旅日記Vol.49 まるで春のような陽気で… 2007.2.07 大阪

 ●どっちで行こうか・どっちに乗ろうか

『レイル・ストーリー13』は先月の東京地区取材に続いて大阪地区の取材へ。さて大阪なら電車で行ってもクルマで行っても時間的にはそう大差ない。ただ費用を考えると一人では電車のほうが安上がり。でも現地での行動を考えるとクルマのほうが便利かな…。
悩むところだが、地図とにらめっこしながら電車に乗るルートが一筆書きになるように取材行程を練ると、結局今回は電車に軍配が上がった。まあいつもどおり日帰りで、しかも金沢に戻ってからエアロ(しかも上級クラス)という過酷なスケジュールだが、そう余裕のないコトもなさそう。、

早速キップの手配だが、行きは大阪まで普通車自由席、帰りはゆったりグリーン車という、全くいつもと同じルート(爆)。前回の東京地区取材であわや乗り遅れというスカタンをやってしまってから、自由席のありがたみが判ったというものだ(笑)。帰りの分はJR西日本の「e5489plus」でネット予約。ただし当日時間がなくて発券すら出来ないと困るので、たまたま取材日の前日に用事のついでに金沢駅で無事キップを手にした。取材漏れがあったら困るので地図をコピーして取材箇所をチェック、ルートを再確認して、よ〜し、これでバッチリだ。あとはちゃんと起きるだけ。頑張って7時台の特急に乗るぞ!

今度はちゃんと目覚めて金沢駅へ。これなら7時台のに乗れるぞ。金沢から大阪なら『サンダーバード』『雷鳥』の二つが選べるが、停車駅が少なく速い『サンダーバード』の人気は高く、『雷鳥』はどうしても二番手になってしまう。電車も『雷鳥』の485系は古さは隠せず『サンダーバード』の681・683系には勝てない。でも「鉄」の世界では485系のような「国鉄型」の人気は高くボクも『雷鳥』を応援したくなるところだが、利用者としての立場なら、速さと快適性ではボクだって『サンダーバード』を選んでしまうのが正直なところだ。
さて駅のコンビニHeart-Inでサンドイッチとカフェオレを買いホームに行くと『サンダーバード6号』自由席は長蛇の列、電車が着いて富山からの乗客が降りた途端に席は見る見る埋まり、やっと見つけた空席は喫煙車で、まるで燻製になりそうな空気…。そんなにここぞとばかりタバコ喫わなくてもねえ。確かにどこでも禁煙は進んでいるけど何もそこまでしなくても。諦めて『雷鳥8号』自由席に変更。また乗れなかった…。
『サンダーバード』を見送り続いてやって来た『雷鳥8号』自由席は金沢ではまだガラガラ。車内は程好く暖房が効いていて、思いのほか快適。古い電車だがよく整備されている。

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 ●『雷鳥』の旅は

定刻に電車は金沢駅を離れた。ところが車輪からはボコボコボコ…という不快な音が。これはタイヤフラットと呼ばれるもので、ブレーキ時に車輪がロックして、車輪に部分的なフラット面が出来てしまったことをいう。電車はクルマとは違い車輪をロックさせず、むしろロックするギリギリのところでエネルギーを吸収したほうが早く停まれるが、たまにブレーキが効きすぎてこのような現象が起こる。こうなると車輪を削るしかないが、意外なことに電車の車輪の削り代は6cmもあるという。ちなみに『サンダーバード』はABSがあるので大丈夫なんだとか。
席を代わろうかと思ったが検札が済んでしまったので、まあこのまま大阪まで付き合うか…。

停車駅ごとに乗客が増え、福井県に入るとスグに右手には越前CCのコースが見えてくる。今年は暖冬でゴルフ場にとっては嬉しい計算外なのかもしれない。それにしてもコース沿いに並ぶ白いOB杭の外には、いっぱいボールが落ちているんだろうな。うはは。買ったばかりのiPod聞きながら、前回家に忘れてきた本を改めて読むとするか。

福井を発車するとしばらくして霧が立ち込めてきた。冬の晴天時などこうして朝に霧が出ることがあるが福井周辺は特に多いようだ。電車は減速を余儀なくされ霧が晴れるとまた加速、これが二度あって少し遅れが出た。霧の中を行く車窓はまるで雲の中を飛ぶ飛行機のようで、ほのかに陽も射して不思議なカンジがした。

