都留 重人(編):サムエルソン経済学講義 上 |
作成日: 2015-11-27 最終更新日: |
サムエルソンによる有名な教科書を、日本の経済学者である都留重人や都留の弟子らが読み解く。 書名は「サムエルソンが著した『経済学』という教科書について、日本の経済学者たちが講義をした」という意味である。
経済学者に関する寓話が紹介されている。一つは無人島に経済学者が漂着したときの話、 もう一つは経済学者がカギを探す話である。どちらも有名であるので、ここでは書かない。
経済学では「依存効果」という用語がある。この用語を説明するために、 pp.14-15 で挿話が披露される。「有名な例は、例のジャガイモの皮むき器の話でありまして」と始まるが、 私は知らなかった。面白い話である。
本書は、都留重人が編者である。ということは、複数人の著者がいるということだ。 いろいろ読んでみると、ある著者は、日本政府の行政改革を議論する文脈で、 <ただ国際的に比較してみて、 日本の政府がそれほど大きな政府かといいますと、むしろ逆で小さな政府である。> と述べている(p.93)。 一方、別の著者は日本の社会保障を論じた章で、欧・米・日の諸国にみられる共通性として、 <「大きな政府」を抱えていることです。>と言っている(p.101)。両者は矛盾しているのだろうか。 この矛盾について、著者が異なるから見解が異なるのだ、と理解するのが一つの方法である。 一方、両者を整合させる方法は、日本全体は小さな政府であるが、社会保障に関しては大きな政府である、 と解釈することである。いずれにせよ、大きな政府とは何か、小さな政府とは何かという定義をはっきりさせないと、 この先には進めないだろう。(2021-01-26)
書 名 | サムエルソン経済学講義 上 |
著 者 | 都留 重人(編) |
発行日 | 1984 年 7 月 1 日 |
発売元 | 岩波書店 |
定 価 | 1800円(本体) |
サイズ | |
その他 | 岩波セミナーブックス 5 |
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