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更新 2019年7月24日
オーディオ木工あれこれ

Pioneer MU-41+JVC UA-7045、プレーヤー製作。(2015年7月)
トーンアーム Victor UA-7045+TT-81、プレーヤー製作記。(2015年6月〜7月)
レコード針、針先の拡大写真アップしました。追加しました。(2015年5月〜9月)
Grace F8L'10の曲がった古い針をかけ継ぎ修理しました。(2014年12月)、針の折れた DENON DL103Sに、SAS針を掛け継ぎ修理しました。ベリーグッドです。(2015年5月)
Victor TT-71 自力で修理しました。(2013年12月)
 
第1章 製作 目次
TT81/UA7045MU41/UA7045TT61/G565TT81/MA505TT71/MA505
TT-81+UA-7045 / MU-41+UA-7045 / TT-61+Grace G-565 / TT-81+Micro MA-505 / TT-71+Micro MA-505
トーンアームの形状について
J字型、S字型、ストレート型
ターレス THALES Easy
Grace G565:アームの実
効長とオーバーハングの関係
Grace G565:ラテラルアンバ
ランスとインサイドフォース対策
Micro MA505:インサイド
フォース キャンセラーと針圧
Micro MA505
トラッキングエラー角の測定
JVC UA-7045、TT-81
レコードプレーヤー製作
Victor TT-81、MA505
レコードプレーヤー製作
TT-71、TT-61、G565
レコードプレーヤー製作
Pioneer MU-41、UA-7045
レコードプレーヤー製作
レコード針の拡大写真
針は側面が磨耗して尖る?
カートリッジにまつわる
(内緒の話)あれこれ
カートリッジシェル
についてのあれこれ
クオーツロック・フォノモーター
ビクター TT-71 自力修理
シェルとカートリッジの取り
つけ位置目印寸法について
レコード盤の洗浄とその効果
レコード盤洗浄用保護ディスク
スピーカーボックス、ウッド
ホーン、レコードラック製作

第2章 調整 目次
針圧調整:針圧ゼロ調整は難しいです。アームを水平にしただけでは針圧はゼロにはなりません。
針がレコード盤に接していなければ針圧は掛かっていません。針がレコードに乗っている状態で針圧を計測することは困難です。
レコード盤と同じ高さになるように針圧計をセットして、針圧計の目盛りで針圧を確認・調整するのが簡単で正確です。
インサイドフォースについて
ラテラル不平衡を利用する
トーンアームの針圧(ゼロ)調整
針圧ゼロとアームの水平は関係ない
オーバーハングについて
トラッキングエラー角ゼロ位置
トラッキングエラー角の計測
最大エラー角の値と位置調整
 
ちょっとした道具があれば、作業が捗り精度が上がります。
アームの針圧目盛りは思ったより正確だが、ゼロ調整を厳密にしないと無視できない誤差が出る。針圧計があれば安心。
自作 木製大丸コンパス ルーペ 小形デジタル計量秤
大きなコンパス
 SPボックスのスピーカーの穴あけ、プレーヤー台のトーンアームの位置決め、ターンテーブルモーターの穴あけ、それら(の実寸図の作成)には大きなコンパスが必要です。
ルーペ
 針がダメなら、後がいくら良くてもどうにもならない。針が一番大切。
 汎用の秤は磁力の影響を受けるので、MCカートリッジの針圧計測には注意が必要。針乗せ高さ調整用金物をアルミ板で製作。一挙両得

はじめに
はじめに
 この頁は工作のページです。良い結果を得るために大切なことは、よく調べることと工夫することです。新製品も時間が経てば古物になる。高価な物ほど高品質だろうという考え方は、ものの本質を見誤る。
レコードは妄想です
 テレビに写っている歌手は映像であって「本物」ではない。だとしたら、テレビから流れてくる歌も「本物の歌」ではないことになる。そのように考えると、レコードの音も「本物の音」ではないことになる。レコードはプレス機によって何枚も同じものが作られる。機械によって刻まれたレコードの溝の凸凹は、機械装置によって音に変換される。レコードは機械的な記録物です。レコードに「本物の音であること」や「音楽性」を求めるのは、お門違いだと思う。
話は変わりますが
 「かに(風味)かまぼこ」を作った人は なかなかの人だ。蟹は入っていないが、かに風味の「かまぼこ」だ。ホ〜ッとか思って味わえばいいのである。本物の蟹ではないが、「かにかまぼこ」という「本物」の商品だ。「かにかま」を「偽物」だとか「食べるべきではない物」のように言う人がいるが、本物の意味を知らない可哀相な人たちだと思う。蒲鉾に掛けると「本物の蟹の味になるというソース」をかけても、中身はかまぼこですから、美味しい味になっても本物の蟹の味にはなりません。
また蟹の話で恐縮ですが
「カニ缶」の中身は本物の蟹の身だが、かに料理店で「カニ缶」を出したら拒否されるだろう。「カニ缶」は、みんなが思っている「本物のかに」ではないからだ。「カニ缶」の中身は「偽物」の蟹ではないが、本物の蟹でもないのだ。「かにかまぼこ」も「カニ缶」も、みんなは「本物」とは思っていないのだ。
 加工されれば本物の一部が失われ、本物にはなかった物が付加される。そして「本物」から離れていく。しかし、別の「本物」になればいいのである。
 溝の凸凹を「心地よい音」に変換してくれる針があったとしても、「本物の音」にしてくれる針はありません。「変な音」でなければ、ホ〜ッとか思って妄想の世界に浸ればいいのではないでしょうか。
またまた蟹(カニ)の話しで恐縮です
 タラバガニは蟹の仲間ではなくヤドカリの仲間だそうです。○○カニという名前でもヤドカリの仲間が他にもいるようです。ズワイガニ(松葉ガニ)は蟹の仲間だそうです。蟹もヤドカリも(本当の)足の数は10本ですが、ヤドカリの4本の足は殻の中に隠れていて外からは、はさみを入れて6本しか見えていないのだそうです。タラバガニも10本中2本の足は甲羅の中に隠されているのだそうです。今まで食べたカニというカニはみんな(ヤドカリの味と同じ)カニの味でした。烏賊と蛸程の違いを感じた事はありません。蟹とヤドカリとカニカマボコは同じような味です。差別するのは無粋というものです。カニカマボコをカニカマボコだと言って、美味しいですよと言って販売しても何の問題もありません。注:タラバガニのかにみそは足が早く傷み易いので(美味しくなくなるので)市場には出回らないそうです。タラバガニのかにみそは湯がく前に処分するそうです。
 (スイング式)ピュアストレートアームにもサイドフォースが生じるのに、サイドフォースは無いと言って売ってはいけません。それは虚偽表示です。
ワンポイントサポートアームについて(いきなりで恐縮です)
 ○○社のワンポイントサポートアームのアームの軸受けがこけているのは、サイドフォースの所為ではありません。アームの軸受けがこけているのはアームパイプを曲げただけでアーム左右のバランスを取っていないからです。アームは曲芸師ではありません。アームパイプを曲げた責任を取らず、曲げられたアームに責任を転嫁するのは大間違いです。有限長のスイング式アームにはアームの形状(ストレート、L字、S字形等)に関わらず必ずサイドフォースが生じます。オフセット角の有無に関わらず全てのスイング式アームには「必らず」サイドフォースが生じます。信じたくなくても目に見えなくても、あるべきものは存在するのです。自分が壊したアームの悪口を言うのはやめましょう。

「軸受け」という言葉について
 以下で説明する「垂直軸受け」という言葉は、「垂直軸を受けている軸受け」という意味で使っている。垂直軸の軸受け、垂直軸受け?、水平ベアリング?垂直軸の軸受け」略して「垂直軸受け」である。垂直に配置されている軸を「垂直軸」という。垂直軸は軸芯を中心に回転するとすれば水平方向に回転する。同様に、「水平軸受け」という言葉は、「水平軸を受けている軸受け」という意味で使っている。電車の車輪の軸は、水平に配置されているので「水平軸」と呼ぶ。水平軸を受けているのが間違いなく「水平軸の軸受け」であり、略して「水平軸受け」である。軸芯を中心に回転するとすれば、水平軸は垂直方向に回転する。軸の「回転方向」や軸受けの「ボールベアリングの配置方向」に着目して、これらの言葉が逆に使われる場合もあるようだ。この場合は「軸受け」ではなく「ベアリング」とか「回転軸受け」とかいう言葉が使われることがある。これらは公の定義ではない。しかし、軸が無ければ軸受けは不要。軸という語を主にした分かりやすい表現が望ましいと思う。
 
