ヘンデル、ハイドン、シューベルト、ドボルザーク、フォーレの5人の大作曲家について、 チェリストである著者が親しく読者に語りかける。
この本は、私の掲示板にあったかな さんの投稿で知った。 フォーレのことを取り上げているクラシックの本は少ないので、 このような本は貴重である。
だから、まずはフォーレの章から読み始めた。 著者であるイッサーリスはは、まず読者に向かって、なぜフォーレなど取り上げるのか、と語りかける。 そして、フォーレが特別な作曲家であることを説いていく。 私が知らなかった情報も多くあり、何より語りかける口調がよい。 著者のフォーレに対する愛情が伝わる。ちなみに、イッサーリスの息子の名前は Gabriel であり、 これはガブリエル・フォーレから取ったものとある。
ちなみに、息子の名前をこの本では訳者は「ゲイブリエル」と英語読みで訳している。 なお、この本に先立って訳された、ベートーベンなどを取り上げた正編があり、そちらでは同じ訳者が息子の名前を「ガブリエル」と訳している。
著者お勧めのフォーレの曲はまず、「レクイエム」そして「ラシーヌの雅歌」を初め、いくつもの曲を推薦している。 ピアノ曲が全く取り上げられていないのは残念だが、他にもいい曲があるので仕方がない。 チェロ関係では「シシリエンヌ」、 「エレジー」、「チェロソナタ第2番」である。妥当といえるだろう。チェロソナタの第2番を選んだのは、 ガット弦を愛用するイッサーリスには第1番より第2番がよいと判断したからだろう。
さて、一応、フォーレの章と用語集で誤訳と思われるところのみ指摘する。
ページ | 誤 | 正 | 参考 |
---|---|---|---|
371 | 弦楽五重奏曲 | 弦楽四重奏曲 | 後から6行目 |
379 | 動物の内臓 | 動物の腸 | 上段、前から4行目。おそらく原語では gut であろう。 |
それから、事実かどうか、わからないことがある。 たとえば、フォーレの耳の病についてである。 ネクトゥーによるフォーレの伝記(ガブリエル・フォーレ 1845-1924, 新評論, pp.156,158)では、 フォーレの次男フィリップは次のように付け加えている、とある。 「(前略)難聴に加えて、不幸にも彼にはより悪質なデフォルメした音が聞こえ、低音域は三度高く、 高音域は三度低く感じられたのです。そしてただ中音域のみが弱いながらも正確に知覚されていました。」 一方、ヴュイエルモーズの伝記では、フォーレが1919年に書いた手紙を次のように引用している。 「(前略)低い音の音程はより低くなり、高い方はより高くなる。だからその結果がどんなになるか、想像できるだろう。 それは全く凄まじいものだ。(後略)」この本では、ヴュイエルモーズの表現をとっている。うーん、どちらが本当なのだろう。
書 名 | 続・もし大作曲家と友達になれたら… |
著 者 | スティーブン・イッサーリス |
訳 者 | 板倉 克子 |
発行日 | 2008年5月10日 |
発行元 | 音楽之友社 |
定 価 | 2800円(本体) |
サイズ | 397ページ |
ISBN | 978-4-276-21521-4 |
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