古今東西の女たらしの筆頭格、光源氏の女遍歴が始まる。
私はモテない男であるし、男女の(特に女性)の機微もわからないから、何もいう資格はない。
びっくりしたのは、この巻「末摘花」だった。訳者の要約を引用する。夕顔とは五条で出会った、とりたてて美女ではないが謎めいた女性。 源氏とデートをするが、のちに夕顔は物の怪にとりつかれ変死してしまう。
夕顔を忘れられない源氏(18)、零落した貴婦人を求め、末摘花を知り契るも、その醜さに驚愕。 「自分以外の男はまして我慢できまい」とかえって結婚を決意する。
ここを読んで、「善人なをもて往生す、いわんや悪人をや」ということばを思い出した。全然関係ないが。
はるか昔、1980 年ごろだろうか。電車のなかで、見るからにハンサムな男と、見るからに美人とは言えない女性が一緒にいた。 女性は幸福そうに満ち足りた顔でいたが、男性は不機嫌そうな顔をしていた。この末摘花の巻を見ると、そんなことを思い出す。
さて、末摘花はどんな容貌なのか。pp.331-332 から引用する。ここで君とは光源氏のことである。
まず座高が高く、胴長に見えるので、君はやっぱりと胸が潰れました。 次に「なんてブサイクな」と見えるものは鼻なのでした。 思わず目がくぎづけになります。 普賢菩薩の乗り物(象)かと思えます。 驚くほど長く伸びていて、 先のほうが少し垂れて色づいているのがことのほか嫌な感じです。 色は雪も恥じらうほど白く、 青みがかって、おでこがすごく広いうえ、 まだ下にもある面だちからすると、どうやら恐ろしく長い顔なのでしょう。 痩せていることといったら痛々しいほど骨張って、肩のあたりなど、 痛そうなまでに着物の上からも見えます。
このあと着物のことまで触れているが、省略する。鼻のことに言及するなんて、ゴーリキーや芥川龍之介、 後藤明生のことまで予測していたのか。 (2019-05-03)
書 名 | 源氏物語1 |
著 者 | 紫式部 |
訳 者 | 大塚 ひかり |
発行日 | 20?? 年?月 |
発行元 | 筑摩書房 |
定 価 | ??? 円(税別) |
サイズ | 文庫版 |
ISBN | 978-4-???????? |
NDC | 913.369 |
その他 | ちくま文庫 |
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