トーンアームの形状は何故違うのか J字型、S字型、(シェルにオフセット角のついた)ストレート型等
トーンアームのタイプ図、J字型、S字型、ストレート型 <注:以下の説明は、右の針先を下にしたトーンアームタイプ図に拠ってください>
 スイング式トーンアームの(J字型、S字型、ストレート型等々の)基本的な形状の違いは、トーンアーム針先のトラッキングエラー角(音溝の方向と針先方向のズレ)を少なくするためにアームに付けるオフセット角の付け方の違いと、オフセット角を付けることにより生じる不具合(アーム左右のバランスが崩れることや針先(位置)と支点と重心との位置関係が一直線上から外れることに起因する不具合)を小さく或いは修正し易くする方法の違いと、(カートリッジを取り付ける)シェルの汎用性に対する配慮等の違いによるものです。
 どんなトーンアームでもアームは、トラッキングエラー角が小さくなるような位置に設置するのが基本です。アームの最適設置位置(最適オーバーハング値)はアームのオフセット角の有無・大小により変わります。アームの設置位置(オーバーハング値)が変わるとインサイド(またはアウトサイド)フォースの生じ方も変わります。
 スイング式トーンアームには必然的に、トラッキングエラー(角)とインサイド(またはアウトサイド)フォースが生じます。オフセット角を可変にすればトラッキングエラー角を小さくすることは可能ですが、スイング式アームではサイドフォースを無くすことはできません。スイング式アームならピュア・ストレートアームでもサイドフォースは当然生じます。サイドフォースはレコード盤上の針先位置により変化します。ピュア・ストレートアームの場合、アームの取り付け位置が(一般に言われている)アームの最適設置位置(最適オーバーハング位置)では、針先がレコード盤の中央から内周寄りの位置でインサイドフォースは一旦ゼロになり、そこでサイドフォースの向きは反転してアウトサイドフォースが生じるようになる。ターレス社の可変オフセット角のスイングアームは、トラッキングエラーが殆どゼロということのようだが、サイドフォースは当然普通に生じる。インサイド(アウトサイド)フォースとアームの形状とはまったく関係ありません。アームの実効長とアームの設置位置(オーバーハング値)が同じだと、(オフセット角の有無やその大小に関係なく)同じインサイド(またはアウトサイド)フォースが生じる。
 スイング式ではないリニアトラッキングアームの場合は、針先とアーム支点を結ぶ線と針先位置の音溝の(接線)方向とが常に同じ方向を向いている(針先は針先にかかる摩擦の方向とそれと180度正反対方向のアーム支点から引っ張られている)ので、サイドフォースは生じません。
インサイドフォース説明図  カッティングマシーンの針先は、その針先によってカッティングされた溝と正反対の方向を向いて進んで行きながら、(その力とは別の力で)少しずつ円盤の中心へ向かって移動していきます。しかしながらレコードの再生に使用される有限長のスイング式アームは、アームの支点(回転中心)の位置が固定されているため、針先はレコード盤の限られた位置でしか音溝(の接線方向と)と同じ(角度の無い)方向を向くことができないので、音溝に対して必然的にトラッキングエラーが生じることになります。
 スイング式アームに生じるトラッキングエラー(角)を出来るだけ少なくしようとして考えられたのが、オフセット角とオーバーハングです。アームにオフセット角を付けることによって生じるアーム左右のアンバランス(ラテラルアンバランス)については(アームが浮いている状態では)調整できる(調整しなければならない)ようになっているアームがあるが、針先(位置)と支点と一直線上に並ばなくなったアーム前部重心位置を修正できるようになっているオフセット角付きアームは無いと思う。
 アーム左右のアンバランスを修正しやすい構造・形状とすることやアンバランスの影響を受け難い軸受け構造とすること、共振を避け軽量且つ強度のある構造体にすること、音楽再生装置として取り扱いやすく汎用性のある構造・形状にすること、インサイドフォースに対応すること、他社の特許を避けること等々色々と工夫された結果、外形の少々異なるアームが沢山製作されるようになりました。
 トーンアームにとって「針」は針そのものとしても重要ですが、針先(位置)とアーム支点と重心との位置関係も非常に重要です。レコード盤の上の針先の軽快且つ安定した動作が、トーンアーム調整の要です。針先位置を無視したアームの調整方法では、適正なバランス調整が出来ていない(かもしれない)と思った方がいいように思う。
 SME3009等のように、アームの水平軸の軸受け構造がナイフエッジ形式だったり、或いはAUDIO CRAFT AC-3000等のようなワンポイントサポート形式だったりするアームの場合は、ラテラル不平衡があれば(重心が支点の真下に無いと)アームに不要な回転力が生じるだけでなく、アームの支点がズレたり、アームパイプが左右に傾いたりする不都合が生じるので、このようなタイプのアームの場合は、ラテラルバランスを正確にとる必要がある。しかしそうでない(使い易いように考えられている)アームの場合は、必ずしもラテラルバランスを「必死になって正確に」とることが、メーカーの推奨取り扱い方法ではない場合がある。(殆どのアームの(水平軸ではない)垂直軸の軸受けは大きなボールベアリングです)。
 ラテラルバランスの確認は、アーム前後のバランスをとってから、アームの垂直軸を傾けてアームの重心が(相対的に)下方に移動(アームが回転)するのかしないのかを確認する方法が一般的です。(垂直軸を傾けて調整できない構造のアームもあります)。垂直軸を傾けると支点が移動するタイプのアームの場合は正確にラテラルバランスはとれない。(この方法で)ラテラルバランスを確認するには、前後のバランスも当然とれていなければいけない。(アーム左右のバランスを変えるとアーム前後のバランスも変わるアームが多いので注意が必要です)。しかしラテラルバランスを(アームが浮いた状態では)完璧にはとらない方がいい場合がある。機器の調整はメーカー・機種によって異なる。先ずメーカーの取扱説明書をしっかり読むことが必要です。疑うのはその後です。
トーンアーム軸受け構造  アーム支点の前後左右のバランスが崩れていても、垂直軸が真っ直ぐ(垂直軸の支点と水平軸の支点が同一垂直線上にあり重心が動かない)なら、アームは(重力では水平方向には)動かない。(垂直方向には機械的制限で動けない)。(ラテラルバランスが崩れると支点の位置が変わるアームがある)。アームに外力を与えていないのに(水平方向に)動くのは、(バランスが崩れていて且つ)垂直軸が傾いている(傾いた)からです。相対的に重心が移動する(した)から動くのです。垂直軸が(傾いた)傾いている(重力の)方へ(バランスの崩れている)重心が移動するので、その方向にアームは回転する。(重心が可能な限り低くなったところか又は機械的制限で停止する)。垂直軸の傾きの方向を逆にすれば、アームは反対方向に回転する。トーンアーム軸受け構造と精度 アームの前後左右のバランスが(360度)完全にとれていれば、垂直軸を傾むけてもアームは動かない。(軸受けが鈍感な場合は少しぐらいのアンバランスでは動かないかもしれない)。(針が浮いている状態で)アームのラテラルバランスがとれていても、演奏中のアームはバランスを崩して針圧を掛けているので、プレーヤー台が傾いているとアームの重心は低い方へ移動(回転)しようとする。基本的に大切なことは、プレーヤー台が水平に設置されていることです。
 軸受けの構造・寸法・精度等にもよるが、(ラテラルバランスをとるために)アームを傾けた場合の支点(回転中心)は、水平に置いた時のアームの支点とずれているかもしれない。アームは360度の半分さえ回転させられない構造だ。プレーヤー台を90度傾けても100%正確にバランスがとれるとは限らない。シェル・カートリッジ部分の重さや重心位置が変わればアームの重心は変わる。アームが浮いた状態でラテラルバランスを完璧にとっても、針圧をかけてレコードに針を下ろせば、(ピュア・ストレート型アーム以外)殆どのアームは針先位置と支点と重心が一直線上にないので、アーム前後のバランスだけでなくアーム左右のバランスも崩れる。問題の軽重とアンバランスの許容範囲を考えて程ほどにしないと、カートリッジの交換も儘ならない。
トーンアーム J字型 S字型、左右のバランスの取り方  J字型アームの基本形は、支点の左側に重心がある(支点の左側が重い)ので、垂直軸を傾けると(それまで停止していた)アームは、重力により重心が下方へ移動する向きに回転する。(不都合な回転力が生じないように)アーム左右のバランスをとるため、補助錘(針圧錘を兼ねることもある)はアーム(支点)の右側(後部)に取り付けられている。S字型アームの基本形は、J字型とは反対に(支点の右側に重心があるので)、支点の左側(後部主錘の左側)に補助錘を取り付けて左右のバランスをとるようになっている。
 J字型基本形アームの後部錘の移動方向は、アーム前部と後部の重心を結ぶ線の方向と大きく異なっているので、(針圧を調整するため)後部錘を前後に動かすと、左右のバランスも(大きく)崩れる。またJ字型基本形アームの後部錘の移動方向は、針先の方向とは大きく異なる方向を向いている。この点S字型アームは改良されているが、左右のバランス調整は必要だ。
 J字型S字型両タイプとも後部錘を左右水平方向に少し傾けて(概ね)左右のバランスをとっている重心修正型アームがある。重心修正J字型アームは、アーム全体を見ればS字型アームと変わらない形になるのは当然のことである。
 重心が支点の右側にある(重心を過度に移動させていなければ一般的にはS字型)アームは垂直軸を後ろに倒せば、アーム支点の右側にある重心は重力によって下方に向うため、 ストレート型トーンアームのバランスのとり方、調整方法 左回転(インサイドフォースと反対方向に回転)する。重心が支点の左側にあるアームの場合は、垂直軸を前に倒せばアームは左回転する。ラテラル不平衡の重心位置を塩梅すれば、適度な反インサイドフォースが得られると思われる。註:アームの左右は針先を下にしたトーンアームタイプ図による
 ラテラルバランスをとって針圧調整をしてから、(糸でアームを引っ張り重力によって)アームに適度な左回転力を与えて、インサイドフォース対策(アンチスケーティング)調整をするようになっているトーンアームが高級だと思われているようだが、(軸受けの構造やバランス調整設計により)ラテラルバランスを取ることなく、反インサイドフォースデバイスを調整するようになっている(シンプルな)アームもある。また明確な形の反インサイドフォース用のデバイス(装置・部品)は無くても、インサイドフォース対策がとられている(非常にシンプルな)アームもある。
 インサイドフォースキャンセラーの力を目で見ることが出来る。針を浮かせた状態で(針カーバーをして)インサイドフォースキャンセラーをセットして、アームをターンテーブルの上に持って行き、アームを軽く上に放り上げた後、アームが左回転する様子(スピード)を観察してみてください。針圧を掛けないとインサイドフォースキャンセラーがセットできないダイナミックバランス型の場合は、針圧を掛けインサイドフォースキャンセラーをセットした後、アーム後部に錘を追加すれば(インサイドフォースキャンセラーをセットしたまま)アームは浮かせられます。
トーンアーム軸受け構造と精度2  (必死になって)アームのラテラルバランスをとっても、針圧を掛ける(アーム前後のバランスを崩す)と、左右のバランスも崩れる物が多いようだ。インサイドフォースキャンセラーはラテラルバランスに影響を与えないような構造・位置になっているだろうか。アームのラテラルバランスが(針が浮いている状態で)とれていても、針圧を掛けると、針圧錘の移動によって、(アームの支点を通っていた)アーム前後の重心を結ぶ重心線が支点を外れるような場合は、アームの左右のバランスも崩れることになる。また針先が、アームの支点を通りアーム前後の重心を結ぶ線上に無いと、針をレコード盤に乗せた時点で、(針先が新たな支点となり)アーム左右のバランスは崩れる。問題の有無大小は別にして、すっきりしたいのなら、アームは、「シェルにオフセット角をつけたストレートアーム」ということになるのか。
ピュア・ストレートアームのサイドフォース  オフセット角の無い左右対称のピュア・ストレートアームが「音が良いと」一部マニアに支持されているようだが、ピュア・ストレートアームだから音が良いという理論的、実証的、客観的説明は無い。(そのように思う原因は別のところにあるのではないかと思う)。ラテラルアンバランスの影響を強く受ける(と音が悪くなる)(軸受け)構造のアームにオフセット角を付けた場合は、演奏中状態のアームの左右のバランスを完璧に取らないと、可動部分が傾いたり、軸受けの部等の部品同士が不要に接触したり、支点がずれたりして色々(致命的な)不具合が生じることになる。このような(軸受け)構造のアームの場合はピュア・ストレート型アームとすることで、アーム左右のアンバランスに起因する問題からは逃げることができる。ピュア・ストレート型アームのアームパイプを単にJ字に曲げただけのアームは左右のバランスが大きく崩れているので、(軸受け構造にもよるが左右のバランスを取らないと)(軸受けがこけているので)まともに動作するアームにはならない。まともに動作しないオフセット角付きアームとピュア・ストレートアームを比べても意味が無い。
ピュアストレートアームのサイドフォース対策  しかし、ピュア・ストレートアームにはオフセット角付きアームに比べて優れている点がある。それは、針先(位置)とアームの支点とアーム前後の重心とが一直線上にあることと、アームの最適設置位置(最適オーバーハング値)がオフセット角付きアームとは違うので、外周側ではインサイドフォースが生じ内周側に寄ると反転してアウトサイドフォースが生じるようになるが、サイドフォースがオフセット角付きアームより比較的小さくなるということである。従って、ピュア・ストレートアームには従来型(オフセット角付きアーム用)のインサイドフォースキャンセラーは付けられない。オフセット角付きアームはそれらのことを良く考えた上で、(インサイドフォースキャンセラーを軽視せず)カートリッジ(の針先形状)ごとに慎重にアンティスケーティング量の調整を行えば、さらに良いアーム状態に調整できると思う。ピュア・ストレートアームの場合でも、針圧を掛けるとラテラルバランスが崩れるので、これを利用してサイドフォースを減らすことが出来るように思う。(右図参照)。スイングアームは、アーム実効長を長くする方がトラッキングエラー角は小さくなり、サイドフォースの針圧(による摩擦力)に対する割合も小さくなるので、私にはショートタイプのピュア・ストレートアームは合点がいかない。トラッキングエラー角が10度もあってまともな音が出るのだろうか。
可変オフセット角ストレート型トーンアーム ターレス THALES Easy  ピュア・ストレートアームのシェルを可変オフセット角シェルにしたようなスイングアームがある。ターレスというスイスのメーカーのアームだ。(小生が思うに)この可変オフセット角シェルのストレートアーム(ターレス TAHLES Easy)の取り付け位置はピュア・ストレートアームと同じ「オーバーハングがマイナス」の位置だが、最適設置位置はピンポイントだろう。トラッキングエラー角がほとんど無いということだが、インサイドフォースとアウトサイドフォースが生じる。オフセット角を可変にする構造が明快だ。ラテラルバランスや共振等を云々する人がいるのだろうか。写真(インターネット)でみただけだが美しい形状のアームだ。(画は想像によって描いています)。しかし、1〜2度の(水平、垂直)トラッキングエラー角がどれほどの問題になるのだろうかとも思っている。
 ワンポイントサポートという軸受け構造のアームがあるが、支点の高さと重心の高さが近いと動作が不安定(過敏感)になるので、ラテラルバランスをキッチリ取るだけでなく、(やじろべえのように)重心を支点より大分下に下げたり、高粘度オイルで動作を抑えたりと何らかの安定策が必要になる。実際にはワンポイントサポートと言いながらワンポイントサポートではないアームもあるように思う。また、振動を受ける軸受けの「軸」と「その軸の軸受け」とが離れる構造のものは安定性に欠ける(問題がある)ように思うのだがどうだろうか。SAEC(サエク)に(水平軸の軸受けの)ナイフエッジ構造を改良したダブルナイフエッジという名の軸受け構造のアームがあった。いまだ人気のあるアームのようだが、軸受けの工作が微妙微細な職人技によるものらしく、取り扱いが難しいようで購入意欲はわかない。
インサイドフォースとトラッキングエラーは関係ない  オフセット角を付けたアームは、トラッキングエラー角がゼロの位置でもインサイドフォースが生じるからなのか、インサイドフォースはアームのオフセット角によって生じると思っている人がいるようだが、これは間違いだ。ストレートアームでもアームはトラッキングエラー角が少なくなるような位置に設置するのが基本だ。アームパイプが曲がっていても曲がっていなくてもインサイドフォースは生じる。カートリッジをシェルに真っ直ぐ取り付けても斜めに取り付けても逆さまに取り付けてもインサイドフォースは生じる。アームの実効長とアームの取り付け位置(オーバーハング値)が同じなら、同じインサイド(アウトサイド)フォースが生じる。(オフセット角がゼロでもオフセット角が固定の)スイングアームではインサイド(またはアウトサイド)フォースは無くならない。インサイドフォースは対応を誤ると問題が生じる可能性が高いが、ラテラルアンバランスが問題の原因になる場合もあるので、(ラテラルバランスにも重点を置いて)シェル自身にオフセット角をつけたストレートアームが一番問題が少ないのだろうと思うが問題が無くなる訳ではない。誤差を許容して問題の根源を抑えることが必要だ。
 リニアトラッキングアームというものがある。理論的にはトラッキングエラーもサイドフォースも生じない優れものである。しかし、如何にして針先(と支点とを結ぶ線)の方向がレコード溝の接線方向に合致しているかを検知し、針の方向を(誤差なく)機敏に修正(コントロール)していかなければならない特別な装置が必要になる。このような装置はカッティングマシーンには必要なかったものである。カッティングマシーンの針はカッティングされる円盤が回転していなくても(針先の向きを変えておけば)、針は円盤の中心に向かって進んでいくことができる。カッティングマシーンの針は自分で決めたスピードで動く。リニアトラッキングアームはトラッキングエラーが無いということだけでなく、サイドフォースがないということも大きな利点である。トラッキングエラーをゼロにするには針先方向の検知方法や検知精度が重要だ。機械的検知方法は問題ではないだろうか。
 レコード盤が直径30cm(12吋)だとトーンアームの長さは針先が内周側に進むに最低必要な力(12÷2×1.5=9)9吋、(放送局用)直径40cm(16吋)レコード用のトーンアームは(16÷2×1.5=12)12吋となっているようだが、30cmレコード盤用のトーンアームは9吋(約230mm)ではなく、もう少し長い10吋(約250mm)〜11吋(約280mm)ぐらいの方が良い(アームに付けるオフセット角の加工が緩やかでありトラッキングアラーが少ない)ように思うが、9吋ぐらいの短いピュア・ストレートアームの方が高剛性・低共振にでき、又針先と支点と重心が一直線上に並ぶので良いと言う人もいるようだ。ブラックボックス状態の軸受け構造のアームのバランスが崩れ、軸受けがグラグラ、ガリガリするようでは話にならない。シェルにオフセット角を付けたストレート型アームのシェルに小さなバランス錘を付けて、アーム前部の左右のバランスを完璧にとれば一番良いのではないかと思ったりもしている。
 (オフセット角付きアームの最適設置位置(オーバーハング値)とは違う)ピュア・ストレートアームの最適設置位置では、アーム(針先)にはインサイドフォースもアウトサイドフォースも生じる。アウトサイドフォースが生じても針先は、これに抗ってレコード内周側へ進まなければならない。このアウトサイドフォースは針先が摩擦で引っ張られる力の20%にもなる大きな力だ。しかし、アーム(の支点と針先)が、いわゆるアウトサイドフォースが生じない位置にある場合でも、(いわゆるインサイドフォースがなくても)針先は内周側に進まなければならない。針先が内側へ移動するために(いわゆるインサイドフォースがない場合でも)最低必要な力がどの程度なのか考えてみた。
 レコードの溝は直線では無く渦巻き曲線なので、レコード盤が回っていると、針は溝の外側壁の抵抗によって僅かに内側に舵を取り、渦巻きの中心方向へ少しずつ向かう。(回転が逆なら針は外周方向へ向かう)。この針が渦巻き溝に沿って内周側へ向かう力は「いわゆるインサイドフォース」と呼ばれている(針先接地点の音溝の接線方向(針先が摩擦により引っ張られる力の方向)と、これに対抗して針先がアーム支点(回転中心)から引っ張られる力の方向とが一直線上にないことによって生じる)力ではない。
 33・1/3rpm、片面24分のレコードを例に取ると、レコードは24分の間に、(33.333rpm×24min=)800回転する。一方針先は最外周から最内周まで最大(146.5-57.6=)約89mm移動する。最外周の円周の長さは約(146.5×2×3.14=)920mm/r、最内周の円周の長さは約(57.6×2×3.14)362mm/rである。従ってレコードが一周する間に針先が内周側に移動する距離は平均(89÷800=0.111)約0.11mm/rとなり、針先が摩擦力により引っ張られた最内周の長さ(362mm/r)に対する比率は、(0.11÷362×100=)約0.03%である。この比率は、(軸受けに摩擦抵抗というものが無ければ)針が直線(接線)方向に進もうと摩擦により引っ張られる力と、針を内周側に進めるに最低必要な力との比率だと言えるのではないかと思う。いわゆるインサイドフォースと呼ばれている力と比較して、この針先が渦巻き曲線の円の中心に向かって行くに最低必要な力は(アームに不具合が無ければ)、非常に小さな力だといえる。スイングアームのインサイドフォースは大きな力だ。インサイドフォースキャンセラーは慎重に調整した方がいいと思う。
 インサイドフォース対策が(カートリッジの針先形状ごとに)適正か否かを目で見て簡単に確認する方法はないと思う。針圧に対する比率だけでインサイドフォースキャンセル量を決めては問題があると思う。(特にJICOのSAS針)。メーカー設定値は一応の基準でしかない。じっくり目で見て耳で聴いて観察し、おかしいと感じたら設定値を変えて再度確認すればいいのです。しかし何をするのにも先ず、水準器でプレーヤー台の水平を確認してからにしてください。
 
トーンアームの調整-6 Victor UA-7045のトラッキングエラー角の実測と、レコードプレーヤーの製作。
 このビクターのトーンアーム「UA-7045」は、スタティック・バランス型のS字形アームで、少し変わった軸受け構造を持つアームである。またアンチスケーティング・デバイスの構造が、錘や梃子を用いたものではないので、何か特別な注意を要するかもしれない。JVC UA-7045 平面図、側面図S字形であるがアーム後部の重心の位置が調整され、重心修正S字形アームになっている。アーム後部錘の重心とアームの支点を結ぶ線が、針先の方向ではなく約2.1度アーム前部の重心に近い方向を向いているのと、アーム可動パイプの支点付近が重くなっているのとで、概ねラテラルバランスがとれるようになっており、ラテラルバランサーは付いていない。(JELCOのSA-250、実効長229mmS字型のこの角度は公表値3.5度)。それで問題のなさそうな軸受け構造だが、軸受け周辺を仔細に見ていると特筆すべき点が多々あることに気付く。ひとつは、JVC UA-7045 水平軸の方向アームの水平軸芯線とカートリッジ中心線が直角であることである。これによりアームの垂直方向の回転による針先の左右のアンバランスがなくなる。ほとんどのアームの水平軸芯線は、後部重心と支点を結んだ線と直角になっていて、アームの垂直方向の回転により(オフセット角のある)カートリッジは、斜めを向いたまま垂直方向に回転することになり、針先の左右のバランスが崩れることになる。
 ゼロバランス時のラテラルバランスばかり気にせず、針圧の掛かった針が回転しているレコード盤に着地して、支点が二つになったアームのアンバランス状態について考えることも重要だと思う。殆どのアームの針先は支点-重心線上には無い。
JVC UA-7045 シェル部写真 アーム実効長は245mm(変更予定)。規定の針先位置は、カートリッジコネクター端より48mm(変更予定)。取説にシェル部分の写真が載っているが、写真の48mmが、針先からどこまでの寸法なのかよく分からない。(この寸法はアームの仕様書に書き加えるべきだと思う)。
 軸受けは「ニュー・ジンバル・サポート」と名付けられているが、外見は(ジンバルではないので)ジンバルのようには見えない。一番内側の固定垂直軸の外側に、水平方向に回転するスリーブ形垂直軸があり、その外側に水平に配置されている重そうなリングにアームパイプが接続されている。JVC UA-7045 ニュー・ジンバル・サポート、軸受け構造図この一番外側の重量リングによって、アームの支点付近を重くするという重量配分になっている。いわゆる軽量型アームではないということもこのアームの特徴である。また重心は支点より少し下になっている。軸受けには頑丈なボールベアリングが使用されているようだ。グレースG565のアームパイプは、垂直に配置されたジンバル軸受けの中心に配置されていて、JVC UA-7045 アンチスケーティング調整ダイヤル部写真可動部分はUA-7045とは対照的に軽量なものになっている。設計思想が違うようだが、他社の特許を避けるための構造かとも思われる。この軸受けの真上に配置されている、黒色電解発色の円形アルミケースの中に、アンチスケーティング・デバイスが収納されている(ようだ)。
 いわゆるインサイドフォース・キャンセラーに小錘と糸や梃子を用いたアームが多いように思うが、この小錘や梃子がアームのラテラルバランスを崩す原因になっているように思う。アンチスケーティング・デバイスがアーム支点の真上に設置されているということは、このデバイスがアームのラテラルバランス等に影響を及ぼさないように配慮されているということである。このこともこのアームの特徴である。
しかし、アンチスケーティング・デバイスの構造が分からないのは(私にとっては)大きな問題だ。 外見から消去法で考えると、バネを用いた構造の物ではないかと思われる。テンプレートのアーム取り付け説明図から、このアンチスケーティング・デバイスは水平回転するアームとの基本位置関係(角度)が重要なのだと読み取れる。
 アームの設置位置は、アームレストの位置からモーター・スピンドルまでの回転角度が一定(67.5度)になる位置にしなければならないようだ。(許容誤差範囲は分からない)。アームとモーター・スピンドルとの位置関係が、テンプレートのアーム取り付け説明図に、縦横0.5mm単位で、明記されている。「67.5度にせよ」とは書かれてはいない。説明不足だ。マイクロのMA-505の取説には、62度〜75度と明記されている。アンチスケーティングを左に回すと(バネが強くなって?)、アンチスケーティングが強く掛かるようになるので、設置角度は67.5度より広くなるより、狭くなる(アームを少し右方向に回して設置する)方が良いように思う。JVC UA-7045 マウント用説明図
 アームの支点とモーター・スピンドルとの距離については、0.5mm程度の取り付け精度は必要と思うが、角度についてはそれほどの精度は無くてもいいと思う。針圧とアンチスケーティングの目盛りを合わせばOKというほど反インサイドフォースの調整は簡単ではない。カートリッジの針毎に調整が必要だ。少々角度誤差があっても問題は無い。アンチスケーティングの量は針圧だけでなく針先の形状や寸法にも大きく左右される。取説には「そうすべき」理由が書かれていないことが多く、問題の重軽がわからないことが多い。
JVC UA-7045 後部錘が外せない  レコードをかけながらアンチスケーティングの量を変えられるが、適切な調整は簡単ではない。また、このデバイスの中身は(私にとっては)ブラックボックスだ。このアンチスケーティングの(よく分からない設計基準や)構造が、このアームが単体であまり売れなかった(?)理由の一つなのかもしれない。インサイドフォース・キャンセラーをいい加減に扱うわけにはいかない。負荷が軽い場合、アンチスケーティングの調整は不安定にならないのだろうか。インサイドフォース・キャンセラーが適切に働いているか否かの確認方法を考えなくてはならない。
JVC UA-7045 アーム概略位置決定 ヘリコイド式という高さ調整機構が付いているが、上下させた軸を固定する留めネジがないのは不安だ。画竜点睛を欠くと感じる。また、アーム後部の錘が外せないのは何故かと思う。使い難い。
 他のアームとカートリッジを共用するため、針先位置を規定値ではなく、ヘッドシェルコネクター端より52mmにして使用する予定。オーバーハングを幾らにするか、アームの設置位置を変えながら、トラッキングエラー角を実測する必要がある。アームベース金物のフランジの幅が狭いのと、ナット側に金属製の大きな座金がないのとで、アームを動かしながらでは、調節出来る範囲が少ないのがちょっと問題だ。仮のアームボードで、アームボード自体を動かしながら調節しなければならない。
JVC UA-7045 トラッキングエラー角測定 プレーヤー台は、中古のTT-71を購入した時に付いてきた、3本アーム用の(他人の作った)ホームメイド品を、切ったり張ったり加工したものを使う。既に部分的に加工してあるので、テスト運転ぐらいなら直ぐにでもできるような状態にはなっているが、この際まともなプレーヤー台にしようと思っているので、あれこれ加工や化粧貼りや塗装もする予定だ。きちんとしたアームボードや防振脚も必要になる。(更新2015年7月18日)
取り扱い説明書4頁にはOff set angle:21゚40’と記されており、5頁の図面にはOff set angle:20゚40’と記されている。
JVC UA-7045 オフセットアングル? UA-7045はをオークションで購入したものだ。未使用品ということだった。ヘッドシェルやサブウエイト等はなかったが、JVC UA-7045専用の英文の取り扱い説明書と、マウント用の説明図とテンプレートのコピーが付いていた。取説があれば助かる。
 Instruction Book(取扱説明書)の SPECIFICATIONS(仕様)には「Off set angle : 21゚40’」と記されているが、5頁の MAIN DIMENSIONS(図面)には「Off set angle : 20゚40’」と記されている。アームの設置はトラッキングエラー角を実測して決めているので、どちらが正解でもかまわないのだが、テンプレートのコピーが添付されていたので調べてみた。JVC UA-7045 オフセットアングル?JVC UA-7045 オフセットアングル?
 アームの支点と針先を結んだ線を21.7度傾けた線と20.7度傾けた線を、カートリッジ中心線に重ねてみたところ、21.7度傾けた線がカートリッジ中心線と一致した。仕様表の21゚40’が正しいようだ。■ユニバーサル型トーンアームは実効長可変式アームである。実効長が変わればオフセット角が変わり、適切なオーバーハング値も変わる。アームの位置が固定されている場合でも、トラッキングエラー角を実測して、シェルの針先位置を決める(意識することなくオーバーハングも決まる)方法の方が、オーバーハングをメーカー指定値に調整する方法よりも、正確に適切な針先位置を決めることができる。
実効長約249mm(計算上248.7mm)、有効長約235mm
↓外側ゼロポイント約124mm、基準設置の場合123.5mm
実効長約249mm(計算上248.7mm)、有効長約235mm
↓内側ゼロポイント約58mm、基準設置の場合57.7mm 
トラッキングエラー角、外側ゼロポイント トラッキングエラー角、内側ゼロポイント
 公表されているこのアーム(実効長245mm、有効長230mm)の最大エラー角は、+1度48分(1.8度)と−1度31分(1.52度)、(トラッキングエラー角)ゼロポイントはスピンドルから57.5mmと123.5mmの所である。有効長を234.5mmぐらいにして大雑把に計測すると、ゼロポイントは63mmと124mmぐらいの所になり、最大エラー角は許容範囲(約3度)内だった。
 次に、内側のゼロポイントが58mmぐらいの所になるように、アームの位置を0.5mmほど動かして計測した。内側のゼロポイントを約58mmの所にすると、他のゼロポイントは124mmぐらいの所になった。写真を撮ってアーム有効長を確認するとほぼ235mmであった。この状態で最大エラー角を測定すると、−1.8度と+1.4度(最外周)ぐらいで、最外周のエラー角より内周側に近い最大エラー角の方が大きくなっている。(エラー角の+、−の表示について)。
 トラッキングエラー角−1.8度の位置はスピンドルから 80mm 〜 90mmの所である。しかし内周側の最大エラー角の方が外周側の最大エラー角より大きいのは実際の音響再生上も精神衛生上も良くない。微妙な調節だがもう少しつめてみる。
 最内周にゼロポイントを持ってくる必要はない。最内周(スピンドルから57.6mm)でのエラー角を0.5度以内、−(内周)側最大エラー角を1.5度以下にすることを目標に、内側のゼロポイントをスピンドルから60mmぐらいの所で細かく調整してみることにした。
 内側ゼロポイントを約61.5mmの所に設定すると、他のゼロポイントは約124mmの所になった。最大エラー角は−約1.43度と+約1.56度(最外周)であった。(有効長約234.6mm)。
 以上が、有効長を234.5mm〜235.0mmの間で測定した結果である。測定誤差は大きいと思う(0.1mm単位で表示する程の測定精度はない)が、ゼロポイント位置や最大エラー角が一定範囲内に入っていることを、二通りの方法で計測し確認したので、アーム有効長は234.5mm〜235.0mm(オーバーハング 14.2mm〜13.7mm)の間で決めて良いとの結論だ。(許容誤差範囲 0.5mm)
 目視対象物の遠近差による測定誤差や、被写体の遠近差による撮影写真の平面表示寸法差による誤謬誤差が大きい。なるべく測定物や物差を、同一平面上になるよう配置して、再度測定写真を撮る予定にしている。
JVC UA-7045 測定の途中だが、モーターをTT-81に変えて、タイム・アウトを聴いた。JVC UA-7045 ニュー・ジンバル・サポート、軸受け構造図カートリッジは、SHUER M97xE+JICOSAS針(針圧1.2g)。1曲目で針飛びを起こした。永い間使われていなかったものだから、慣らし運転が必要なのかもしれない。特に、ニュージンバルサポートの内側のスリーブ軸受けは、接触点が多そうで摩擦の影響を受け易いのではないだろうか。あるいは軽針圧カートリッジにJICOのSAS針(針幅が広い)をつけていたので、アンチスケーティング量が不適切だったのかも知れない。
 プレーヤー台に防振脚をつけていない。プレーヤー台の水平レベルが少し狂っている。JVC UA-7045 試聴アームの設置角度が少し広い。取説をきちんと読んでいない。試聴を急ぎすぎたようだ。
 アンチスケーティングが強過ぎたのが針飛びの主たる原因だとして、アンチスケーティングの目盛りを「0」にして再び聴いた。針飛びはなかった。一安心、良い音だ。トーンアームが新品同様に光っているのも良い。
 針飛びが気になっていたので、翌日、アームの設置角度を少し狭く設置し直し、カートリッジもシュアーより重い目の、グレースのF8L'10(針圧1.5g)と、デンオンの DL103S+ JICOSAS針(針圧1.8g)を使って、別の盤のタイム・アウトと五輪真弓を聴いた。アンチスケーティング目盛りは「0」に設定。問題は無かった。
 後で思ったのだが、針圧調整方法は(先に)取説を読むべきだった。カウンターウエイトの回転によるウエイトの移動範囲が狭いことに気付くのが遅かった。また、「カウンターウエイトの(止め)ネジは、カウンターウエイトとシャフトがスムースにスライドするように調整済み」と書かれているのに気付いたのは、ネジを回した後だった。針圧目盛り表示ダイアルは心配なぐらい軽く回る。針圧計はあった方が安心。針圧ゼロ調整、針圧調整は、(ダイナミックバランス型の)マイクロ精機のMA-505の方が鋭敏で正確で調節し易い。時間が経ってUA-7045の軸受けが慣れてくれば変わるかも知れないが・・。
↑下塗り一回目 2015年6月29日 ↑防振脚6個、アームボード ↑化粧シナベニヤ貼り付け 
トーンアーム JVC UA-7045 JVC UA-7045+TT-81 レコードプレーヤー
↑ビクター TT-81、UA-7045、デンオン DL103S+JICO SAS針     2015年7月14日撮影
↓トーンアームを正式のアームボードに取り付けて調整・測定。前回とは有効長をほんの少し変えている。
 カートリッジを0.1mmの精度でシェルへ取り付けることは出来ない。モーターの取り付けも0.5mmぐらいは動く。有効長が気持ちの上で234.8mmぐらいになるようにアームボードを仮固定し、ゼロポイント位置を確認した。内側のゼロポイントはスピンドルから約61mm、外側のゼロポイントは125mmぐらいの所。最大エラー角も思っていたより小さかったので、アームの位置をそこで決定しアームボードを固定した。アームの取り付け角度はメーカー指定値より10度くらい狭くなっている。(7月14日)作業はそこまでにしてレコードを聴くことにした。アンチスケーティングは、針圧(1.8g)の半分くらいの値でも歪んだような変な音になるので、0と0.5の間くらいに設定した。DL103S+JICO SAS針は「Very Good」だ。
UA-7045 オーバーハング値を逆に計測する
 オーバーハング計測のための斜線の針先位置は、図の針先位置より0.07mmほど外側になるが誤差範囲内として作図している。
UA-7045 トラッキングエラー角計測グラフ
トラッキングエラー角の+−は公の定義ではありません。
トーンアーム JVC UA-7045 JVC UA-7045+TT-81 レコードプレーヤー
↑ TT-61+G-565、TT-71+MA-505、TT-81+UA-7045(備えあれば足の踏み場が無くなる) 2015年7月15〜16日撮影
↓ TT-81ついに故障か?ストロボが流れる!?           (2015年7月20日)
TT81 回転速度調整ボリュームVR802 7月18日、TT-81の45回転時にストロボが流れることに気付いた。おお神様!と思ったが、ピッチコントローラーを動かせば正常回転になる。33回転ではストロボは止まる。45回転時は本体に振動を与えると正常回転になったりストロボが流れたりする。部品の経年変化でクオーツロック制御の許容誤差範囲を微妙に外れるようになったのだろう。一時はCやTR等の部品交換が必要かと思ったがVRの調整ぐらいで直りそうだ。33回転が正常なので安心しているが、電気回路部品だけでなく機械材料部分の劣化も進んでいるに違いない。束の間の安心だ。
 とりあえずその辺のネジの増し締めと、45回転調整用の「VR802」の調整を行った。TT-81は(スチールカバーさえ外せば)配線基板は外さなくても(VRが配線基板の端の方にあって上を向いているので)ストロボを見ながら回転調整が出来る。回転は正常に戻った。
 回転部分のベアリング等の状態を見てみたいと思っているのだが、構造がよく分からないので今のところモーター周りのネジを外したいという欲望を抑えている。
 
トーンアームの調整-4 Grace G565のラテラルアンバランスとインサイドフォース対策について。
グレース G565は、わざわざラテラルバランスをとる必要はありません。 バランスをとった後どうするのですか。
G565は、「ラテラルバランスやインサイドフォースキャンセラー」というものに煩わされずに使うことができます。
 アームのオフセット角とインサイドフォースは関係ありません。オフセット角の有無・大小によってアームの最適設置位置(トラッキングエラー角が小さくなる最適オーバーハング値)が変わります。アームは、トラッキングエラー角が少なくなる位置に設置するのが基本です。アームの設置位置(オーバーハング値)が変わるとインサイド(またはアウトサイド)フォ−スの生じ方も変わる。アームの外形が違っていてもアームの実効長とアームの設置位置(オーバーハング値)が同じ場合は同じサイドフォースが生じる。最適設置位置に設置されている、ピュア・ストレートアームにはインサイドフォースもアウトサイドフォースも生じる。一般に用いられているインサイドフォースキャンセラーは、ピュア・ストレ−トアームには使えません。
grace G565 ラテラルアンバランス、インサイドフォースキャンセラー説明図インサイドフォース説明図 (重力を利用する)スイング式アームは、垂直方向に回転するアーム軸受けの支点と、水平方向に回転するアーム軸受けの支点と、アーム可動部分の重心が同じ垂直線上にないと重力によってアームに回転力が生じます。アームが浮いた状態でラテラルバランスが取れていても、針圧を掛けるとラテラルバランスが崩れるので、アームが水平な台上に無ければ、アームに不都合な回転力が生じることになります。従ってアームは、水平な台上に設置することが前提になっています。アームに針圧を掛けると、アームの左右のバランスも崩れる構造のアームが多いので注意が必要です。(重力だけでなくバネの力を併用して針圧を掛けるアームもあります)。
 トーンアームの先端についているカートリッジは、レコードの音溝の凸凹を針でなぞって機械振動に変え、その振動を電気に変える発電装置です。(そのカートリッジの針は、垂直にぶら下がっているのではなく、片持ち梁(キャンチレバー)の先(自由端)に付いているのです。ですからカンチレバーの端に針の付いた構造のカートリッジには前後左右の方向があります)。これに比べトーンアームは大した仕事をしているように思えません。しかしトーンアームは、実は色々な問題を抱えているのです。インサイドフォース説明図インサイドフォースとトラッキングエラーは関係ないアームはカートリッジの性能を殺さず、悪い影響を与えないようにしなければなりません。
 スイング式アームの場合、カンチレバーの端の針先がよそ見をせず、レコード溝の真ん中を真っ直ぐ前を向いて進んでいけるように(トラッキングエラー角が少なくなるように)工夫されたアームやシェルが使われています。その工夫がオフセット角やオーバーハングと呼ばれているものです。しかしオフセット角やオーバーハングが有っても無くても(針先がよそ見をしていても)、針先が溝との接触により受ける摩擦力の方向は音溝の(針先と溝の接触している点の接線)方向です。針先は、(オフセット角やオーバーハングに関係なく)針先と溝の接触している点の接線方向に摩擦で引っ張られます。またその一方針先は、(S字やJ字などアームの形状には関係なく)ピュア・ストレートアームのサイドフォース この摩擦力に対抗して、摩擦力と同じ力でアームの支点(回転中心)方向からも引っ張られていることになります。この二つの力の方向が一直線上にない限り、針先には二つの力の合成力として、インサイドフォース(またはアウトサイドフォース)が生じます。(上図1段目左参照)。
 (一般的なオフセット角付き)アームの場合は、トラッキングエラー角が少なくなるよう、適正な位置に設置されていれば、インサイドフォースが生じます。ピュア・ストレートアームの場合は、インサイドフォースもアウトサイドフォースも生じます。アームの回転移動に従って、(インまたはアウト)サイドフォースは変化します。(上図2段目右参照)。インサイドフォースとインサイドフォースキャンセラーの力 この針先に横向きに掛かる力を削減するために(針先に直接逆向きの力を加えることは出来ないので)、回転しているアーム自体に(錘、バネ、磁石等を使って)インサイドフォースと逆方向の力を与えて、インサイドフォースによる不具合を無くす方法を取るのが一般的です。そのため、カンチレバーやそのダンパーは、左右両方向から(本来望ましく無い力で)引っ張られることになります。強過ぎるインサイドフォースキャンセラー(量)は害あって益なしです。インサイドフォースの生じないリニアトラッキングアームという物もあります。(一般に、針先接地点の高さよりアームの回転中心の方が高い位置にあるので、インサイドフォースは水平方向ではなく、やや斜め上向きに針を持ち上げる方向に働きます)。
モーター逆回転、アウトサイドフォース、インサイドフォース説明図  DJ用プレーヤー:レコードを逆回転させた場合は、針先にかかる力の方向が逆になるので、正回転の場合とは180度逆方向のアウトサイドフォースが生じます。(右下図参照)。ですからレコードを逆回転させるDJプレーに使うプレーヤーのアームに、インサイドフォースキャンセラーが付いていても使用してはいけません。インサイドフォースキャンセラーを使用すると(ターンテーブルを逆回転させた時に)アームの外周方向に向かう力(アウトサイドフォース)が強くなり過ぎ不都合が生じることになります。勿論、普通のレコードプレーヤーとして使用する場合は、インサイドフォースキャンセラー(アンチスケーティング)を調節して(観察しながら)使う方が良いと思います。(取扱説明書を熟読してください)。
トーンアーム垂直軸受けの構造と精度■Grace G565の軸受けは精度が高く鋭敏で、わずかな重心の変化でアームは動きます。このアームは、ターンテーブルの真ん中ぐらいで、浮いた状態のアームのアーム前部を、真上に軽く放り上げたその後、(アンチスケーティング機能/インサイドフォースキャンセラー機能によって)アームがスーッと左回転して、ターンテーブルの外周を越えるのが正常な状態です。
 Grace G565のセット。(1)アームベースが適正な位置に取り付けられていて(オーバーハングの確認)(2)プレーヤー台が水平であることを確認する。グレースG565ジンバルサポート(3)アーム支点支持部の固定リングの中心を略ターンテーブル外周の接線方向に向けて、(4)アームの高さを適当にしてアーム本体をベースに固定する。(5)アームの内側(ターンテーブルのある方)に取り付けられている針圧錘の付いたサイドレバーを水平にしてバーの真ん中ぐらいでアーム本体に固定する。サイドレバーをアーム本体から離し過ぎないようにする。これで針圧調整以外総て完了です。 (針にカバーをして)浮いた状態のアームをターンテーブルの真ん中ぐらいに持って行き、アーム前部を真上に軽く放り上げたその後、アームがゆっくりスーッと(反時計廻り)左回転して、ターンテーブル外周を越えることを確認する。この時浮いたアームが左回転するスピードは、マイクロのアームMA505のインサイドフォースキャンセラーを「青色丸針位置」にセットした時よりもゆっくり回っているように感じるので、サイドレバーが真ん中辺りの位置では、インサイドフォースキャンセラー(量)は(一般的に採用されている量よりも)少な目(で好ましい状態)のように思う。(インサイドフォースキャンセル量を増やしたい場合はサイドレバーをアーム本体に近づける)。反インサイドフォースの調整も(一応)これでOKです。ニュートラル・バランス型設計(メーカー呼称)のアームなので調整は簡単です。(アームの垂直軸の支点を通る垂直線から、水平軸の支点を少し後ろにずらしてあるのではないかと思う)。(上図1段目右参照)。精度の高いジンバルサポートなので正確に傾けられる。
 しかしこれで良いのか。聴いて問題がなければそれで良いのか。明確な調整方法や確認方法はないのか。このアームにはそれを考えさせるだけの魅力があります。
■Grace G565は針圧調整方法が直接錘を前後にスライドさせる方式で、なかなか正確に針圧調節ができないので、プレーヤー台を傾けてラテラルバランスを正確に取るのは手間が掛かり難しい。またラテラルバランスを一定方向に崩しておくことに意味があるので、ラテラルバランスをとってもその後適切なアンバランス状態に戻さなくてはいけない。このアームは、プレーヤー台を水平にセットすることと、ラテラルアンバランスの方向を逆にしない(サイドレバーをアーム本体から離し過ぎない)ことが重要です。サイドレバーをアーム本体から離しすぎると、アームにはインサイドフォースに加担する方向に回転する力が生じて、アーム(針)はレコード内周側にスケーティング(針飛び)するでしょう。グレース Grace G565私はサイドレバーを真ん中あたりから左の方に少しずつ移動させていって、スケーティングする様子を見てみました。いきなりサイドレバーを左端に寄せて試してみるのは危険です。
 針圧錘の付いているL字形金具のことを、メーカーでは「サイドレバー」と名付けています。ラテラルバランサーとかインサイドフォースキャンセラーとかいう名前ではありません。このアームは、ラテラルバランスとかインサイドフォースとかいうものに余計な神経を使わなくても使えるようになっている高性能アームです。
 (いきなりですが)「美しくない工作物には問題がある」を実証する機会になるかも知れません。
Grace G565 調整ウエイトに滑り止めゴムを貼る
 錘を直接スライドさせて針圧調整するこのトーンアームは、錘が滑って動いて調整し難い。調整した錘を固定しようとする時も滑って動く。針圧目盛りの正確さ以前の問題だ。
 改善の為、錘の正面に竹輪の輪切りを半分にした様なゴム片を、錘の穴の(下側ではなく)上側に錘の穴とほんの少し下にずらして接着力の強い両面テープで貼る。針圧錘の場合は目盛りが見えなくなるので、穴の横側に貼ればいい。
 ゴム片の重さは誤差範囲内。ゴム片によって錘の前後方向にも回転方向にも適度な摩擦が生じ調整し易くなる。
Grace G565 錘に滑り止めゴムを貼る
Grace G565 針圧錘を回してロックする
 このアームは針圧のゼロ調整に時間が掛かる。針圧調整は主錘である程度バランス調節してから、小型のデジタル電子秤を使って調整する方が速くて正確です。汎用の計量秤を使う場合は、秤の計測面の高さとレコード盤の高さを同じ高さにすることと、カートリッジの磁力の影響を避ける工夫が必要です。
グレースのアームの配線は左右逆です
Grace G565 実効長設定
 このアームの配線は他の多くのメーカーと異なり左右逆です。シェルの接続ピンの左右指定色が逆です。グレース(品川無線)だけ逆だと思う。他メーカーのアームとカートリッジを共用している方、中古品を購入した方、そんなことは忘れていたという方は左右の確認を。シェルの片側のピンを外して確認するのが確実です。■他メーカーのアームとシェル・カートリッジを共用するなら、グレースの方のシェルのピン接続とRCAピンの両方を(左右)逆にする方が扱いやすいと思う。アームとの接続ケーブルのコネクターも他メーカーと形状が異なる(オスメスが逆)。接続ケーブルは大切にしてください!
グレースG565導入説明書
 Grace G565 には針圧目盛りとカートリッジシェルの先端以外調節の目印になるものがない。「ラテラルバランス調整や、インサイドフォース対策は済んでいます」。「メーカーで塩梅調整済み(ニュートラル・バランス型設計)のアームです」ということでしょうか。
 
