語

p.89 では、ラ行で始まる単語は、日本人は自分では作れず、ほとんどが外国語からの借用である。という記載がある。 そのあと「令和」という新しい元号についての見解を紹介している。私は元号廃止論者であるが、表立って元号廃止というより、 本書の記載にある見解を出すほうがサマになっていると思う。ただそれをここで公開するのは控える。それはそれとして、 本書と同時並行で読んでいた「モンゴル語のしくみ」では、 モンゴル語の辞書の見出し語で少ないのは p であると書かれている。モンゴル語の р はキリル文字であり、音は r を表す。

気になる箇所

気になる箇所があった。p.138 から引用する。

フンボルトは屈折型の言語は、一つの単語の中で実質部門と、関係を表す文法部門がとが有機的に融合している点で、すぐれている。 それを分離して、別々に表示する膠着型は、屈折語と孤立型との、「どっちつかずの混血児(Zwitterwesen)」だと言っているのは、 日本の研究者の気持をずいぶん傷つけたにちがいない。

この 2 文は主語と動詞の照応がうまくいっていないようだ。言いたいことはこうだろう。

フンボルトはこう言っている:《屈折型の言語は、一つの単語の中で実質部門と、関係を表す文法部門がとが有機的に融合している点で、すぐれている。 それを分離して、別々に表示する膠着型は、屈折語と孤立型との、「どっちつかずの混血児(Zwitterwesen)だ》。 このことばは、日本の研究者の気持をずいぶん傷つけたにちがいない。

書誌情報

書名ことばは国家を超える
著者田中克彦
発行日2021 年 4 月 10 日(初版)
発行元筑摩書房
定価840 円(本体)
サイズ
ISBN978-4-480-07388-4
その他ちくま新書、越谷市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi