Denali--夢幻-- その2
22Apl.〜23May.1993
ランディングポイントにて
”Don't forget come back”
4月25日 曇り時々雪
昨日のカップルパーティが出発した直後、突然僕らの迎えも来た。
天候が下り坂なので、急げとのこと。
またまた、あわただしく出発する。
初めて乗るセスナは、思ったより小さくワクワクする。
あっという間に飛び立ち、まだ凍った川や雪原を眺めながらのフライトとなる。
右にルース氷河、左にトコシナ氷河を見下ろしながら、ハンターの右を大きく回りこむと、ガスの切れ間にデナリの南壁が現れた。あらかじめ依頼していたルートビューオプションで2回ほど東フォーク氷河をさかのぼってもらう。
う〜ん。でかい。上部の壁にも結構雪がついているように思う、下部は蒼氷かな?
となりのハストン・スコットのラインは以外と寝ているようだ。
カシンも見る限りなんとかなりそう。
まだ、凍った川 南壁をルートビューフライト
それにしても東フォーク氷河は無数のクレバスが不気味に口を開けている・・・。
あっという間に、ランディングポイントに着陸する。
無口なブッシュパイロットが離陸前に”Don't forget come back”と握手してきた。
Sure!!
固く握り返して、離陸を見送る。
ここがベースとなるので、早速テントを設営し、まずはステーキと野菜炒めで乾杯だ。
テイクオフ ステーキを焼くNジマさん
4月26日 曇り時々雪
6時半起床。
ゆっくり準備をして11時出発する。
準備するNジマさん ソリ引きの犬役?
氷河の本流まで下りのぼり始める。
タイトロープにスキーでソリの重荷を引くのは、慣れないこともあり結構疲れる。
ホワイトアウトで方向もつかめないので、14時ごろ東フォークの手前と思われるところに見つけたブロックのところに幕営する。
僕は、シュラフの中でウォークマンを聴き、Nジマさんは、”ムツゴロウ”を読んでいる。
気温は、-5度程度でとても暖かい。
4月27日 曇りのち晴れ
7時半起床。
10時40分出発。
朝は、かなり冷え込むのでどうしても出発が遅くなる。
11時15分、北東フォーク氷河の出合到着。
スロバニアパーティが、BASIN Campにもたどり着けず下山するとのこと。
19時ごろ、9200feet付近に幕営。
男女ペアのボブとエイミーは天気が崩れるとのことでデポして下っていった。
22時就寝。
4月28日 快晴後雪
8時起床。
11時5分出発。
振り返れば、カヒルトナ氷河とハンター
12時ごろ、先行パーティの幕営地の着く。
ここからは、トレースもなく、ラッセルをしながら進む。
しばらく進むがホワイトアウトとなり、適当に縦穴を掘って幕営する。
18時30分就寝。
4月29日 曇りのち晴れのち雪
8時起床
レンジャーステーションで渡されたCB無線で、曇りであることを聞く。
相変わらずのホワイトアウトで出発準備をして天気待ちをする。
少しガスが晴れてきたので11時半こと出発。
幕営準備をする他パーティ テン場にてNジマさん
15時ごろ、11000フィート付近に幕営。
4月30日 -20度 晴れ
8時起床。
CB無線も通じない。
11時20分出発。
スキーで向かうが、途中アイスバーンになっていたので、いったん戻ってスキーをデポ。
ホットショコラを飲んで、ここからは、徒歩で行くことにする。
SquirrelPoint付近 SquirrelPoint付近を行くNジマさん
途中、Nジマさんが2回、私が1回ヒドンクレバスに足をとられるが大事には至らず。
19時前 ウィンディーコーナーに幕営する。
今日は、風がないのでいいが、強風の時は、泊まれないだろう。
美しい夕日に、しばし見とれる。
この時期は、まだ数時間は真っ暗になるので、寒いが、眠りやすい。
帰るころには、白夜になるだろう。
ウィンディコーナーにて用を足すNジマさん
ウィンディコーナーからの夕日
22時就寝。
5月1日 -25度 快晴
かなり冷え込む。
8時起床。
朝起きたら、カメラが作動しなかった。
今日もCB無線は、通じず。
11時出発。
15時ごろ、BasinCamp着。
BasinCampにてフォレイカーをバックに
途中、2人組が下山していった。
今シーズンは、まだ登頂者はいないとのこと。
4300m。今日は、少し頭が痛むがたいしたことはないようだ。
5月2日 -25度 薄曇
8時15分起床。
今日は、順応日。
11時50分若干の装備を担いで出発。
ソリを引かなくてはいいので、楽ちんだ。
コルの手前は、ヘッドウォールは、ブルーアイス気味なので、
少し早いが、そこまでする。
曇り空に薄く日が差込み幻想的な下降となった。
6人ほど、BasinCAMP入りしてきた。
天気がよければ明日は、頂上往復だ。
5月3日 -28度 快晴
7時半起床
珍しくNジマさんが先に起きる。
きっとトイレをがまんできなかったのだろう・・・。
10時15分出発。
ヘッドウォールが予想通り硬い氷で時間を食う。堅い氷の上に薄く堅い雪がのっている。
ヘッドウォールの氷壁を行くNジマさん
ウエストバットレス上は、冷たい北風が吹き付けている。
順応が不十分のせいか、スピードは上がらず17時、HighCamp着。
アメリカ人ペアは、ヘッドウォールの出口で昨日ビバークしてHighCamp入りしたとのこと。
ウエストバットレスにて 古いスライドが悪かったか、なぜか暗い・・・
できたら頂上にたっておきたかったが、南壁の下降用に食料に手をつけるわけには行かないので穴を掘って食料と燃料をデポ。赤布の目印を残し下降することにする。
20時BasinCAMP着。
韓国人のキムさんがおいしいコーヒーを差し入れしてくれる。
日本語ぺらぺら。
5月4日 -28度 快晴
8時20分起床
ここにも若干の食料と燃料をデポし、12時15分下山開始。
途中スキーを回収し、21時頃ランディングポイントのBC到着。
レンジャーの女性にオレンジジュースをたっぷりいただく。
ありがとう。
スキーでロープをつけての下降はお互いを無口にするのに十分であった・・・。
もっとスキー練習するんだった。
うまいご飯と酒をたらふく飲みサザンを聴きながら日が変わるころに就寝。
ともあれ、下降用とデポと順応の目的を果たし僕らの第一ラウンドは無事終了したのである。