§90 It の特別用法 |
作成日:2010-05-30 最終更新日: |
以下を述べる文の主語となる。
it と that の間には、 seem / appear のような感覚を表すことば、happen / chance のように偶然を表すことば、 occur / strike / flash ; dawn ; transpire のように知覚を表すことばが使われる。
ばくぜんとした状況を表す。主語、目的語、補語に使われる。
すわりをよくするために形式的に先に置く。具体例は後になる。予備の it 、導入の it とも呼ばれる。
It is 〜 that ... という、英語固有の強調構文で使われることもある。 ほかの言語では語順を入れ替えたりすることで強調部分を表す(語順の入れ替えによる強調は英語にもある)。
英語で教育されてきた時間が長かったので、 「雨が降る」が "It rains." に、「今日は晴れだ」が "It is fine today." になることがごく自然だった。 考えてみれば、これが怪しかったのだ。 エスペラントを知って、英語の上記の文がそれぞれ Pluvas. や Hodiaŭ estas bela. といえることが最初は不思議だった。それがだんだんだんエスペラントに慣れてきて、 今では非人称の It があることが不思議に思えるようになった。
「雨が降る」をいろいろな言語というとどうなるか。第二外国語として学んだドイツ語では、Es regnet. だし、 フォーレつながりで少しかじったフランス語でも Il pleut. だから、 形式主語をおきたくなる気持ちはわかる。
一方で、フランス語を除くロマンス語、つまりイタリア語、スペイン語、ポルトガル語、 ルーマニア語などで「雨が降る」というときは It に相当するものは置かず動詞だけで賄う。 これは、動詞の活用で3人称であることがわかるから略しているだけで、 雨という自然現象だから、という理由ではない。
なお、天候の中には湿度も入る。 It is humid. (ジメジメする)が英語、Estas malseka. がエスペラントである。 エスペラントの無人称構文で使われる動詞は、雨かんむりのことばがほとんどだ。 以下は、実用エスペラント小辞典からの抜粋である。
| grajli | (霰が降る) |
| hajli | (雹が降る) |
| nebuli | (霧が立ち込めている) |
| neĝi | (雪が降る) |
| pluvi | (雨が降る) |
| plujni | (霜が降りる) |
| rosi | (露が降りる) |
| tondri | (雷が鳴る) |
| venti | (風が吹く) |
| fulmi | (稲妻が光る) |
日照に関する無主語動詞には次がある
| mateni | 朝である |
| vesperiĝi | 日がくれる |
| noktiĝi | 夜になる |
| krepuski | たそがれる |
Thelonious Monk に Crepuscule With Nellie という曲がある。
ばくぜんとした状況の it で思い出すのは、マイケル・ジャクソンの Beat It ならびに、 この曲のパロディーであるウィアード・アル・ヤンコビックの Eat It だ。
なお It については、It を主語とする転換という節も参照されたい。
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