概要
全4篇からなる渡航記。
感想
柳広司の二度読んだ本を三度読むにあったので、久しぶりに読んでみることにした。
バルニバービ渡航記
第3篇はいくつかの国への旅行記である。私が昔読んだガリヴァー旅行記で覚えていたのは、小人の国、巨人の国、フウイヌムとヤフーの国のほかは、妙な発明品が次々と出てくる国だった。 その国がバルニバービという名前だったことを初めて知った。今まで何を読んでいたのだろう。
このバルニバービ渡航記で荒唐無稽な発明品として描かれているものがいろいろある。p.249 から引用する。
家を建てる新しい方法を開発したという、凄く創意工夫に富んだ建築家もいた。 まず屋根から建て始め、順次下の方に手順を写して最後に土台にかかる、という施工法であった。これが実行可能である証拠には、賢い二種類の昆虫、 即ち蜂と蜘蛛が似たようなやり方を実施しているのを見ればよい、と私に力説した。
ここを読んで驚いたのは、少し前、某建設会社が考案したという、高層ビルを最上階から作るという工法であった。さすがに土台(基礎)は最初に作るが、その後でまず最上階を地上で作るのが特徴だ。 その後ジャッキやクレーンなどで最上階を持ち上げ、持ち上げてできた空間に最上階の真下の階を作り、この手順を繰り返すというものだ。リフトアップ工法とか、リフトビルド(工法)などと呼ばれている。 一見荒唐無稽に書かれていても、実現手段があるものだと驚いた次第だ。
そして、このように驚いたのにはわけがある。p.250 から引用する。
私はまた別な研究室に入ってみたが、そこでは教授が出入りする狭い通路を除いて(中略)到るところ蜘蛛の巣だらけであった。(中略)蜘蛛は紡ぐのもうまいが織るのもうまい、だから蚕より遥かに優れている、とのことであった。 (中略)蜘蛛の餌にする色彩鮮やかな翅をもった夥しい昆虫類を見せられ、蜘蛛の巣もこれがもとで色合いがきまる、とはっきり言われた時には、 いかにもなるほど、と思った。あらゆる色彩をもつ昆虫類が今手もとにあるし、この上は、糸を強くして切れないようにするのに必要な、或る種のゴムや油やその他の粘着性の物質を餌として旨くこれらの昆虫類に与えることさえできたら、 もう万人の望み通りのものが作れる、と彼は意気込んでいた。
昔読んだ、現代の発明を称揚する本があった。そこでは、「ガリヴァー旅行記」の「バルニバービ渡航記」での荒唐無稽な発明品が実は現代実用化されているものが多くある、と書かれていた。 その実例に挙がったのが蜘蛛の糸から織物を作る記述で、これはとりもなおさずカロザースの発明したナイロンである、という結論を出している。蜘蛛の糸とナイロンを結びつけるのはかなり強引だと思うが、 その本のおかげで「ガリヴァー旅行記」を読んだらどんなことがわかるのだろうという気持ちが起き、1990 年代の初めに読み直してみた。そこで気づいたのがリフトアップ工法のことだったというわけだ。
書誌情報
| 書名 | ガリヴァー旅行記 |
| 著者 | ジョナサン・スウィフト |
| 訳者 | 平井正穂 |
| 発行日 | 2000 年 5 月 8 日 第 40 刷 |
| 発行元 | 岩波書店 |
| 定価 | 760 円(本体) |
| サイズ | 461 ページ |
| ISBN | 4-00-322093-5 |
| 備考 | 草加市立図書館で借りて読む |