極私的関数解析:ℓp空間

作成日:2013-01-23
最終更新日:

p 空間の定義

p 空間 (ℓp spaco, ℓp space)とは、 有限次元ベクトル空間に対する p-ノルムの自然な一般化を用いることで定義される無限次元ベクトル空間である。 ℓ は Lebegue から来ていると思われる。少なくともそう覚えればよい。 ここで、 ℓ が小文字であるのは本質的である。小文字の ℓ のℓp空間は可算無限個の次元をもつが、 大文字の L を使う Lp 空間は非可算無限個次元を表すからだ。

数列空間

数として実数を `RR`、複素数を `CC` とする。`RR` または `CC` を表す記号として `K` を使う。

数列空間 ℓ2

無限数列
`x = (xi_1, xi_2, xi_3, cdots, xi_k, cdots) (xi_k in K)` のうち、下記の条件を満たすものの全体を `ℓ^2` で表す。
`sum_(k=1)^oo |xi_k|^2 < + oo`

`ℓ^2` はエスペラントで minuskla lo kvar, 英語で small ell two と読む。

例1:`a = (1, 1/2, 1/3, cdots, 1/k, cdots)` は `ℓ^2` に属している。
証明
`sum_(k=1)^oo 1/k^2 = 1 + 1/2^2 + 1/3^2 + cdots + 1/k^2 + cdots < +oo`

例2:`b = (1, 1/sqrt(2), 1/sqrt(3), cdots, 1/sqrt(k), cdots)` は `ℓ^2` に属さない。
証明
`sum_(k=1)^oo (1/sqrt(k))^2 = 1 + 1/2 + 1/3 + cdots + 1/k + cdots = +oo`

例3:`x = (xi_k)_(k=1)^oo, y = (eta_k)_(k=1)^oo` がともに `ℓ^2` に属する。すなわち、 `x in l^2` かつ `y in l^2` のとき、`x + y in ℓ^2` である。
証明
まず次の不等式を証明する。
`|xi_k + eta_k|^2 <= (|xi_k|+ |eta_k|)^2 <= 2|xi_k|^2 + 2|eta_k|^2`
まず左の不等号を証明する。三角不等式から、
`|xi_k + eta_k| <= |xi_k|+ |eta_k|`
両辺を二乗して
`|xi_k + eta_k|^2 <= (|xi_k|+ |eta_k|)^2 `
これで左の不等号が証明できた。次に右の不等号を証明する。右辺から左辺を引くと、
`2|xi_k|^2 + 2|eta_k|^2 - (|xi_k|+ |eta_k|)^2 `
`=|xi_k|^2 - 2|xi_k||eta_k| + |eta_k|^2`
`= (|xi_k|-|yi_k|)^2 `
`>= 0`
よって最初の不等式が証明できた。
したがって、最初の不等式から
`sum_(k=1)^oo |xi_i + eta_i|^2 <= sum_(k=1)^oo 2|xi_i|^2 + sum_(k=1)^oo 2|eta_i|^2`
が成り立つ。 `x, y` ともに `ℓ^2` に属するので、定義から右辺の各項は収束し、有限の値となる。その和も有限となるので定義より `x+y` も `ℓ^2` に属する。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

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MARUYAMA Satosi