Chun Wa Wong:物理数学入門Ⅱ

作成日:2024-04-21
最終更新日:

概要

本のカバーから引用する:

本書は題名こそ「物理数学入門」であるが,物理専攻の学生だけが対象ではなく,理工系の学部学生が履修すべき「応用数学入門」といってもよいものだ。 多くの数学書鬼見られる味もそっけもない説明ではなく物理を語る「言葉」としての数学という視点から具体的に話が進められるのが特徴である.(後略)

本書は、Introduction to Mathematical Physics Methods and Concepts の翻訳である。

本書の副題は「微分方程式と複素関数」である

各節の末尾には練習問題があるが、解答はない。

感想

第Ⅱ巻は4章から6章まである。始まりの章は「4 物理学に出てくる微分方程式」である。常微分方程式も偏微分方程式も登場する。ほとんどが線形微分方程式だが、 最後の一節は非線形系の解説で、カタストローフ、ヒステリシス、分岐、カオス、ストレンジアトラクターまで触れられている。 「5 特殊関数」では、おなじみのルジャンドル、ラゲール、エルミート、チェビシェフの多項式およびこれらの微分方程式が示されている。またステュルム-リウヴィル方程式も固有関数展開と合わせて解説されている。 「6 複素関数」では、さまざまな応用が述べられている。

経路積分

本書には「経路積分」ということばが出てきている。定義が示されていないのだが、p.142 で、複素数 `z` の関数 `f(z)` は複素 `z` 平面上の経路 `C` に沿って積分することができる. という一文があるので、たんなる線積分だと思っている。わたしが「経路積分」で思い出すのはファインマンの提唱した経路積分で、線積分と混同されるような言葉遣いをされると困ってしまう。

「6.10 複素積分: 留数の計算」では、下記の例題がある。

`int_-oo^oo (dx)/(x^3+i) = -(2pi)/3 i`

`int_-oo^oo e^(ilambdax)/(x+ia) dx = 0`

`int_-oo^oo e^(-ilambdax)/(x+ia) dx = -2piie^(-alambda)`

`int_-oo^oo (sin lambda x)/(x+ia) dx = pi e^(-alambda)`

`int_0^oo (dx)/(x^2+a^2) dx = pi/(2a)`

`int_0^oo (dx)/(1+x^3) dx = (2pi)/(3sqrt(3))`

`int_-oo^oo e^(ax)/(1+e^x) dx = pi/(sinpia) quad (0 lt a lt 1)`

`int_0^oo sqrt(x)/(1+x^2) dx = pi/sqrt(2)`

`int_0^(2pi) (dtheta)/(a+b sin theta) = (2pi)/(a^2-b^2)^(1//2) quad (a gt abs(b) gt 0)`

なお、p.172 (b) 式の `int_-oo^oo [e^(-ilambdax)//(x+a)] dx` は誤植で、 正しくは `int_-oo^oo [e^(-ilambdax)//(x+ia)] dx` である。ほかにも留数を用いた積分はいろいろある。複素関数を参照してほしい。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名 物理数学入門Ⅱ
著者 Chun Wa Wong
訳者 小林澈郎、近匡
発行日 平成 8 年(1996 年)3 月 25 日
発行元 丸善
定価 3200 円(本体)
サイズ A5 版
ISBN 4-621-04156-8
その他 越谷市立図書館にて借りて読む

まりんきょ学問所読んだ本の記録 > 物理数学入門Ⅱ


MARUYAMA Satosi