Victor TT-71 修理完了。要はx811の「2SC945」でした。「TT-71修理:Day By Dayさん」有難うございました。
電解コンデンサー16個、トランジスター1個交換。手持ち部品の中に2SC945がありました。(修理完了2013年12月3日)
ビクター TT71 配線基盤
 配線基板を裏返すのに右上のコネクターや、基盤上辺の配線は外さなくてもよい。左下の茶・青・白の3本のみ外せば配線基板は裏返せる。(この3本線の先についているTRの放熱板(配線基板の下に隠れている)の取り付けネジを外しても裏返せるが、細い単線とその先の部品がぶらぶらするので、ピンの所で線を切る方が作業はやり易いと思う)。
 TT-71はタッチセンサー式なので通電状態であちこち触るのは止めた。基板上の接続ピンは半田が乗らないので要注意。間違いなく原状に戻せるよう、カバーを外した直後にカラー写真を必ず撮っておくこと。全体像だけでなくVRの回転位置やコネクターの向きなど触る可能性のある箇所を意識して撮っておくと後で役に立つ。
 コンデンサーとかトランジスターとか部品の種類や仕様が分かって且つ半田付け(半田取り外し)が出来るのであれば、修理できる可能性はある。TT-71やTT-61の配線基板は部品点数が多くないので、なんとかなりそうな気がする。「プラクティス メイクス パーヘクト」です。
 モーターの故障は運転確認時の異音によって気付いた。回転部分に異物が入ったようなガガガーという異音と共に変則的に回転。電源OFFではスムースに回る。(回路チェックでコンデンサーのチャージが抜けるとその後は数秒間正常に回転する)。そこでモーターの直流電源に原因ありと考え修理することにした。コンパクトで非常に綺麗な配線基板だ。
1.電源周りの電解コンデンサーを6個交換したところ、正常回転に復帰。楽勝!と思い試運転を開始。10分経過OK・・30分経過OK・・1時間経過OKルンルン・・
2.しかし1時間過ぎ、いきなり高速回転に突入。ブレーキは効くが、回転は駄目だ。ネットで「x811の2SC945を互換品C1685に交換して修理完了した」との情報を得た。しかしこれらの石は既に廃番。互換品は在るのか。
3.このままでは中途半端なので、とりあえず残りの電解コンデンサーを交換したが状況は変わらず。(途中酒を飲みながら、手持ちの中古コンデンサーに取り替えたりした罰か)配線基板の銅パターンが剥がれて切れたりもして修理意欲大幅に減退。(気付薬は必要だと飲み、諦めるなとまた飲む)。(老眼の所為にはしたくない)。
結局、電解コンデンサーは全部新品に交換した。
4.落ち着いて考えてみた。以前TTS-8000を修理しようと思ってニノミヤで買ったトランジスターが残っているはずだ。探せば他にも何かあるはずだ。
5.あった。部品箱の片隅に2SC945を10個発見。
6.急ぐ必要は無い。心を鎮めTR一個交換。神様!始めたばかりですがこれで終わりにして下され。
7.テスト開始直後、正常回転を確信。ハヒー!
  TT-71は今のところ機嫌よく回っています。
/メインプレーヤーのモーターをTT-81から、今回修理したTT-71に変更しました。(2013年12月5日)
ビクター TT71 修理完了  このTT-71は8年ほど前にTT-81の予備機としてオークションで購入したもので殆ど使っていなかった。(パイオニヤのブチルゴムシートJP-501が付いていた)。これからが第二の人生だ。■TT-81はTTS-8000が壊れた時に急遽購入した中古品だ。もうすぐ丸10年になる。暫らく休養だ。これで動くモーターは5台になった。これは「危機管理」と「もったいない精神」によるものだ。DP3000用のケースは8割方完成しているが、今のところモーターを買う予定は無い。■モーターを取替え、アームの高さを7mmほど低くした。最初に聴くレコードは、ウエスモンゴメリーの「インクレディブル」。(フフフ・・)(^s^)
 
トーンアームの調整-2 オーバーハングの計測とトラッキングエラー角(ゼロポイント)の計測
オーバーハングの調整について(オーバーハングとは、ターンテーブル軸芯と針先との距離のことではありません)。
オーバーハングについて トラッキングエラー角ゼロポイント計測シート(ゲージ)
オーバーハング オーバーハングの計測 オーバーハング トラッキングエラー角計測シート
 カートリッジを下から覗いてオーバーハングの距離を(正確に)測るのは大変です。針先に照明を当て、アームを10cm以上動かし、オーバーハング計測シートを回転させながら、針先がカートリッジ針先軌跡線の真上を軌跡線に沿って動いていることを確認しなければならない。普通0.5mmぐらいの誤差は出るだろう。
 カートリッジがスピンドルの真上に乗った状態でのスピンドル軸芯から針先までの距離(A)はオーバーハングの距離ではない。しかし、この距離(A)なら正確に測れる。この距離(A)にCOSオフセット角を掛けるとオーバーハングに近い値になる。オフセット角20度でオーバーハング15mmの場合この距離(A)は、(15.0mm ÷ COS20゚ ≒ 16.0mm) 約16.0mmになる。誤差は必ず出る。簡単に測定・調節できる方が実測誤差は少なくなるように思う。
 カートリッジの針先位置を変えるとアームの実効長が変わりオフセット角も変わる。アームの取り付け位置を変更すると、適切なオーバーハング値が変わる。この方法でオーバーハングを調整した後に「本当にこれで良いのか」と思った方は、右の方法でトラッキングエラー角がゼロになる位置を確認してください。
 針をトラッキングエラー角計測シートの上に乗せ、針にダメージを与えないか心配しながら計測シートを動かして測定するのは物心両面から良くありません。どのみちこの測定方法は真上からカートリッジを見下ろして測定するのですから、(針にカバーをして)カートリッジシェルの先端を基準にして測定できるよう、針とカートリッジシェルの先端との距離を測って、カートリッジシェルの先端線を計測シートに記入しておくのが良です。(カートリッジの先端に爪楊枝を貼り付けておくのも一つの方法と思う)。
 基本的な計測方法(参考写真)は、針先線の上に針を置き円接線線とカートリッジが平行になった所がトラッキングエラー角がゼロになる地点(ゼロポイント)です。モーター・スピンドルからレコードの最内周に近い60mm前後の所と120mm前後のところの2箇所がゼロポイントになるように設計されているトーンアームが多いようです。「 Vinylengine 」に豊富なデーターがあります。
 また計測シートの針先線の内側50mm前後のところに、針先線と平行に2mmピッチの線を記入しておくと、カートリッジのアーム端と針先との距離を確認することができます。
 アームのオフセット角とオーバーハングは、レコード再生時における針のトラッキングエラー角を少なく適正な範囲内にする為のものです。オフセット角が変わると最適なオーバーハング値が変わります。ピュアーストレートアームの最適オーバーハング値はマイナス(オーバーハングしません)です。
 
トーンアームの調整-5 Grace G565、アームの実効長を変える場合、オーバーハングは如何に設定すべきか。
グレース G565 スタイラスポイント  オーバーハング(の量)を変更する方法は二つある。簡単な方は、(アームの位置は動かさず)シェルに取り付けたカートリッジの位置を変更する方法です。この場合のカートリッジ(針先)の位置決めは、オーバーハング値を計るよりも、針先とシェルコネクター間の寸法を計る方が簡単だ。カートリッジの取り付け位置(針の位置)を変更すると、アームの実効長(やオフセット角)が変わる。アームの実効長が変われば、適切なオーバーハング値も変わる。
 もう一つの方法は、アームの取り付け位置を変更する(アームの実効長を変える場合も変えない場合もある)方法です。オーバーハングはトラッキングエラー角を少なく(適正に)するためのものだから、オーバーハングの数値にこだわるより、トラッキングエラー角(ゼロポイント等)を確認して取り付け位置を調整する方法の方が良いのではないかと思う。
グレース G565 アーム実効長変更  アームの設置位置が変更できる場合、アーム実効長はどの程度なら変更しても問題ないのか。短くするより長くする方が良いのか。オーバーハングは何を基準にすればよいのか。トラッキングエラー角と音質の関係はどうなのか。
 Grace G565 の実効長を、他のアームとカートリッジを兼用するため、針を規準値から4mm前に出してシェルに取り付け(針先−シェルコネクター間52mm)、アームの実効長を285mmから、約288.8mmに変更して使用することにした。問題はオーバーハングを幾らにすればよいのかということである。オフセット角が少し狭くなるので、オーバーハング値は「規定値より少な目」が良いだろうと思う。メーカーはオフセット角を公表していないが、Vinylengineによると同社の同じ実効長のアームは大体、オフセット角20度、オーバーハング15mmである。上の(G545、G565兼用)図面のカートリッジ中心線を表示角度回転させると、支点と針先を結ぶ線と一致する。(実効長 237mmのショートアームの方は オフセット角 21度、オーバーハング 15mmのようだ)。
トラッキングエラー角計測 アームに(物差端針先位置とシェルコネクター間を52mmにした)物差し付きシェルを取り付け、アームを前後させながら針先の軌跡を観察することにした。物差しの真ん中当たりがスピンドル軸芯の真上に来るよう、オーバーハングは気にしないでざっとアームの取り付け位置を動かす。アームの位置決定の方針は、先ずレコード盤最内周付近にトラッキングエラー角がゼロになるポイント(ゼロポイント)の一つが来るようにすることだ。この位置は他のゼロポイントの位置と±最大エラー角の大小によって少し変わってもよいことにする。
 アームを後ろにずらすと、アーム取り付け用の大型座金が穴の中でボードに当たっている。今の内にと少し削ることにした。今回はプレーヤーを床に降ろし、写真は三脚を立てフラッシュを焚かずに撮影することにした。(プレーヤーの一体型でない防振脚は、防振ゴムや高さ調整板、支持金物等がバラバラで何処にも固定されていないので、プレーヤーを移動させると後のセットが非常に面倒)。
 アームベースを少しずつ動かし測定し、適正と思われる位置で固定し、撮った写真で位置寸法を確認しアームの最終位置を決定した。写真判定の結果、適正と思い決定したオーバーハング値は11.3mmであった。
 「アームの実効長を3.8mm長く」すれば、「オーバーハングは3.7mm短く」すればよいという結果になった。(2013年9月10日)
 (グラフを見れば、オーバーハング値は11.3mmよりもっと小さくても良いという結果だ)。しかしこの値の差異は予想していたより非常に大きい。メーカー設計のゼロポイント(決定規準)が今回測定のゼロポイント(決定規準)と相当違っているのかもしれない。(Vinylengineにもデータがない)。メーカー規準値でアームを設置した場合の、ゼロポイントと最大エラー角を測定しておくべきだった。しかし、現在のアームの位置が、適正であれば良いのである。それは、トラッキングエラー角計測シートで確認している。その内にアームを写真にでも撮って、オフセット角を確認しようと思っている。
トラッキングエラーアングル計測結果
トラッキングエラー角の+−は公の定義ではありません。
■少し前(2013年7月)予備のTT-71が故障した。故障の状態から修理できると思い、電源周りの電解コンデンサーを数個取り外したが、新しい部品の取り付け作業は中断している。(2013年12月3日修理完了)。■現在使用しているプレーヤーはTT-81+MA-505だ。TT-81も何時故障するか分からない。MU-41を引っ張り出してきて整備したが、常用するには色々問題がある。状態の良い修理の出来そうなDDモーターを手に入れたい。
DENON DK100改造中 ■ネットで調べていると、DENONのDP3000はメーカー修理もできるようだ。そこで予備機をDENONにする目的で、DP3000用のケースをネットで購入した。商品は¥100円だったが送料は高かった。G565を乗せるために奥行きと幅を大きくした。シナベニアで化粧張りをする準備をしていたが、オークションで Victor TT-61を¥3200円で購入したので、その作業は中断している。TT-61だとTT-71と同じプレーヤー台が使える。このTT-61はG565の台に乗せ、TT-81のプレーヤーと併用していくことにした。アームによってシェルの針の指定位置が異なるので、これをどうするかが問題になる。それと、グレースのアーム配線は他のメーカーとは左右逆なので、ケーブル接続は赤白逆にする必要がある。
■グレース G565の針先指定位置は、付属シェルの頭から2mm入った所である。G565のシェルの頭からアーム端までは50mmなので、シェルのアーム端から48mmが指定の針先位置になる。一方マイクロ精機のMA-505は、針先を付属のゲージのマークに合わせカートリッジをシェルに取り付けるようになっている。その位置を物差しで計ると、シェルのアーム端から52mmの所である。中間をとって針先をシェルのアーム端から50mmにセットし、オーバーハングはメーカー規準値程度にしてアームを設置するのが一番問題が少なそうだ。しかし「これで良いのか」というのが今回のテーマだ。短いアームを更に短くしたくない。
オーバーハング計測 Grace G565
 オーバーハング計測のための斜線の針先位置は、図の針先位置より0.04mmほど外側になるが誤差範囲内として作図している。
トラッキングエラー角測定 Grace G565 エラーゼロ位置(外側)
 物差付きシェルとトラッキングエラー角計測シートの読み取り値の差が大きいということは計測誤差が大きいということである。
トラッキングエラー計測用物差し付きヘッドシェル Tokyo Sound トラッキングエラー角測定 Grace G565 エラーゼロ位置(内側)
 2mm厚のアクリル板を切って物差しを作り直しました。  計測シートと物差しの二つを使うと確度が上がります。
 オーバーハング値とトラッキングエラー角の関係を目で見て確認します。

