§165 動作を表す動詞と状態を表す動詞

作成日:2010-08-22
最終更新日:

英語の例

put on は「身につける」という動作を表す。一方、wear は「身につけている」という状態を表す。

エスペラントの例

エスペラントでは、「点動詞」と「線動詞」ということばを使うことが多い。 藤巻謙一著「改訂版はじめてのエスペラント」のp.76 では、点動詞とは、瞬間的な変化を表わすもの、 線動詞とは持続的な状態を表わすもの、との説明がある。 この流儀で行けば、 put on が点動詞、wear が線動詞にあたる。 対応するエスペラントは、meti al si が点動詞、porti が線動詞になる。 たとえば、大信田丈志さんの 「基礎から分かる作文教室(14)」 (www.damp.tottori-u.ac.jp)によれば、次のとおりである。

[誤] Ĉiam li metas al si sandalojn.

[正] Ĉiam li portis sandalojn.

(彼はいつもサンダルをはいている)

この「点」と「線」の区別をアスペクト(相)という。 英語やエスペラントでは意識することはほとんどないが、正しい(わかりやすい)言い方をするためには、 細かくはなくとも必然的に意識する必要がある。

別の例として、藤巻謙一著「改訂版はじめてのエスペラント」のp.76 には次の表がある。

点動詞線動詞
stariĝi 立ち上がるstari 立っている
naskiĝi うまれるvivi 生きている
akiri 手に入れるhavi 持っている

この相を意識する言語にロシア語がある。ただし、ロシア語では「完了体」「不完了体」のような語彙を使う。

なお、点動詞と線動詞の違いは、時刻の言いまわしにもある。until を使うのは線動詞、by を使うのは点動詞である。 §336 時を表す前置詞を参照。

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MARUYAMA Satosi