東京物語

作成日:2012-05-25
最終更新日:

あらすじ

尾道に住む老夫婦には、東京に住む子供がいる。その子供を頼って上京し、旅行をして、尾道に帰ってくる。

感想

東京物語ということでずっと東京の話かと思ったが、実は尾道から出てきた夫婦が東京旅行をする、という筋である。 だから、映画の冒頭と末尾は尾道の物語で、東京の物語は映画の中間部にある。知らないということは恐ろしいことだ (wikipedia のフランス語やイタリア語による紹介では「東京旅行」と訳されている)。

つれあいと一緒に見ていたのだが、広島市出身のつれあいは、夫婦の、特に夫の話す広島弁が「どこか違う」という。 ただ、広島市内の安芸方言と尾道の備後方言との違いなのか、それとも映画俳優の訓練不足によるものかはわからない。

夫婦の夫を演じる笠智衆は、セリフが棒読みっぽいが、これが個性なのだろうか。そう思って見ていた。 そして、カメラワークもまるでマンガのようだった。ズームもパンもなく、マンガのコマ割りのように感じられた。 そういえば、家族ゲームのカメラワークもこんな感じだったのではなかったか。

原節子は夫婦の次男の嫁という設定だ。次男は戦死している。やはり、ことばも含めて美しい。ただ、 作ったような、こしらえものの美しさという気はする。

映画の要所で、東京を象徴するかのようにオバケ煙突の場面が挿入される。これはどういう意味があるのだろう。 子供が住んでいるのは、東武鉄道(今は東武スカイツリー線という)の堀切駅のあたりである。あそこからオバケ煙突が見えたのだろうか。

夫婦が尾道に帰るので、東京駅で列車の順番を待っている場面がある。ここで、表示板がカタカタと回って夜行急行「安芸」の表示に変わるところが、 昔を感じた。ちなみに、「安芸」は呉線経由であることは知らなかった。海岸回りのほうが需要があったということなのだろう。

この Wikipedeia のイタリア版では、冒頭で次のセリフが引用されている。妻の葬儀が終わり、笠智衆が原節子に語ったセリフだ。 「妙なもんじゃ。 自分が育てた子供より、いわば他人のあんたのほうが、よっぽどわしらにようしてくれた。いや、ありがと」

音楽

タイトルで、音楽 斎藤高順とあった。これはひょっとしてピアノ曲「ガラスの星座」の作曲者ではなかろうか、と思った。 この小曲はタイトルから想像される幻想性があり、これに魅かれて何度も練習したのだった。 映画音楽は筋とはつかず離れずで、落ち着いた美しいものだった。

ネタバレになるが、尾道から帰ってきた妻は体調を崩し、死んでしまう。葬式で坊さんたちが読経するのだが、 その声の響きと音程の違いが心地よく、あたかもハーモニーのように聞こえるので感心した。

その他

記録。2012 年 5 月 25 日、録画したビデオで見る。

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MARUYAMA Satosi