北陸トンネルを出るとまもなく交流から直流に切り替わる。以前は近江塩津と永原の間だったが、昨年秋に北陸線は敦賀以南の直流化が行われ新快速が関西から直通運転を始めたのは記憶に新しいところ。そのため切り替え地点(デッドセクションという)も移設されたが、設置には苦労があったという。というのもこの場所は敦賀から今庄へと続く上り坂の途中にあり、かつてデコイチが咆哮した頃はここからさらに厳しい峠越えが待ち受けていた。『雷鳥』など電車は動力性能が高いので問題ないが、電気機関車が牽く貨物列車だとここは加速をつけて峠に向かう大事な区間、しかも北陸トンネル内もずっと勾配が続いている。その入口なのに電源切り替えのためどうしても一旦惰力でセクションを通過しなければならず、運転には注意が必要と聞く。
しかもトンネルの手前には2箇所の踏切があり、万一ここで事故があった場合、貨物列車だと停車してしまうと勾配上の再起動は厳しく、その場合一旦敦賀方にバックして架線に送る電気を直流から交流に切り替え、一気に加速してそのまま峠を越えられるよう設備が整っている。

交流電化のパイオニア、敦賀第二機関区にはかつて交流専用の赤い電気機関車がタムロしていたが、今は名前も変わり架線に流れる電気まで変わってしまった。直流化を機会にローカル電車には新車の521系が製造され福井以南で活躍を始めた。その陰で「食パン電車」こと敦賀所属の419系の中には役目を終え構内で休んでいる姿も見られた。

いつしか電車は湖西線を走っていたが、電源切り替えの場所が変わるとその実感も薄れたようだ。ここからは130km/h区間…と思っていたらこの電車は近江今津停車だった。琵琶湖の対岸は霞んでおぼろげにしか見えなかったが、本来冬なら空気が澄んでいてスッキリ見えなければならないはず。もう春霞というのは季節が早く巡ってくる証拠なのかも。電車は快走を続け福井県内での遅れもすっかり取り戻し、京都に近づいていた。

京都駅に並ぶJR西日本の電車はすっかり様変わりし、この『雷鳥』がえらく古く思えてくる。ここから大阪までラストスパート。途中221系の快速と抜きつ抜かれつのレースはなかなかスリリングだった。目下リニューアル工事中の大阪駅に到着。さあ、取材だ!

 ●ハイペースの取材

今回の取材は大阪だけでなく神戸まで足を伸ばす。モタモタしていると時間がなくなってしまうので、あらかじめ予定コースを調べておいた。神戸までは阪神電車に乗るが、途切れ途切れに乗らなくては。まずは尼崎へ。ちょうど姫路行きの直通特急があったのでそれに乗る。山陽電鉄からの乗り入れ車の5030系だ。以前尼崎には特急が停まらなかったが、阪神大震災以降はJR新快速との争いに変化が現れ、阪急や京阪同様特急といえどもかつての急行並みの停車をするようになった。
尼崎では急行に乗り換えて尼崎センタープールへ。この駅は通常は急行が停まらないが、この日は競艇開催日なので臨時停車。一目でそれと判るオッサン達と並んで電車を降りるのは…。続いて今津へ移動。今度は普通で。懐かしいなあ「青胴車」。

今津の後は神戸市内まで取材はない。西宮で須磨浦公園行き特急に乗り換えたら今度は阪神9300系。大開で降りたらしばらく徒歩で取材。ところで阪神からの神戸高速線・山陽電鉄直通の特急は姫路行き「直通特急」と、須磨浦公園行きの「特急」は停車駅が異なる。「特急」は相変わらず元町から先は「特急」のまま各駅停車。難しいぞ。

歩いて取材の後はさらに西を目指し高速長田駅で電車を待つ。姫路行き直通特急が来たので、山陽須磨まで乗ってまた取材。2月だというのに春のような暖かな晴天で取材もサクサクはかどる。この界隈にはクルマでは何度も来たことがあるが、電車で来るのは実は初めて。

山陽須磨から阪神梅田行き直通特急に乗って新開地で「阪急方面」梅田行き特急に乗り換え。電車は新車の9000系でピカピカ。内装色が少し濃くなっていた。
神戸高速線の新開地と高速神戸では阪急と阪神両社の「梅田行き特急」が運転されている。間違えないよう「阪急方面」「阪神方面」と表示されているが、間違える人なんていないようだ。梅田まで乗るんだったらカードならどちらでも同じだな。
次は阪急神戸線の武庫之荘へ行く…つもりだったが、時計は13時を回り、どうにもおナカが空いて三宮で電車を降りてしまった。久しぶりに「香港茶楼」で海鮮あんかけ焼きそばと、名物牛肉ミンチの蒸し物食べよう!そうしよう!だったらそのまま直通特急に乗って元町で降りても良かったか(笑)。
高架沿いに店へと歩く。歩く。…あれっ確かこの辺りにあったのに間違えたかな…。そんなはずはないと少し戻ったらなんと店は改装工事中!3月半ばにリニューアルオープンだとか…。あーあ、30分ほどロスした。

