品質マネジメントシステム

作成日:2000-12-28
最終更新日:

1. 一筋縄ではいかない言葉の定義

この場では品質とは何かを議論する材料を提供する。 一番はじめに、「品質マネジメントシステム」ということばを持ってきた。 この「品質」、「マネジメント」、「システム」ということばはともに曲者である。 一つずつ、ことばとじゃれ合いながら考えてみたい。

2. 品質とは

品質といえば、ISO 9001 を研究している方や ISO 9001 に実務で振り回されている方からいろいろな意見を頂くだろう。 どうやら意見の一致を見ているのは、日本語で品質といっても、 必ずしも形のある「もの」の質だけとは限らないということである。サービス(役務)もそうだし、 プロセス(過程)という、結果としては残らないものも品質であるという。 さらに、経営の品質と解釈する人もいる。そこらあたりは、 ISO 9001 のあたりでもう少し考えるつもりだ。

ワインバーグのように「誰かにとっての価値」とさっぱりと定義する人もいる。 これはけっこう私も気にいっている。では価値とはなんぞや、とソクラテスばりに 問いかけをしていけば、まだまだ多くのものが掘りだせるに違いない。

で結論はというと、品質は各自が定義できる、ということである。

3. マネジメントとは

マネジメントということばも、一筋縄ではいかない言葉である。 たとえば、ISO 9001 を見てみると、manage(management)と似た意味のことばに、 control, administration, direct などがある。 これらのことばの使い分けはよくわからない(誰かが解説していたが、忘れた)。 わからない、ということを裏付けるかのように、 エスペラントには manage に相当することばがない。 たいてい、control, administration, reign, direct, care に相当することばで間に合わせる。

さて、この稿を考えようとして矢先、たまたま見ていた人工知能学会誌に、 野村直之さんの論文があった。野村論文では、斉藤実「コンカレント・マネジメント」からの 引用として、創造的米国企業における"manager"の説明があった。

「定型化できないきわめて創造的なジョブにおいて,あらゆる知恵と努力を結集して目的, 目標を達成する責任者」

こういうことであれば、わかる。野村さんは、このあとドラッカーの例をひいて、 マネージャーには交響楽団のアーティストや大学の専門医と同様な高度な資質やスキルを求められる、 といっている。私はドラッカーの原本をもっていないのでわからないが、 交響楽団のアーティストというのは実は指揮者のことだろう。そして、これらの例にもまして、 ファン・フォークトの「宇宙船ビーグル号の冒険」 に出てくる「総合科学者」がもっともこれに 近いのだろうな、と思う。

で、結局マネジメントとは何か、よくわからないのであった。

4.システムとは

今や将棋の定跡にも「システム」ということばが使われる。 古くは「森下システム」が猛威をふるった。 今は「藤井システム」である。藤井前竜王の名を一躍将棋界に知らしめたのは、 この藤井システムであった。

案外この「システム」という言葉が定義しやすいのかもしれない。 日本語では漢語で「系」「体系」「制度」という言葉があてられることもあるし、 やまとことばで「仕組み」「仕掛け」ということばが しっくりするときもある。今まであげたことばでだいたいいいような気がするが、 忘れてはならないのは、 システムというのはなんらかの意味で区別すべき対象が他にあるという意味がある。 物理で閉鎖系とか開放系とかということばがある通り、このシステムが通用する範囲が 明示的に、あるいは暗黙のうちに(どこかのコンピュータソフト説明書のようだ)、 決められている。この「どこまでが」というのが、システム開発でいつも頭を悩ませるところだ。 そうして、体系ということばからすると、誰が作業を行なっても(主体が誰であっても)、 その秩序は保たれるということも前提としてあるのではないか、とも思う。

5. 品質マネジメントシステムとは

結局はよくわからないままである。

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maruyama satosi