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トーンアームの調整-1 トーンアーム マイクロMA-505のインサイドフォースキャンセラーの構造と針圧との関係
 マイクロMA-505のインサイドフォースキャンセラーは、針圧より先に(針圧を掛けずに)調整するのが正しい方法です。ワイヤーで針圧を掛けると、キャンセラーつまみを動かしてもワイヤーが左右に滑らかに動きません。
修正S字型アーム平面図 マイクロMA-505の軸受け構造は一般的なタイプのもので、特に鋭敏な動作をする構造のものではないように思われるが、ダイナミックバランス構造であることもあって、意外と鋭敏な動作をするアームです。加工精度等も良いのだろう。アームとしての基本性能は高いと感じる。動作が鋭敏なので、針圧調整はやり易いし正確です。グレースG-565の方がいい音がすると感じることも時にはあるが、G-565は針圧調整が面倒だ。
 このアームはS字形アームだが、支点を通る後部主錘(カウンターウエイト)の中心線が約1.6度、針先より少し手前のアーム前部の重心寄りの方向を向いている重心修正S字形アームであるため(左右のアンバランスが小さくなっているので)、小さな錘でラテラルバランスがとれる重量配分になっている。(JELCOのSA-250(実効長229mmS字型)のこの角度は3.5度(公表値))。
マイクロ MA505 重心修正角度  ラテラルバランス調整用の錘は、アーム水平軸の延長線上に設けられていて、ラテラルバランスを調整しても、アーム前後のバランスに殆ど影響を与えないようになっている。また少々ラテラルバランスが崩れていても問題の無い軸受け構造である。
 アームの設置位置は(主にインサイドフォースキャンセラーの構造によるのだろう)、アームのアームレストの位置からモーター・スピンドルまでの回転角度が一定範囲内(62度〜75度)に入るようにしなければならないようだが、アームの実効長を237mm(有効長222mm)、オーバーハングを15mm(メーカー指定値)にして、アームをターンテーブルの真横に見栄え良く設置すれば問題はない。
マイクロMA505設置図  インサイドフォースは針先の摩擦によって生じる。インサイドフォース(キャンセラーの調整)についてレコード針のメーカーが「知らん振りをしている」のは無責任だと思う。丸針といっても針先チップの切削角度は色々だ。また、アームメーカーがインサイドフォースキャンセラーの取り扱いについて技術的根拠を示さないのは責任逃れだと思う。インサイドフォースキャンセラーの調整はメーカーの説明通りにしても上手く行かないことが多い。
 このアームの針圧のゼロ調整は、後部主錘を移動させて重力でとる。針圧ゼロの状態では、針圧を掛けるワイヤーはゆるゆるです。ワーヤーがゆるゆるの状態でも、後部錘を動かせば、スタティックバランス型アームとして使える(針圧計が必要です)が、ワイヤーがゆるゆる状態では、インサイドフォースキャンセラー(アンチスケーティング)は働かない。
 そこで針圧ワイヤーにテンションを掛けた状態でアームを浮かせて、インサイドフォースキャンセラーの強さの感覚的テストを行った。インサイドフォースキャンセラーを「青色丸針」や「赤色楕円針」の目印位置にセットし、1.5〜2g程度の針圧をかけた後、アーム後部に錘を追加してアームを浮かせた状態で、アームをターンテーブルの上に持っていき、アームを真上に軽く放りあげてアームが左回転する様子を観察した。アームは、インサイドフォースキャンセラーが「青色丸針」の位置にセットされている場合でも、結構なスピードで左回転した。「青色丸針」の位置でもインサイドフォースキャンセラーは結構強く掛かっているように思う。
 一般的な(スタティックバランス型)トーンアームのインサイドフォースキャンセラーは、針圧に対応させて調整する構造仕様になっているが、この(ダイナミックバランス型の)トーンアームは、ワイヤーのテンションを変えて針圧を調整すると、インサイドフォースキャンセル量も同時に針圧に比例して変わる構造になっているので、針圧調整によってその都度インサイドフォースキャンセル量を調節する必要は無い(ことになっている)。しかし、レコード針の針先の形状によって針先の摩擦が増減しインサイドフォースも増減することになるということで、(表向き)針先の形状によってインサイドフォースキャンセル量を調整する仕様になっている。針圧だけでなく針先の寸法・形状で摩擦力が(変わりインサイドフォースも)変わるのでこの考えは正しいと思うが、結局このアームも、カートリッジごとに「インサイドフォースキャンセラーの調整が必要」であるということに変わりはないのである。(追記)カートリッジの先に「ゴミ除けブラシ」を付けるとインサイドフォースが変わる。インサイドフォースキャンセラーの調整にはそれも考慮する必要がある。
MA505ワイヤーが引っ掛かる  一般にアームは、針圧を掛けてからインサイドフォースキャンセル量を調整するのが普通だが、このアームの場合は針圧を掛けたままインサイドフォースキャンセラーの調整つまみを動かすと、ワイヤーと(ほぼ直交する)ワイヤーガイドとの摩擦によって、横に動くべきワイヤーがワイヤーガイドに引っかかり、つまずくようにしながら動くので、インサイドフォースキャンセル量が滑らかに変化しない。インサイドフォースキャンセル量を変更した場合は、一旦(ワイヤーを緩めるため)針圧をゼロぐらいに戻す必要がある。このアームの場合は、(針圧ゼロで)インサイドフォースキャンセラーを調整し、その後に針圧調整をするのが手順だ。レコード演奏中は、インサイドフォースキャンセラーの調整はしない方がよい。(取り扱い説明書を無くしたので、メーカーの説明が如何だったのかは分からない)。
 (追記、老婆心ながら)「針圧のゼロ調整」とは「アームを水平にする(バランスをとる)」ことではなく、(アームが浮いた状態で)針先の高さをレコード盤の高さにすることです。(アームが浮いた状態で)アームを水平(水平なレコード盤に平行)にした時、針先が丁度レコード盤の高さになっていなければ、当然針圧はゼロにはなっていません。従って針圧ゼロ調整は針先の高さで確認するのが基本です。
マイクロ MA505 ダイナミックバランス針圧加減構造 マイクロMA-505のインサイドフォースキャンセラーは、針圧を掛けているワイヤーに横から力を加えて、アームに外側に回転する力を与える方式です。ワイヤーがアームの支点より上にあるので、ワイヤーを横から押して力を加えると針圧も増えることになる。特にインサイドフォースキャンセラーを強く掛けた時(楕円赤色マーの位置にした時)は、大きく増える。またアームの支点とワイヤーの屈曲点との距離が広がるので、アームが水平回転して内側に行けば行く程ワイヤーのテンションが強くなりさらに針圧は増える。そしてインサイドフォースキャンセル量も変化する。
  アームの回転角度αが大きくなると COSαは小さくなる。(右下図参照)。アームが内周に向かうほど針圧(ピンク色)は増え、インサイドフォースキャンセル量(赤色)は逆に減少するということを示している。
 レコードの内周側は歪が出やすいので、内周側の歪みを気にするのなら、針圧は多目が良いと言われている。また、レコード盤上の針先に掛かるインサイドフォースは、アームがトラッキングエラー角が少なくなるよう適正な位置に設置されている場合には(針とレコード盤との摩擦の程度が一定なら)、内周に行くほど減少するようだ。(左下図参照)。マイクロ MA505 インサイドフォースキャンセル量の変化(小生の説明が正しいなら)、MA505はシンプルだが驚嘆すべき設計構造のアームだ。
MA505 ワイヤーの屈曲点インサイドフォースの変化  レコード針の針先の形状や寸法、切削角度は色々だ。楕円針といっても細い物も幅広の物も丸針に近い物もある。楕円針だとメーカーが言っても、(初めから)赤の目印を基準にインサイドフォースキャンセラーを調整するのは止めた方がよい。
 JICOのSAS針は、超幅広の楕円針のように見え、レコード溝の上部をトレースするのだろうか、針の溝への食い込み(摩擦)が少ないのか、インサイドフォースキャンセラーの調整を誤ると針飛びを起こし易い。インサイドフォースキャンセラーの調整は、レコードの最外周から最内周まで全体をチェックする必要がある。インサイドフォースキャンセラーの調整が難しい針は使い難い。
 このアームは、レコードの演奏中に針圧調節つまみを動かして針圧の変更ができるが、インサイドフォースキャンセラー調整つまみは(針圧が掛かっているとワイヤーが横にスムースに動かないので)レコード演奏中は動かさない方がよい。(針圧の増減調整に伴って、針圧増減分のインサイドフォースキャンセル量は自動的に増減される)。必要なことなのに取扱説明書に書かれていないことが沢山ある。メーカーの説明を鵜呑みにしない方がいい場合もある。インサードフォースキャンセル量はレコード針メーカーが指標を出すべきではないだろうか。
 MA505は加工精度が高いだけでなく堅牢な造りだ。40年近く経っているワイヤーやスプリングに疲労伸びがなく、針圧目盛りの正確さが保たれていることに驚かされる。少し前から、プレーヤーを使用していない時は、針圧をゼロに戻すようになった。
針圧計と針乗せ高さ調整用金具 汎用の計量秤の多くは、部材に鉄鋼(スチール)を使っている。磁力の強いMC型カートリッジの針圧計測を不注意に行うと、カートリッジが磁力で計量秤に引きつけられ大きな計測誤差が出る。(針も傷む)。(磁力の影響を避けるため)秤の上に厚みのある表面の滑らかなガラスやアクリルを置いて計量するのも良いが、(秤の計測面の高さをレコード盤の高さと同じ高さにして計量しないと誤差が出るので)計量する場所が限られる。そこで針乗せ高さ調整用金物をアルミ板で作った。重量が片側に寄らないよう中央にバランスウエイトを付加した。
アーム支点付近の様子
Micro MA505 針圧・インサイドフォース目盛り
針圧目盛1.5g、IFC:楕円針
真ん中縦の細い線が加針圧ワイヤー。
IFC:インサイドフォースキャンセラー
レコード盤最内周付近での針圧Micro MA505 インサイドフォースキャンセラーの強弱と針圧の関係
針圧目盛1.5g実測1.56g、IFC:楕円針
針位置:レコード盤最内周付近
高さをそろえ計測誤差を少なくする
ため、ターンテーブルを外して計測。
 アームの回転によって針圧やインサイドフォースキャンセル量がどのように変化するのか考えてみた。針圧は増えてもインサイドフォースキャンセル量は減るように思う。設計者や評論家の先生方の意見を聞きたいと思う。
Micro MA505 針圧変化表
↓インサイドフォースキャンセラー:楕円針Micro MA505 インサイドフォースキャンセラーの強弱と針圧の関係
針圧目盛1.5g実測1.47g、IFC楕円針
アームの位置:アームレストの横
↓インサイドフォースキャンセラー:丸針
Micro MA505 インサイドフォースキャンセラーの強弱と針圧の関係
針圧目盛1.5g実測1.44g、IFC丸針
アームの位置:アームレストの横
↓インサイドフォースキャンセラー:フリー
Micro MA505 インサイドフォースキャンセラーの強弱と針圧の関係
針圧目盛1.5g実測1.42g、IFCフリー
アームの位置:アームレストの横
 
トーンアームの調整-3 トラッキングエラー角確認用物差しの作成と使用レポート ( マイクロ MA-505)
トーンアームの取り付け位置やオーバーハングなどの調整確認用の物差しを作りました。(使用アーム Micro MA-505)
Micro MA505 トラッキングエラーアングルの計測結果
トラッキングエラー角の+−は公の定義ではありません。
 (注):このテストに使った物差し付きシェルは、下の写真の物ではなく、2mm厚のアクリル板を切って新しく作成した物です。
 マイクロ精機の規準値でアームを設置し直して測定してみた。左図のグラフで示すようにゼロポイントは、「Vinylengine」のデータと1mmほど違っている。しかし大きな違いではない。測定誤差もあるだろうし、オーバーハングが少し違っていたのだろう。
 しかし最大トラッキングエラー角はメーカー公表値1.5度以下に対し、実測値は+2.2度〜−1.4度くらいである。測定誤差が原因とは思えないほどの差(彼我のズレ差約1.9mm)がある。もう少し有効長が大きくなるようにアームを設置すれば、最外周の最大エラー角を少し小さくできるだろう。(決して±1.5度以内にはならないだろうが)。しかし内周に近い側のエラー角は大きくしたくない。最外周の最大エラー角を2度以内にしたかったが、この設定のままでいくことにする。しかし問題になるような値ではない。
 このアームを買ったのは多分40年近く前のことだ。参考になる資料は残っていない。しかし測定して数字が出ると(不適切な値ではないと思うことも相まって)何となく落ち着く。
 トラッキングエラー角と音質との関係についてはよく分からないが、分からないからこそ、(多少の手間で)やれることはやっておいた方がいいと思っている。
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−
 アームによってシェルへの針の取り付け指定位置はバラバラだ。複数のアームでカートリッジを共用する場合は要注意だ。
 針先とシェルのアーム端との寸法が50mmになるように、針の位置をメーカー指定位置より2mm短くし、オーバーハングをメーカー規準値の15mmぐらいにして設置したアームのゼロポイントは下段の写真に示す通り、スピンドル芯から60.5mmと114mmぐらいの所です。オーバーハング値を少し変えたほうが良いようだが、針先の位置をメーカー規準値に戻すので、この測定はここで終る。
 アームの位置を0.1mm単位で正確に動かすことは難しいが、針のシェルへの取り付け位置を規準値から意図して変更(実効長を変更)する場合は、必ずアーム本体を移動させ、(ついでだから)オーバーハング値も変え、トラッキングエラー角が少なくなるよう調整する方がよいと思う。
↑(上)トーンアーム マイクロ精機 MA-505 をメーカー規準値で再設置した場合の測定結果−−--−−(上)↑
↓(下)MA505 の(カートリッジの位置をずらして)実効長を約2mm短くして設置した場合の測定結果写真(下)↓
Micro MA505 トラッキングエラーアングルの計測 Micro MA505 トラッキングエラー角の計測
 (カートリッジを他のアームと兼用するため)Micro MA-505の針の位置をメーカー基準値より2mm少なく、カートリッジのアーム端から約50mmの位置にセットした。アームの実効長は約235mmになっているはずだ。取り敢えずオーバーハングをメーカー指定値の15mmぐらいになるように、アームを約2mm内側に寄せて設置し、トラッキング角の変化(エラー角ゼロポイント)を計測した。ゼロポイントは、スピンドル軸芯から約60.5mmと約114mmの所であった。
Tokyo Sound トラッキングエラー角計測用物差し付きヘッドシェル  これはシェルに直角に定規をつけてトラッキングアングル(の変化)を確認する為の物差しです。左の写真にあるような物差しを作り、カートリッジの針の位置に合わせてシェルに直角に取り付ける。針の位置に合わせて直角に正確に取り付けることが肝心です。直角を確認し易く上からスピンドルが見えるシェルを使うことがポイントです。
 アームにこのシェルを取り付け、ターンテーブルの外周から内周へ向かってゆっくりアームを動かす。メーカー指定通りにアームが設置されていれば(殆どの場合)物差しは、スピンドル軸の外側から中心を越えて一旦内側に入り、また外側に出る。(物差しは途中で2回スピンドル軸中心を横切る)。物差しがスピンドル軸中心と交差した所がトラッキングエラー角がゼロになる所(ゼロポイント)です。同じ型番の製品でも、製作誤差も経年変化も取り付け誤差もある。測定器具や測定方にも誤差は付きものだ。メーカー公表値より悪い結果が出てもガッカリすることはない。思ったことは実行して確認することが大切だと思う。(;^_^)。

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レコード盤の洗浄について  洗浄して異物を除いた後の音溝の弾性変形は、直ぐには回復しない。
 (ビニールの)レコードの音溝に付着したゴミ・埃は、レコードを聴く度に針に引きずられ、押しつぶされ、音溝にめり込んでいっているような気がする。中古のレコードを購入した場合は、先ず洗った方が良いと思う。しかし、レコード盤を洗浄し異物を除去しても、異物で出来た(ビニールの音溝の)凹み(弾性変形)は直ぐには回復しない。(***レコード洗浄用保護ディスクの頁に行く***
水中音波振動によるレコード洗浄  クリーニングの効果が現れるのは、洗浄直後ではなく、洗浄後一日〜数日経ってからです。できれば、一週間〜十日経ってから聴いてもらいたい。(洗浄効果の無い物もあるが、効果が感じられない場合はもう一度丁寧に洗うことをお勧めする)。洗って直ぐは駄目です。洗浄した直後はかえってノイズが酷くなったように感じることがある。異物が除去され(異物で出来た)音溝壁の凹凸が目立つようになるからだと思う。音溝のゴミ・異物が除去されても、音溝表面の凹みは直ぐには回復しない。切り傷は治らなくても、異物で凹んだ音溝の表面は時間を掛けて回復していく。(切り傷か凹みかゴミか、何で生じたノイズなのか、普通は分からない)。凹みが完全には元に戻らなくても、洗って数日後には聴いてはっきり分かる(捨てようと思っていたレコードが捨てられなくなる)ぐらい良くなる場合もある。保護ディスクのために洗浄できていないラベル近くの無音溝に針が行くと、急にノイズが目立つようになるレコード盤になることもある。(手間だがそこは別に洗浄しなければならない)。弾性変形の凹みは、毎日少しずつ回復していく。(これはレコード盤材料にも由る。ビニールではないSP盤ではそのようにはならないだろう)。レコード洗浄用保護ディスク洗って一週間〜十日後に聴いてみて、まだ気になるノイズが残っている場合は、2・3ヶ月〜1年以上休ませてから聴いてみて下さい。
 「同じレコードは一日に一回しか聴いてはいけない」という意見をウエブで見たことがある。針を降ろしてレコードを聴くと、ビニール製のレコード盤の音溝の壁は針で押されて(弾性)変形する。(これを短時間の内に繰り返すと塑性変形する)。「(弾性)変形した音溝壁の回復には時間が掛かる」ということのようだ。「日にち薬」という言葉がある。時間を掛けることも大切です。時間がかかることを厭っては何事も為し得ません。(今日はこの辺で)。(へへへ・・・)。(;^_^)。
 
