初めてラテン語を学ぶための学生に書かれた教科書。
独習用として書かれている。著者のもの言いは素直で、たとえば第2章「数と性」で、名詞の単数と複数についてこういっている。
単数から複数を作る,あるいは単数形と複数形の関係を知る,ということは,ラテン語ではかなりやっかいで,(中略) むろん複数形の作りかたにはいくつかの型があるから,見かけほどむずかしくはないが,かなりの忍耐力を要する.
この本で格変化の順番は、1. 主格、2. 呼格、3. 対格、4. 属格、5. 与格、6. 奪格 の順である。 この順番にしている理由だが、 憶測では、中性名詞では単数・複数とも主格・呼格・対格が必ず同形である、 ということを示しやすいように隣どうしに置きたかったからではないか。 そして、複数では与格と奪格がつねに同形である、ということも示しやすいからではないか。 p.23 の dōnum(第二変化、[f]贈り物) の表を見て、 そう考えたのだ。 なお、結果的に下記表は単数でも与格と奪格は同じ形になっているがこれは第二変化だからであって、一般にはそうではない。
単数 | 複数 | |||
---|---|---|---|---|
主格 | dōnum | ┓同 | dōna | ┓同 |
対格 | dōnum | ┛形 | dōna | ┛形 |
属格 | dōnī | dōnōrum | ||
与格 | dōnō | dōnīs | ┓同 | |
奪格 | dōnō | dōnīs | ┛形 |
通常の本では 1. 主格、2. 呼格、3. 属格、4. 与格、5. 対格、6. 奪格 の順が普通だから、まごつくに違いない。
なお、上記の憶測は、 "Wheelock's Latin"のダメなところ(a01w.broada.jp) で裏付けられることになった。 主格(≒呼格)、対格、属格、与格、奪格の順が望ましい理由は、リンク先を参照されたい。
書 名 | 初級ラテン語入門 |
著 者 | 有田 潤 |
発行日 | 1983 年 3 月 10日(第14刷) |
発行元 | 白水社 |
定 価 | 1400 円 |
サイズ | |
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その他 | つれあいの本 |
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