工事中…
なんと工事中だった香港茶楼

仕方がないので阪急三宮駅に戻り再び梅田行き特急を待つ。こうなりゃ取材続行だ。西宮北口で普通に乗り換えて武庫之荘へ。駅の「阪急そば」でも寄ろうと思ったが、こうなりゃ意地でも焼売太楼行ってやる!それまでガマンだ。ここでもテクテク歩いて取材。これでこの日の取材はおしまい。お昼以外は思いの他はかどって、梅田行きの普通に乗る。京都線、宝塚線の電車と並ぶように梅田に到着。やっとお昼だ。今日もハーフ麺定食にあんかけ焼売を追加。おナカいっぱい。

ようやく少し時間が出来たので、旭屋書店へ「鉄」な本など仕入れに行く。ゆっくり品定めして2冊購入。改築真っ最中の阪急百貨店へ行ってみた。

梅田の顔だった阪急百貨店は増築された部分のみが残り、元の建物はない。かつてコンコースに描かれた獅子や鳳凰などの装飾はどうなったのだろうか。そんなコトを思いつつおみやげでも買おうと地下の食料品売場へ。いわゆるデパ地下ね。売場はバレンタイン商戦真っ盛りで女性客ばっかり。そんな中でお土産を探すのはちょっと気恥ずかしいものが…。そろそろ時間も迫り、JR大阪駅へ。ついでにICOCAもチャージ。

阪急梅田百貨店が…
ちょっと寂しくなった阪急百貨店

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 ●帰途に

JR大阪駅はホームを一つずつ移動しながら改装工事が行われている。北陸線特急の11番のりばの工事は行われていないが、聞くところによるとこの工事でホームは一つ減るらしい。北陸線は9番のりば…というコトになるのかな?などと思いつつ自販機でコーヒー買って1号車に乗ったのは発車5分前。う〜ん、今回も我ながら素晴らしい時間配分。この日の『サンダーバード35号』は和倉温泉行き・富山行き両方とも683系ではなく681系だった。160km/h対応の681系は多くが『はくたか』にコンバートされた中、『サンダーバード』が9両全て681系なのは珍しい。でも683系の内装は先輩格681系に比べ照明や仕上げ材など簡素化されているのは事実で、ボク個人的には681系のほうがくつろげて好き。

帰りはやっぱりグリーン車。歩きつかれた身体にはホントありがたい。シートを少し倒し、レッグレストをペロンと裏返して靴を脱ぎリラックス。

車内アナウンスの後、程なく電車は発車。阪急三番街やイングスなどの車窓が流れると「大阪を離れるんだな」という気持ちになる。淀川を渡り新大阪に停車、普通や快速を何本か抜き去り、はや京都。あとは一路北陸へと向かうだけ。再び湖西線に入った頃にはだいぶ陽も傾いてきた。少し眠くなってきた…。

気がつくと電車は近江今津付近を快走中。さっき買ってきた本に目を通してみる。去年秋の北陸線敦賀直流化で、かつての柳ヶ瀬峠・山中峠越えの北陸線旧ルートを今再び取り上げる「鉄」な本を最近見かけるが、1冊はその本だった。珍しく電化後のコトにも触れていた。
北陸線田村-敦賀間は日本で初の交流電化を実用化した区間で、その経験が後の新幹線の成功にも結びついた。まさかこの区間が直流になって関西から新快速が走るなんて夢には思ったが現実になるとは思わなかった。

『サンダーバード35号』は敦賀は通過で金沢までは福井にしか停まらない。朝通った「デッドセクション」もこの電車は電源の自動切換が出来るので照明が消えることもない。ハイスピードを維持したまま峠をあっさり越えてしまう。かつて何時間もかかって乗務員はもとより乗客まで煤だらけになって越えた峠を。時代は大きく、しかも予想を超えて変わった。

夜の19時前だというのに福井駅はちょっと遅い帰りの高校生以外、あまり人影を見なかった。北陸線は特急街道とはいえローカル輸送となると大都市圏とは大きく違う現実を目の当たりにする。ただし道路は帰りのクルマで混んでいる。そういうものなのか…。もう真夜中のような車窓の中、金沢に近づくと少し明るく見えてきた。

快適なグリーン車を後にするのはちょっと勿体無い気もするが、とにかくそのままエアロに直行しなくちゃ。着いた時間も早かったので高架下の「金沢百番街」はまだ営業中で、その中を歩いてFitくんを迎えに時計駐車場へ。精算を済ませてクラブへ急ぎ、軽くシャワーを浴びてレッスン開始15分前にはスタジオ前にいた。今回は電車にして正解!

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