レコード針の拡大写真撮りました。折れた針を修理してくれる会社があります。
レコード針写真 SHURE M97xEのレコード針拡大写真 よく使うカートリッジは、DENONのDL103S+SAS針とShureのM97xE。M97xEは価格が手頃でトレース性能も悪くない。今でもメーカー純正の針が売られている。針先チップは楕円 0.2 x 0.7 milということだが、写真で見ると楕円か丸かよく分からない。(Shureは2018年夏にオーディオカートリッジの生産を終えるとアナウンスがあった。製品の品質を確保できなくなったからだということである)。DL103Sの方はSAS針にかけ継ぎ修理したものだ。
 針の寿命は再生音に問題を感じ始めた時だと思っているが、針の磨耗・劣化以外に問題の原因がある場合もある。30年以上経っていても使えると思う針もあれば、半年でダメになったと思った針もある。針によっては(同じアーム設定でも)ある程度の期間使用すると、高域再生に問題はなくても歪感を感じ始めるようになる場合がある。しかし再生音に歪み感を感じ始めても、インサイドフォースキャンセル量を変えると良くなることが多い。アームメーカーのインサイドフォースキャンセラーの調整方法は信じない方が良い。レコード針写真 SHURE V15typeIIORG針 レコード針拡大写真
 JICO(日本精機宝石工業)のSAS針は、(自社の宣伝だが)寿命が非常に長いらしい。JICOによれば、(ダイヤモンド針の)楕円針の寿命は約150時間、SAS針は約500時間ということだ。(根拠は示されていない)。JICOで、SAS針のM97xE用互換針が販売されている。レコード針の寿命は曖昧なものだが、検討の余地ありだ。
 ナガオカ((株)ナガオカトレーディング)は、「一本溝のレコード盤に針を置き、回し続けて磨耗量をチェックする方法で、磨耗テストを行った結果、ダイヤモンド針の寿命は200時間」と言っている。(一本溝の長さは分からない)。しかし通常のレコード鑑賞で、レコードの溝は、一本溝のレコードを200時間も続けて聴くような状態と同じような状態にはならない。連続再生によってレコード溝が塑性変形を起こすから「同じレコードは一日一回しか聴いてはいけない」と言う意見もある。
 ナガオカ曰く「元々丸みのある針が摩擦によって磨耗し平らな面になると、その面の周囲は角が立つ。この角がレコードの溝を傷つけるから、レコード針は交換する必要がある」ということだ。角が立った針を見てみたいものだ。針は(砥石のように一定方向ではなく)前進しながら細かく上下左右に動く。流れの中の石は角が丸くなる。ナガオカのこの意見が正しいなら「「ラインコンタクト針」は、針先の厚みが薄くサイドがナイフエッジのように線接触に近いので、レコードの溝を傷つけやすいから使わないほうが良いということになる。(丸針の方がよい?)。さらに(サイドがナイフエッジのような)「ラインコンタクト針」の方が、(平面的にみて接触点が多い)「丸針」より溝との全体的な接触面積は小さいから、針は「早く磨耗」することにはならないのだろうか。「SAS針」がカッティングマシーンの針先形状に近いので「他の形状の針」より寿命が長いとの(JICOの)説明もよく分からない。カッティングマシーンの針はラッカー盤をスムースに削るために工夫された針だ。「SAS針」を2本買ったが、針先形状は大分違う。JICOの説明図とも大分違う。(針はみんな、程度の差はあっても多点接触で面接触だ)。丸針の針先角度を広げれば長持ちするのだろうか。ナガオカは、レコード針の寿命と針先形状との関係についてはコメントしていない。実験に使ったレコード針はどんな形状寸法の針だったのだろうか。JICOとナガオカのレコード針の寿命に関する考え方は全く異なっているように思える。またダイヤモンドは(音楽鑑賞程度の)ビニルレコード盤との摩擦程度では磨耗しないと言う意見もある。(磨耗の原因は溝の塵と言う意見もある)。針の劣化は針の磨耗が原因ではなくダンパーの劣化だと言う意見もある。(一般論として認められる根拠は示されていない)。針圧が大きいと摩擦も比例して大きくなるはずだ。しかし、針圧と針の寿命は関係ないと説明する人が結構いる。針圧1gと4gとの違いは3gなのか4倍なのか。それとも両者とも微小重量なのか。(オルトフォン等有力メーカーに対する配慮だろうか)。「磨耗したレコード針を使うとレコード盤に傷がつくから、新しいレコード針に取り替えろ」という説明は納得し難い。レコード針写真 SHURE V15typeIIApis針 レコード針拡大写真針は上下左右に激しく動く。音溝の凸凹の大きさや周期は一定ではない。針は(磨耗するとすれば)磨耗して角は少し丸くなり(サイドが磨耗して前から見て)やせていくだろう。写真を見ても、磨耗によって角が立ったようには見えない。丸みのあった針の側面が(溝との)摩擦で側面が磨耗し(前から見て細くなり側面の面積が増え高音域の再生が難しくなるのではないかとは思うが)、磨耗した針がLPレコードの音溝を削って傷つけるようになるとは思えない。(針の方が溝より先に磨耗すると言っているので)。レコードの溝が削られたら高音域は出難くなるのだろうか。
 サファイヤ針の寿命はダイヤモンド針の1/10ぐらいのようだ。(ナガオカは15時間と言っている)。ダイヤ針よりはるかに早く(レコード溝に削られて)磨耗する柔らかいサファイヤ針の方が、硬いダイヤ針よりはるかに早くレコード溝を削るようになる(レコードの溝を削ってノイズの原因になる)という(ナガオカの)理論は論理的に成り立たないように思う。サファイヤ針の寿命はダイヤ針の寿命の原因とは違うのだろうか。「サファイヤ針は柔らかくて磨耗が早く短期間で短くなるので短期間で交換しろ」、「硬いダイヤ針は磨耗するとレコード溝を傷つけるようになるから磨耗が進む前に交換しろ」ということか。レコード針メーカーは自らの発言宣伝内容を、拡大写真等を公表するなどして、ユーザーが眼で見て確認できる方法等で説明することが必要だ。理論と実証性と客観性のある説明が必要だ。「楕円針」と「ラインコンタクト針」と「マイクロリッジ針」の違いを、自分の目で見てメーカーの説明図と同じだと確認したことがある人がいるのだろうかと思う。「百聞は一見にしかず」。説明する人は実物を見てから説明してもらいたい。レコード針は小さいのでルーペを使っても針先形状は分からない。見えないから嘘を言ってもいいと思っている人がいるとは思いたくないが、兎に角「嘘をつくな」「誤魔化すな」だ。
 レコード盤のノイズの原因の主なものは埃と静電気だろう。ノイズが増えたなと感じたら、水で洗うようにしている。ノイズが増えたなと思っても、レコード針を交換したことはない。
 M97xEにはゴミ除けブラシ(ダイナミック スタビライザー)が付いているが、これを使うときは針圧を0.5g重くするよう指定されている。これを少なめに見積もると針が浮く場合がある。ブラシの追従性が鈍いように感じる。針先とゴミ除けブラシとの針圧負担率がどうなっているのかが分からない。+0.5gが適正なのか疑問だ。ダイナミック スタビライザーという名前だが、ゴミ除けブラシを使うとアームの動作が不安定になると感じることがある。不安定の原因には、(ゴミ除けブラシによってインサイドフォースが増大変化するので)インサイドフォース(キャンセラーの調整)も関係していると思っている。ゴミ除けブラシは使わなくなった。ゴミ除けブラシはトーンアームとは別に設けた方がよいと思う。
レコード針写真 AT150Ti、レコード針拡大写真  現行品のM97xE以外は骨董品と言った方がいいかもしれない。V15typeIIは互換針を使っている。(互換針A'pisの)クランプ(針のジャケット)の加工精度が悪く、カートリッジ本体に針を挿入しても、クランプと本体の間に隙があり針がグラグラして使えない。針クランプの内側にセロテープを貼って隙ができないようにして使っている。日本製なら欠陥商品だろうが某国製なら「こんな物」なのだろう。オリジナルの古い針では高音域が全然出ない。(互換針はOKだ)。針先の磨耗かダンパーの劣化か。このカートリッジの発売当初の評価は「低音域が豊か」(高音域が不足とは書けない?)だったように記憶している。(針先チップに問題があったのかどうかは分からないが)当初から高音域が少し弱かったのではないだろうか。このV15typeIIは、オーディオ雑誌を見て購入した知人が、購入後数年経ってから突然やって来て(音が気に入らないという理由で)、買取を要求してきたカートリッジだ。(新品時に音を聴いていなかったのが残念だ)。改良版のV15typeIIIは評判がよかった。(買い換えたのだろうか)。オーディオ評論家など他人の宣伝発言に惑わされて(騙されて)無駄遣いする人が昔も沢山いたのである。(自己責任だ)。オルトフォンのMI型のF15-MK2(貰った時既に針先チップが無かった)も互換針。この互換針(A'pis)の針カバーも正常方向に回転しない。レコード針写真 F8L、レコード針拡大写真MC型のFR-1MK3は40年程前の購入当初のままだから、針は磨耗しているかもしれない。ダンパーも相当劣化しているかもしれない。音は普通に鳴るのだが、使うのは控えめにしている。
 それらの大分後に買った、チタンカンチレバーのAT150Tiは(低音も高音もそこそこで)、よく言えば外連みの無いカートリッジだ。M97xEを買うまでは使っていたが、針の「クランプ形状」に問題があるのか(カートリッジ本体に問題があるのか)、針(のクランプ)がグラグラで簡単に外れるので(テープで固定しないと)使えない。新しい針(ボロンカンチレバーのMLX)を買う気が起きない。ボロンカンチレバーのAT150MLXは非常に高価だ。ボロンにしただけでどれだけ音が良くなるのだろうか。共電社の販売員が「ボロンは折れやすい」と言っていた。針先チップの写真を見比べると、古いグレースのF8L'10の方がはるかに美しい。AT150Tiに(150用ではない)「ATN100E」が使えるとネットで見た。ATN100Eの方が高音が出るとも書かれていた。針先チップの写真を撮って見比べて見たいものだ。私のAT150Tiはボディが悪いのか、それとも針クランプの方に問題があるのか、放っておけない問題になった。
 グレースのF8L'10は、(昔々)購入後間もなくカンチレバーをひどく曲げてしまった。かけ継いだF8L'10のレコード針その後何本か購入した針も、相当年月が経っているので、(良い音で聴ける)限界を超えているのではないかと思いつつ、今でも時々聴いている。使える。処分する理由は見当たらないが、新しい針は(劣化していないだろうから)もっと良いのではないかとも思っている。
 そこで昨年(2014年11月)、捨てるに捨てられず保管していたグレースF8L'10の曲がった針を、JICOに修理に出した。ひどい曲がり方だったので、カンチレバーを一旦切断してかけ継ぐという「かけ継ぎ修理」を行ってもらった。詳しい修理の内容は分からないが、チップはグレースの純正針(アドバンスド・ルミナルトレース型)のままだ。気持ちの問題もあるかも知れないが、修理の出来栄えについては満足している。もっと早く修理していれば、AT150Tiは買う必要はなかった。気を良くして、針を橙色のクランプのF8Mに付け替えて聴いてみた。これはこれで普通に使える。(針の金属性スリーブのサイズが少し大きいのか、レコード針写真 かけ継いだF8L'10のレコード針拡大写真固くてカートリッジ本体に挿入し難くかったので、余り使っていなかった針だが、ヤスリでスリーブの角を少し削ったら、挿入し易くなった)。40年近く経っていても、(ダンパーに)大した問題はないようだ。
 カートリッジのダンパーは、振動をダンプするための物ではなく、振動するカンチレバーの支持部材に過ぎない物だと思う。癒着していたり、柔にへたったりしていなければ使える。工夫された材料・工法やムクのダイヤ針を使ったカートリッジは、永く使える。接着剤に頼りすぎたものには問題があるように思う。
 次は、長年針が折れたまま眠っているDENON DL103Sを、かけ継ぎ修理に出すことにした。金をドブに捨てることになるかも知れないが、どうせやるなら針は丸や楕円でなく、少し高いが一番寿命の長そうなSAS針だ。
 レコード針写真 FR-1 MK3 レコード針拡大写真 DL103Sを針交換に出すと(現在、DL103Sは製造されていないので)、ダウングレードしてDL103になる。DL103SはDL103の改良型のようだが、仕様は大分違う。DL103が19,000円だった時、DL103Sは27,000円だった。また、針交換といっても新品と交換するのだから、新品購入と比べてもそんなに安くはならないだろう。
 一方、MC型カートリッジのカンチレバーをかけ継ぎした場合、ダンパーの交換は難しいだろうし、その他の部分も経年劣化が進んでいるだろうから、かけ継ぎは出来ても音質的な問題がでる可能性がある。ダンパーは交換しなくても、問題は無いという意見も聞くが、果たしてどのような音が出るのか。
 安心・平凡なDL103(針圧2.5g±0.3g、丸針)と交換するか、リスクはあるが数少ないDL103S(針圧1.8g±0.3g)をSAS針のハイグレード品(?)に改変するかの選択だが、(お金のことを考えなければ)答えは簡単だ。DL103はいつでも買える。それよりSAS針が本当に良いのか、本当に長持ちするのかということの方が重要だ。(後日に、SAS針の拡大写真を見たから思ったのだが)JICOの針はSAS針といってもムクのダイヤではなく接合針で接着剤をたっぷり使った針だから、こっちのほうが寿命の点で問題になるような気がする。レコード針写真 DL103S+JICO SAS針、かけ継ぎ針の写真
 先日、針の折れていたDENONのDL103Sが、修理を終えて返送されて来た。悪い音ではないが、聴く度に印象が変わる。当初は「 Excellent!」だと思ったが、慣れるまで時間が必要なのかもしれない。高音域が問題だ。安定するのか、劣化が進むのか、時間が経てば判るだろう。(数ヶ月経った今は、このカートリッジで聴くことが多い。インサイドフォースキャンセラーを適正に調整すれば問題はない。普通に使える「Good」だ)。
 「レコード針屋」さんがどんな仕事をしているのか確認のため、レコード針先端チップの写真を撮った。レコード針は音を聴くためのものだから、見掛けであれこれ言うのは控えるが、各社の物造り思想は大分違うように思う。接合針とムク針は別物のように見える。品川無線は、技術的・品質的なこだわりもあって、交換針の自社販売を続けているのだろう。レコード針写真 DL103Sのかけ継ぎ針 JICO SAS針 レコード針拡大写真
 JICOのSAS針は写真では超幅広の楕円針のように見える。超幅広だからかゴミをよく拾う。針幅が広いのでレコード溝の上部をトレースするのだろうか、針の溝への食い込みが少ないのか(インサイドフォースキャンセラーの調整を誤ると)針飛びを起こし易い。インサイドフォースキャンセラーは決して普通に(目盛りを針圧に合わせて)掛けてはいけない。(軽針圧カートリッジの場合は)針圧は多めに掛ける方が安定する。一般にインサイドフォースキャンセラー量は、針圧の10%ぐらいに設定するのが標準とされているようだが、SAS針の場合はそれよりもっと少なくてよいと思う。(インサイドフォースキャンセラー目盛りの0から(指定値の)1〜2割ぐらいでよいと思う)。トラッキングエラー角が小さくなるように適正な位置に設置されている一般のオフセット角付きアームの場合は、(針とレコード盤との摩擦が一定なら)アームが内周へ行くほどインサイドフォースは小さくなる。 レコード針写真 M97xE用のJICO SAS針、レコード針拡大写真インサイドフォースキャンセラーの調整は、レコードの最外周から最内周まで全体をチェックして調整する必要がある。
 レコード針の寿命は何によって決まるのか。ダンパーが劣化して2〜3年で何がどうなるのか。40年経ったらどうなる(どうなった)と言うのか。接合針とムク針とで違いはないのか。ダイヤはみんな同じなのか。昔のことだが、購入した時から歪っぽい音のする針があった。出荷前にどんな検査をしているのだろうか。レコード針の寿命についてJICOは、150〜500時間というが、その技術的・実証的根拠・判断基準を明らかにしてもらいたいものだ。
 2016年2月19日、JICOはSAS針の販売を中止した。しかし、6月の終わりごろ、JICOから、「JICO特注の波動スピーカーを購入すると、販売終了となったSAS針を、先着20名に販売する」との内容の手紙が送られて来た。また、「最後の20本で、今後の販売予定はない。」とも記されていた。SAS針がどうしても欲しい方には一考の価値有りか?
 カートリッジは(これだという高級品)一個で良いと言う人がいるが、レコードの録音内容や録音状態、盤質や保存状態は色々だ。良し悪しではなく相性というものもある。違うところが面白いのである。観察することが大切だ。針先のゴミが簡単に取れない場合は(時には消毒用のエタノールを使い)、ブラシの向きは順方向だけでなく、逆向き、横、斜め、上下方向にも動かして(軽く丁寧に注意して)掃除している。ルーペは必需品だと思う。(カメラ、ニコンD200)

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カートリッジにまつわる(内緒の話)あれこれ
カートリッジ AT150Ti V15TypeU
シュアー V15TypeII
ビスの頭の右に互換針の針クランプと本体の隙を埋める為に貼ったセロテープのはみ出した部分が見えている。
F8L'10
カートリッジ F8L'10
針先の形状等の異なる数種のタイプ
がある。良し悪しでは無く向き不向き
といえば角が立たずに沢山売れる。
↑針がグラグラのテクニカAT150Ti
 大分前、日本橋で購入。このカートリッジの針は、「挿入する」というより「重ねてはめる」という感じだ。針とカートリッジ本体との嵌合があまい。カチッとはまったという感覚がない。針カバーを上げ下げするだけで針が外れるようになった。仕方が無いので、針をカートリッジごと、シェルにテープでグルグル巻きに固定して使っている。針先のダイヤモンドチップの形状を写真に撮って見た。新しい針を買う気が起きない。
↑引き取ったシュアーV15TypeU
 40年程前、突然知人がやって来て、「君に薦められて買ったカートリッジだが、俺は気に入らない。君の責任だから君が買い取るべきだ」と言った。一度も聴いたことがないカートリッジだった。開いた口が塞がらなかったが、何を言っても無駄だと思って、言い値で引き取った。■今はA'pisの互換針を使っているが、針のクランプが緩いので対策が必要。欠陥商品か、「中共産はこんな物」なのか。
↑グレースF8L発売十周年記念F8L'10
 初めて買った高級なカートリッジは、同じグレースのF8Lだった。F8LとG565とMU-41との組み合わせでプレーヤーを作った。F8Lだけが行方不明。F8L'10は2代目だ。F8L'10の針はF8Lと比べて高域が伸びているのか、ターンテーブルシートによって音色が変わるように感じる。F8Mの針も買った。品川無線は交換針の価格を公表して一般に販売してもらいたい。F8LとF8L'10は別のカートリッジだ。
DL103S
カートリッジ DL103S
長い間、針が折れたまま手元に置いて
いたのは物欲です。2015年5月、別の
針を接続するかけ継ぎ修理を行った。
FR-1 MK3
カートリッジ FR1-MK3
このカートリッジがなければ、DENONのAU-320はただのスイッチ箱だ。物欲はある。ORTOFON、DENON、 ・ ・
F15MarkU
カートリッジ F15mark2
シェルもリード線も40年前と同じ物。
カセットテープ録音に活躍したそうだ。
針圧(A'pis)は規定より重めが良い。
↑針が折れていたデンオンDL103S
 30数年前、同じ建設現場で働いていた近畿工業の清水さんが「MCカートリッジの音を聴いたことが無い」と言うので、MC型カートリッジを2個貸した。返ってきたDL103Sの針が折れているのに気付いたのは少し後だった。以後30数年ずうっと気になっていた。交換するより修理する方が面白そうなので、JICOにSAS針を取り付けてもらった。ダンパーを修理したのかは分からない。結果は「Very Good」だ。普通に使える。
↑フィデリティーリサーチ FR-1 MK3
 近畿工業の清水さんに貸したカートリッジの2個のうち、無事に戻ってきた方の1個だ。今でも時々聴いている。トランスはDENON製だが良い感じだ。■FRファンクラブというものがあって、会に入ると製品の修理や針チップ交換が可能になるらしい。一瞬だが会に入ろうかと考えたことがある。「針が完全にダメ」になってから考えればいいことだが、正直私は貧乏性でケチだ。数万円というのは困る。
↑MI型のオルトフォンF15MarkU
 「かみさん」の実家のステレオを処分するというので、カートリッジだけ貰ってきた。随分昔のことだ。オルトフォンのMI型の普及品だ。互換針が販売されている。中高音が煩いので、シェルとの間に電気絶縁材料等を挟んでネジを強く締めたらましになった(ような気がする)。■互換針(A'pis)の針ガードの回転穴の位置が変だ。純正針はちびても捨てない方がよい。姉妹製品が多いが互換性の有無は分からない。
 
針圧調整について、アームを水平にしても針圧はゼロにはなりません。また、水平と平行は全く違うものです。
♪「針圧をゼロに調整する」ということについて(針圧ゼロ調整の罠)
トーンアーム 針圧調整 針圧ゼロ調整 針圧のゼロ調整とは、針先の高さを、レコード盤の上に針を乗せたときの高さと同じ高さに調整することであって、アームが水平になるように調整する(アーム前後のバランスをとる)ことではない。「ゼロバランス」という言葉そのものが紛らわしい。ゼロはゼロ、バランス(平衡)はバランス、別ものです。■実際の針圧ゼロ調整の方法は、アームを浮かせた状態で、カートリッジをターンテーブルの外側(ターンテーブルの無い所)に持っていき、アームを横から見て、針圧錘を少し動かして、針先が丁度レコード盤の上に乗った高さになった時が針圧ゼロの状態です。その時アームが斜めになっていても、その状態が針圧ゼロの状態です。アームが水平でも針先の高さがレコード盤より下になっている(アームが低い)と、そのままの状態で針をレコード盤に乗せると、当然アームは(強制的に)針先上がりの斜め勾配になって、レコード盤に針圧が掛かる(針圧はゼロではない)ことになる。トーンアーム 針圧調整 針圧ゼロ調整■針がレコード盤の上に乗ったとき、アームがレコード盤と平行(アームもターンテーブルも水平)になっているのが望ましいと思われるが、アームが水平になったからといって針圧がゼロになるとは限らない。(水平は水準器がなければ確認できない。針圧計で針圧ゼロは計れない)。アームを水平にして同時に針圧をゼロに調整する(ゼロバランスを取る)のは至難の技である。 アームが水平になっていても、針先とレコード盤面が離れている状態を針圧ゼロとしては、アームの針圧目盛りを基準にして、レコード盤に適切な針圧は掛けられない。アームが水平でも、その時の針先の高さ位置が、針圧計の計測面の高さと同じ高さでないと、「アームの針圧目盛りは不正確だ」と思い込むことになりかねない。レコード盤の厚みは同じではない。カンチレバーは撓む。針圧計の計測面がレコード盤の高さと同じ高さでないかもしれない。(メーカーは一生懸命作っていると思う。どんな製品でも100%以上の性能が出せるよう整備調節工夫して使って貰いたい。それが製作者に対する礼儀だと私は思う)。■水平にしたアーム(実効長235mm)の針先とレコード盤面が4mm離れていても、(針先がレコード盤面に接触する高さのときの)アームの勾配は 1度以下である。(1mm程度の)僅かな勾配のことで余り神経質になることはないように思う。■アームを水平(レコード盤と平行)にしたとき針先が丁度レコード盤の高さになるように、アームの高さが「簡単に調整」できればいいのだが、それが出来なければ、(アームの方が高い場合は)シェルとカートリッジの間に薄い樹脂板などを挟んで、アームをレコード盤と大体平行ぐらいにすることが一般に行われている。(プレーヤー台のみ水準器で水平を確認すればよい)。しかしこの方法は簡単そうだが(カートリッジが複数あると)結構面倒だ。■シェルのカートリッジ取り付け面の高さとアームパイプ中心との距離寸法は決まっていない。シェルを交換して高さ調整する方法もある。シェルのコネクターの直径が8mmφなので、通常この距離寸法は4mm以上あるが、マイクロ精機MA505のシェルMICRO MA505 シェル一般的なシェルの構造寸法は、シェルのカートリッジ取り付け面の高さがアームパイプ中心と同じ高さになっているので、アームの方が極端に高い場合はこのシェルが使えるかもしれない。ターンテーブルシートの厚さを変えても高さ調整はできる。■しかし、アームが(正確に)水平になれば本当に音は良くなるのだろうか。0.5mmや1mmの違いを修正する必要があるのだろうか。重要なのは針先の適切な接地角度であってアームの水平度ではないはずだ。カートリッジによって違いがあってもおかしくはない。アームの完全水平が良いとはいえない。(僅かな勾配に)こだわるなら(先入観を排して)試聴してみてはどうだろうか。ターンテーブルシートの下にコルクやゴムシート等を敷いてターンテーブルの高さを調整して、試聴確認してみるのが一番簡単な方法だと思う。しかし1mmや2mmの違いが分かる人がいるとは思えない。ターンテーブルシートでアームの高さを調節カンチレバーは斜傾していて針圧を掛けると撓んで針先の接地角度が変わる。また、カンチレバーの先の微小な針先チップが、1度程度の角度誤差で取り付けられているとは思えない。(レコード針拡大写真)。針先の接地角度が少しぐらい(適正値というものと)違っていても問題はないように思う。それよりしっかり針圧のゼロ調整をするとか、(針圧計を使って)適切な針圧になっていることを確認することの方が重要だろう。汎用の計量秤を針圧計として使う場合は、秤の計測面の高さをレコード盤面の高さと同じ高さにすることと、秤が(MC)カートリッジの磁力の影響を受けないよう対策しておくことが必須です。プレーヤー台は出来るだけ水平(時々水準器で確認する)にして、トーンアームはレコード盤と(目で見て)大体平行ぐらいという感じで問題はない。

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カートリッジをシェルに取り付けるには、シェルのコネクター端と針先迄の距離と針先と取付ネジ迄の距離が重要です。
シェルに取り付けるカートリッジの針先位置や、カートリッジの針先と取りつけ穴間の寸法を資料に明記するべきだ。
針先と取り付け穴間の寸法を明記していないカートリッジは、カートリッジのシェルへの正確な取り付けは難しい。
カートリッジ Shure V15typeU レコード針がレコード溝の凸凹をなぞって振動すれば、振動している針に接しているレコード盤自体が振動する。そのレコード盤の固体振動を針が拾う。針が振動すればカートリッジ自体も振動する。カートリッジに接しているシェルも固体伝播によって振動する。アームも固体伝播で振動する。共振するかもしれない。アームやシェルは共振しないもの、過剰振動しないものを使わなければならない。ターンテーブルシートにも振動は伝わる。ターンテーブルシートはレコード盤の過剰振動を抑えなければならない。アームは簡単に取り替えられないが、シェルは容易に取り替えられる。シェルは(安くても)「ちゃんとしたもの」を使いたい。有名メーカー製品や高額製品が良いとは言えない。
 シェル(アーム)の多くは、重さは明記されて売られているが、肝心の振動抑制能力や共振周波数などは明記されていない。箱型にして強度を持たせた板厚の薄い軽量タイプのシェルは要注意だ。一般的なアームやカートリッジの場合(ハイコンプライアンス型)でも、使うシェルはあまり軽い物ではなく「8g〜10g」ぐらいのものが使い易いように思う。軽いものや薄い物は振動に弱い。しかしあまり重いとトーンアームのバランスを取るのに追加錘が必要になる。
 針先を適切なオーバーハング値にセットできないシェルは、必要な寸法を表示して販売するべきである。カートリッジには取り付け穴の位置と針先との距離が明記されていないものが多い。(製作許容誤差が大きいのだろうか)。カートリッジをシェルに取り付けるのは簡単そうで結構時間が掛かる。オーバーハングゲージがあっても、取りつけ誤差を0.5mm以内にセットするのは簡単ではない。
カートリッジ DENON DL103S系統  ターンテーブルシートには固体伝播振動を抑制するという重要な役目がある。レコード盤に直接接しているので振動吸音能力や振動制御能力が異なる材料だと音色が変わる。(ガラス製のターンテーブルシートも売られていた)。音色をコントロールするための道具として使う人がいるようだ。ビクターのTT-71やTT-81に付属しているシートの表面には、同心円状に細かな溝が刻まれていて、レコード盤との接触面積が少ないからだろうか振動抑制性能は良くないと感じる。ブチルゴム製の「Pioneer JP-501」や「ソニーの TTS-8000のオイルダンプ式シート」(ゴムシートの中に粘度の高い液体が封入されている)などのシートの方が振動吸収性能はよいようだ。レコードに重石(スタビライザー)を載せると不要な振動が抑えられる場合があるような気がするので、偶に使うことがある。レコード盤には本当はどんな音が記録されているのだろうか気になる。スピーカーから変な音さえ出なければ良いと思っているのだが、レコード盤によっては変な音が出るものがある。レコード盤の厚さも色々だ。(ソノシートという薄いレコード盤が昔あった)。レコード盤の厚さが変われば固体伝播振動の様子も変わるだろう。レーザーターンテーブルなら固体伝播振動による不具合はないように思うのだが、オーディオ回路や機構部分などにまだまだ改善の余地があるようなことが言われている。高価な埃取りクリーナーが必須なのも気になる。レコード溝に挟まっているゴミを除いてもゴミで出来たレコード溝の(弾性)変形は直ぐには元に戻らない。レコード盤そのものがあやふやな部分のあるものなのだ。割れ鍋には綴じ蓋。変な音さえ出なければ良いのである。
 ユニバーサル型トーンアームの、カートリッジの針先とシェルのコネクター端との距離は、48mm〜52mmになっているものが多いようだ。ortofon(SPUなど)は52mm、SME(3009/S2Rなど)は50mmのようだ。(DENON DP-1300MKIIは54mmらしい)。(これは、カートリッジ針先とカートリッジ取り付け穴との距離を10mm±1mm、取り付け穴とシェルのコネクター端との距離を40mm±1mm、合計50mm±2mmとする有力メーカーの提唱規格によると聞いたことがある)。この合計距離はアームによって異なるが、私は52mmに統一している。この距離をアームメーカーの規準値と異なる寸法にすると、実効長が変わりオフセットアングルも変わり適正なオーバーハング値も変わってしまう。しかし、元々工作物には誤差もあり、設計通り製作加工されていないかもしれないし、経年によって形状変化が起きているかも知れない。シェルの針先位置が適切か否かは、オーバーハングの距離を測るより、トラッキングエラー計測シートにより、ゼロポイント(トラッキングエラー角ゼロ)の位置や最大エラー角を直接確認する方法が適切且つ確実である。プレーヤー台のトーンアームやターンテーブルの設置位置が設計値とずれていれば、オーバーハングをメーカー規準値に調節しても、プレーヤーとしては最適な状態とはいえない。
カートリッジ M97xE カートリッジ V15typeII
カートリッジ FR1MK3 カートリッジ F8L'10
カートリッジ AT150Ti カートリッジ F15MKII

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カートリッジシェル(ヘッドシェル)についてのあれこれ
 カートリッジシェルは重さだけでなく、形状、材質、製作方法、取り付け穴の位置や取り付け穴の長短など色々違いがあります。カートリッジのシェルへの取り付け穴の位置とカートリッジの針先との間の距離(10mm前後が多い)には明確な規格がないので、当該アームが設計された実効長となる針先位置に、カートリッジをシェルに調整してセットできるよう、シェルのカートリッジ取り付け穴は単穴ではなく細長い穴になっているのが一般的なシェルです。そうでない(カートリッジのシェルへの取り付け位置が変えられない)と取り付けるカートリッジによってアームの実効長が変わる可能性がでてきます。実効長が変わればオフセット角も変わり、最適なトラッキングエラー角となるアーム設置位置(最適オーバーハング値)も変わります。アームの設置位置(オーバーハング値)を簡単に変えるためには工夫(スライドベース等)が必要になります。
↓SME3009等のアームにスライドベースが付いている理由、SMEのS2やS2-Rのカートリッジ取り付け穴は単穴です。
SMEシェル  アームの製作加工誤差や経年変化や取り付け誤差を考え合わせれば、実効長やオフセット角が多少変わっても問題がないよう、トラッキングエラー角(エラー角ゼロの位置)を実測し調整してアームの最適設置位置を決定するようにすれば問題はなくなる。そのようなアーム設置調整方式を採用しているのが「SME3009等」です。SME3009等(S2、S2-R)のシェルのカートリッジ取り付け穴は単穴で、カートリッジのシェルへの取り付け位置(アームの実効長)を変更調整することができないが、アームの取り付け位置をスライドベースによって変更する(オーバーハング値を変える)ことによって、アームの寸法誤差などによる(トラッキングエラー角の最適位置調整)問題をある程度容易に解決できるようになっている。
 SME3009等の仕様書には、実効長229mmと記載されているようだが、オーバーハング値やオフセット角やは記載されていない。(実効長229mmというのも絶対的なものではなく、それくらいという示唆に過ぎないのであろう)。
 メーカーに責任のある製造誤差や経年変化を、アーム使用者(顧客)がアーム設置位置を調整することによって、アーム設置者(顧客)に誤差問題を修正(解決)させるというやり方は「ちょっとずるいのではないか」と思うが良い調整方法だとも言える。製造誤差等が大きいのでオーバーハング値を基準にしてアームを設置するのは適切ではないと明記して、且つアームの基本設計値(オフセット角やトラッキングエラー角など)ぐらい表示すべきではないかと思う。SMEの新型シリーズのアームにはオフセット角やオーバーハング値を明示しているものもある。SMEはカートリッジを作っていない。Shureはカートリッジの生産を止めるようだ(2018夏)。SMEはカートリッジメーカーに求めているものをはっきり明示するべきである。そうでないのなら自らカートリッジを製造するべきであると思う。アームとカートリッジは一体となって全性能を発揮する。オルトフォンはアームもカートリッジも作っている。かつての日本の多くのメーカーもそうだった。アームだけがどんなに立派に見えてもカートリッジがなければ何の証明にもならない。
 オーバーハング値そのものにこだわってアームを設置しても、そこが最適なアーム設置位置なのか否かはトラッキングエラー角を実測しないと分からない。オーバーハング値を指定しているメーカーが、指定値に対し2〜3mmぐらいの誤差があっても問題ないというのは無責任極まりないことだと思う。最適オーバーハング値から2〜3mmも変われば、最大トラッキングエラー角がどれくらい増加するのか明記するべきだと思う。実際のアーム設置位置は、アームの最適設置位置に対して誤差0.5mm以内に調整するぐらいの慎重さで取り付け作業することが必要だと私は思っている。
 上の絵のシェルの寸法は、色々考えた末の推測値です。針先位置はShureV15を想定したものである。S2やS2-Rをお持ちの方は一度測ってみて教えてください。
↓東京サウンド         ↑SME         ↓ピカリング
カートリッジシェル Tokyo Sound L-1 カートリッジシェル Pickering AS-2PS
↑東京サウンド L-1、 シェルの穴から下のターンテーブル
 軸が見え且つ両サイドが平行なので測定用に丁度よい。
↑ピカリング AS-2PS 安い。軽いが板は厚く(2.4mm)
 無駄の無い作りで共振の虞もなく安心して使える。
カートリッジシェル DENON PCL-5 カートリッジシェル Grace HS-5
↑DENON PCL-5 板厚が薄くマグネシュウム合金にした
 意味が無い。共振・過剰振動を抑える為の補強が必要だ。
↑Grace HS-5 発売当時は重い方のシェルだった。
 取付け穴の位置・大きさは旧型より改善されている。
MIcro オーバーハングゲージ カートリッジシェル Grace Ftype
↑Micro MA-505付属オーバーハングゲージ 使える。針先
指定位置はシェルアーム端から52mm(公表値では無い)。
↑Grace G565付属シェル アームの配線は左右逆配線!
 針先指定位置はシェルの頭から2mm入ったところ。
カートリッジシェル Micro MA505 カートリッジシェル Audio-Technica AT-LT13a
↑Micro MA-505付属シェル 鋳造品で基本板厚は1ミリ少し
 で厚くない。アームの重心位置を重視して作られている。
↑audio-technica AT-LT13a 軽量化(アームの主
 錘りの追加を避ける目的)のため穴開けを実施。
マイクロ MA505 ヘッドシェル
 シェルは結構重い。図の重心位置は、右のアームヘッド部分を分かりやすく比較表示する為に推測・誇張して描いている。この様なシェルはマイクロ精機だけだと思う。シェルは一般的な形のままで、アーム後部錘の重心を支点より少し下げて、全体の重心が上がらないようにしているアームもある。
カートリッジシェル Micro MA505 カートリッジシェル Audio-Technica AT-LT13a
↑Micro MA-505付属シェル カートリッジ取付面の高さが低いのでアーム全体の高さが高くなる。プレーヤーカバーの深さに注意要。 ↑オーディオテクニカ AT-LT13a 材アルミ。同社のマグネ
 シュウム合金のMG10の方が、高価だが軽くて良さそうだ。
シェルの選定には、価格、重量、ネジ穴位置だけでなく、カートリッジの取り付け易さや指の掛け易さなども重要です。
 
東京サウンドという会社がありました。トランジスター化とデジタル化とインターネット利用の波に乗り遅れました。
下の写真のものは(真空管アンプがまだ元気だった頃)、当時東京サウンドで働いていた友人からいただいた物です。
トーンアーム 東京サウンド ST-1200 SUPEX AUTO LIFTTokyo Sound ST-14 arm base
Tokyo Sound SHA-1ヘッドアンプ 東京サウンド SHA-1
↑トーンアーム 東京サウンドST-1200、シェルは他社製、実効長:237mm、オフセット角:約16度(実測)、オーバーハング:10mm、インサイドフォースキャンセラーあり。 ↑MC用のヘッドアンプ 東京サウンドSHA-1(単3x4)、SHA-1は、電源スイッチを入れると、大きなポップノイズが出るので使わなくなったが音は良かった。

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レコードプレーヤー整備−1の続き MU-41を90度回転させて取り付ける。アームはビクターのUA-7045。(2015年7月)
JVC UA7045 大概のアームはアームのカウンターウエイト部がゴム系部材を介して結合されている。ビクターのアームはこのゴム系部材の経年劣化でアーム後部が垂れ易いということが知られている。改良されているようだがこのタイプにもそのような傾向があるようだ。
 カウンターウエイトが外せないのは困る。そこで(試聴中の一時的な対策として)プレーヤーを使わない時は、カウンターウエイトを前(支点)の方へ寄せておけば、垂れ防止になるのではないかと思い、プレーヤー使用後にカウンターウエイトを支点の方へ移動させておくことにした。しかし、事故を起こしてしまった。カウンターウエイトをGrace G565Micro MA505前の方に寄せたままアームを操作し、針をレコード盤の上に乗せてしまったのである。カートリッジをアームに付けたままにしていた。安全対策を怠っていたのだ。中途半端な対策だったのだ。問題を起こす可能性のあることに心の底では気づいていたのである。技術的にどうすれば良いかを考える必要がある。(7月31日)
Pioneer MU-41の本当の取り付け方
↑MU-41の取り付け方はこの方が断然良い。違和感はない。UA-7045は単体では売れなかったらしい。分かるような気がする。軽量化の流れに合わなかったのだろう。しかしよく考えられた良いアームだ。アーム後部が垂れなければいいのだが。
Pioneer MU-41の本当の取り付け方 アームの位置確認:内側のゼロポイントがスピンドルから57mmぐらいの所。最大エラー角が仕様値より少し大きいがテストということでOKとした。
 モーターの回転テスト(33回転):起動から定速になるまで約7秒。(遅い)。振動や回転ムラは感じられない。防振脚をセットし台のレベルを調整して準備完了。
 カートリッジはGrace F8L'10(1.5g)。
アンチスケーティングは掛けなくてもいいような感じだが、目盛り0〜0.5の間ぐらいで様子を見ることにした。レコードはユーミンの「14番目の月」。いきなりだが良い音だ。16センチのスピーカーを使っていて言うのもなんだが、低音から高音まで文句の付けようがない。40年前のカートリッジとパンツのゴム紐を使った46年前のフォノモーターとでも大した問題もなく何とか使えるようになった。トーンアームも今のところアンチスケーティングの目盛を0から針圧の20〜30%程度にしておけば問題なさそうだ。(慣らし不足か、油か何かの影響が残っているのだろうか)。(7月25日)。 7月28日、ゴム紐ベルトの長さ変更、モータープーリーの高さ等再調整。
Pioneer MU-41/JVC UA-7045 Pioneer MU-41/JVC UA-7045 Pioneer MU-41/JVC UA-7045 Pioneer MU-41
↑電源スイッチが左にあると使いやすい。右手はアームと針に集中できる。ヒューズの取り付けを検討している。 ↑スイッチ周りの塗装の剥げを隠すため、数回スプレー塗装した厚紙を両面テープで貼った。 ↑使用予定だったG565は他で使用中。UA-7045を使うことにした。有効長が4センチ程短くなったので穴が残った。 ↑ターンテーブルシート改良
ノンスリップメッシュシートの端切れ2枚重ね。接触付着性は良くなった。
Pioneer MU-41 90度回転 Pioneer MU-41/JVC UA-7045 Pioneer MU-41/JVC UA-7045 Pioneer MU-41/JVC UA-7045
↑回転速度は正確といってよい精度だが、定速になるまで時間がかかる。大きな方のストロボスコープはLotus123で作った。 ←↑以前の開口部分は補強を兼ねて出来るだけ塞ぐことにした。位置の変わった取り付けボルト用の止め下地材も必要だ。 ←↑切断用の小穴を開けすぎた。楽をしようと思ったが反って手間だった。ボード裏の補強材や充填した石膏が邪魔だった。 ←↑台に合わせて作った型紙を90度回転させて、新しい穴あけ位置を決定。スピンドルの位置は少し変わる。
↑MU-41を90度右回転させてプレーヤー台に取り付けることにした。これがパイオニア MU-41の本当の取り付け方だとひらめいた。電源スイッチは元の位置でプレーヤー台の左側になる。プレーヤー台の穴を開けなおせば済むことだ。表示ランプは保存してあるが面倒なので取り付けない。ヒューズを取り付けようと思っている。アームはビクターのUA-7045。(2015年7月)

レコードプレーヤー整備−1 MU-41整備、古いプレーヤー台に化粧張り (2013年7月、追記 2015年7月〜8月)
パイオニア MU-41(1969年購入)スピンドルの軸受け樹脂板が砕けていた。モーターの防振ゴムがへたっている。
Pioneer MU-41 Pioneer MU-41 Pioneer MU-41 Pioneer MU-41
スピンドル軸受け樹脂板破損状況:グリスは枯れ樹脂板は粉々 軸受けテフロンシート
1mm厚x2枚、1枚でも問題ないと思う
吊ボルトは取替えて防振材補修、レベル調整が必要 ベルトの継ぎ目がベルトガイドに擦れているようだ。
 このプレーヤーは1969年頃、このMU-41とグレースのG-565とF8Lと組み合わせ、24mm厚の耐水合板を使って作ったものだ。材料の耐水合板はスピーカーボックスを作った残りだ。
 1976年頃にシステムを入れ替えてから(ソニーのTTS-8000が故障した時一瞬日の目を見た時以外は)永い間納戸の奥で眠っていたが、予備のTT-71が故障したので急遽本格的に整備することにしたのである。Tokyo Sound SHA-1■製作時当初、友人から貰ったMCカートリッジ用のヘッドアンプ東京サウンドSHA-1をプレーヤー台の右下に埋め込んだが、モーターの電源スイッチが近くにあってハムを拾うので、電源スイッチを回転数切り替えスイッチの横(台の左下)へ移設していた。今回の整備ではヘッドアンプは取り付けないが、電源スイッチはプレーヤー台の左にある方が使いやすいのでスイッチはそのままにすることにした。
■下の写真は、モーターとは別に保管してあったMU-41のベルトだが、経年劣化しているだろうから実用に耐えられるかどうかは分からない。PioneerMU-41ベルトベルトの収納ケースは後日別の所で見つけた物だが、¥2000円の値札が貼られていた。消費税の無かった時代の物かもしれない。ベルトの型番はPioneer「N28-607」。ネットで調べたが今でも当時と同価格(+消費税8%)で販売されている。驚異だ(昔が高すぎた?)。メーカー公表長は半折43cmのようだ。(追記 2015年8月6日)。
■問題は軸受け部分だ。モーターのスピンドル軸受け下部のグリス溜まり部のネジは、プライヤーとアンギュラスの2本で挟み、強くゆっくりねじれば案外簡単に外れる。錆びのように見えるのは乾燥して粉化したグリスだ。錆びでは無い。スピンドル軸の下側の先はただ丸くなっているだけで、ベアリングのように回転する鋼鉄玉にはなっていない。どの程度磨耗しているか分からないが眼で見る限り問題はなさそうだ。
■新しい軸受け板には摩擦の少ないテフロンシートを使うことにした。テフロンシートは、東急ハンズ(通販、送料が高い)で購入した。1mm厚のものしか無かったので、2枚重ねて使うことにした。(1枚でも良いと思うが、2枚の方が摩擦は少なくなる?)。プラッターがフレーム(シャーシ)に接触しなければいいのだ。写真ではテフロンシートが3枚あるように見えるが、Pioneer MU-411枚は元から使われていたスチール製の物である。グリスは自転車用のテフロン入りグリスを使った。モーターには注油口からミシン油を差した。モーターの軸受けが一番磨耗しているはずだが回転に問題は無いようだ。
このMU-41に使われているボルトは今の規格のISOネジではない。旧JIS規格の物だと思う。台への取り付けネジは無くさないように本体に取り付けたままにしておくのがよい。ISOネジを無理にねじ込んではいけない。しかし輸送時モーター固定用ネジは(一時的に使用するものなので)ISOネジでも一山半ぐらいは噛むので(ナットで長さを調整すれば)4mmのISOネジでなんとかなる。モーターの振動防止用の吊ボルトは、モーター取り付け鋼板にかしめられていて外れないのでドリルで潰して抜き取った。ボルトが交換できれば高さ調整は容易だ。ボルトが交換できない箇所は、座金を追加して出来るだけ調整したが、防振ゴムがヘタッテいて完全には元の高さに戻っていないと思う。(防振スプリングが併用されている)。Pioneer MU-41補修それとプラッタースピンドルが新しい軸受けシートによって元の高さよりちょっと高くなったからなのか、(ベルトがパンツのゴム紐だからなのか)、45回転ではベルトがターンテーブルから外れやすくなった。モータープーリーと回転数切り替えスイッチの高さを少し上にあげて調整することにした。(2015年7月28日調整)。
■肝心のベルトにはパンツのゴム紐を使った。難はベルトに継ぎ目が出来ることだ。継ぎ目をプーリーの外側になるようにベルトを掛ければ回転速度に影響はない。(2013年7月)。Pioneer MU-41しかし思わぬところに問題があった。回転数を切り替えるためのベルトガイドは、モータープーリーの直近にあって、回転数切り替え時にベルトが変形しないよう、モータープーリーとの間に余分な隙間が出来ないような構造になっている。45回転のモータープーリーは33回転のそれより太いので、45回転の時はゴム紐ベルトの継ぎ目がベルトガイドのベルト押さえを通過する時に、プッという弾き音がする。(回転速度には影響無さそうだ)。33回転では(プーリーが細いので)ベルト押さえとモータープーリとの隙間が広くなるので音はしない。(2015年7月28日確認)。回転数切り替えスイッチを取り外す意味は無さそうだ。
■ターンテーブルの回転をストロボで確認するとスムーズに回っているように見える。回転速度もほとんど正確だ。音出しテストをしていないので何とも言えないのだが、変な音さえ出なければ良いと考えている(音楽の中身が何かが分からない)ので心配はしていない。それよりターンテーブルシートの過剰振動吸収性能を改善する必要があるように思う。アームをどうするか・・暫らくこのままだ。(2013年7月)。
Pioneer MU-41 MU-41取り付け台 Pioneer MU-41、配線図 Pioneer MU-41、ゴム紐ベルト
化粧張り後ウレタン塗装  回路図  ベルト製作注意点
Pioneer MU-41、電源スィッッチ移設 Pioneer MU-41、パンツのゴム紐ベルト Pioneer MU-41、パンツのゴム紐ベルト
 電源スイッチは移設を止めて全体を90度回転させて取り付け直せばよかった。(後日の感想)。ターンテーブルシートの振動吸収性能の改善必要。ターンテーブルシートがプラッターの凸部を境に2分割されているので1枚物のシートが使えない。蛇足だと思いたくはないが、何の意味があるのだろうか。DENON DP-3000はいらない。  メーカーの純正ベルトは半折約430mmだが、ゴム紐はよく伸びるので半折385mmにした(2015年7月28日)。420mmぐらいだとスリップが多くなって起動に7秒程かかる。もう少し良い材料を探そうと思っている。
↑Pioneer MU-41(Grace G565 )プレーヤー整備美装 2013年7月(Victor TT-71故障のため)
 
レコードプレーヤー台製作−3 VICTOR TT71、VICTOR TT61、GRACE G565
Victor TT-61 + Grace G-565
Victor TT-61(2013年8月乗せ替え)
レコードプレーヤー台、断面図 レコードプレーヤー台、積層板材
Victor TT-71 + Grace G-565
VICTOR TT-71(2013年12月故障修理完了)
レコードプレーヤー台防振脚
アーム取り付けボード 品川無線 GRACE G565 レコードプレーヤー台防振脚
↑フォノモーター 上段VICTOR TT-61(2013年8月乗せ替え)、下段VICTOR TT-71 // トーンアーム GRACE G565
 
レコードプレーヤー台製作−2 VICTOR TT-81、MICRO MA-505
Victor TT-81 + MICRO MA-505
VICTOR TT-81、MICRO MA-505 (製作 2004年2月)
TT81、輸送時トランス固定ネジ TT-81の輸送時の電源トランス固定ネジを外さずにプラッターを乗せた場合、ネジの頭が大きいと、プラッターの中央部分が厚いので、ネジの頭がプラッターに接触する虞がある。ネジ留めする時は万が一の安全の為、座金は使わない方が良い。トランスは静かなので、固定ネジを外していなくても(振動には)気付かないかもしれない。一度輸送時固定ネジの有無の確認を。
マイクロMA505 トーンアーム取り付け位置図 MA505プレーヤー台寸法
上板:シナ合板等計 43mm
中間:硬木角材補強 46mm
底板:合板計 27mm
プレーヤー台高さ計116mm
幅585mm×奥行き440mm
仕上げはアクリル塗料ではなくウレタンがいい。■インサイドフォースキャンセラーの関係でアームの基準取り付け位置(角度)を一定範囲以内にする必要がある。

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SPボックス、レコードラック、SONY-TTS8000レコードプレーヤー台、ウッドホーンその他
DIATONE/P610DB+FOSTEX/FE103 スピーカー インピーダンス測定 スピーカー インピーダンス測定機器 Chriskit Multi-cellular Horns Chriskit Multi-cellular Horns
↑DIATONE P610DA+FE107 / ←−インピーダンス測定図、測定器−→ / ↑クリスキット マルチセルラホーン
FOSTEX/FE164+FE103 スピーカー インピーダンス測定 12平均律 88鍵盤 音階の基音周波数 Chriskit Multi-cellular Horns Chriskit Multi-cellular Horns
↑FOSTEX FE164+FE107インピーダンス測定図 ↑音階の基音周波数 ↑Chriskit Multi-cellular Horns
小形スピーカー標準ボックス寸法図
SP台 FE164単発 FE164単発の場合 FE164+FE107の場合 小形スピーカー標準ボックス寸法図
高級堅牢安価レコードラック完成 レコードラック作りました。 箸置き作りました。 SONY TTS8000 SONY TTS8000用ケース
 ↑レコードラック作りました。 ↑箸置き作りました。 ↑Sony TTS-8000 1976〜2003(故障)
 
1960年頃製作 SP/LP切り替え式圧電素子カートリッジとアイドラー式3スピード切り替えフォノモーター
アマチュア無線、送受信機 初めて作ったオーディオアンプは、中古のST管 76×6ZP1×12F を使ったもの(モノラル)だった。■左の写真は自作のレコードプレーヤー。高校を卒業するまでこれで聴いていた。モーターは電蓄に使われていた中古のアイドラー式の物でゴロ音が酷かった。日本橋の五階百貨店で山積みにして売られていた物だ。アマチュア無線機アームはナショナルの新品を買った。電蓄用の部品だ。本体はプラスチック製で針圧調整は出来ない。針の付いているカートリッジはSPとLPを回転させて切り替えるサファイヤ針のクリスタル型の物で、RIAAイコライザーは必要無かった。箱は有り合わせの板で作った。その横にあるのがアマチュア無線の送信機と受信機。■レコードは傷がつくのが当たり前だと思っていた。同じスピーカーやアンプが 2台ずついるというステレオというものに疑問を持っていた。音楽には全く興味が無かったのでこれで十分だった。  中学生の頃ステレオレコードが発売されるという話を友達の中川君から聞いた。中川君音楽に興味は無かったが、ラジオでステレオ放送をやるというので、自作のラジオと進駐軍払い下げの五球スーパーの2台を用意した。朝日放送と毎日放送が左右片チャンネルずつ放送するというものだった。アナウンサーの説明では卓球のピンポン球が右に左に動くということだったが、何がどう違うのか全く分からなかった。アマチュア無線のアンテナ■五球スーパーの背面にクリスタルカートリッジを接続する端子が付いていたが、76のグリッドにCを介して接続しているだけのものだった。■当時の私はアマチュア無線の方に興味があった。無線機の送信管は中古TVの垂直偏向出力管 6GB6(GT管)出力はで10W以下だった。変調は中古のST管6L6シングルのAM変調のC級アンプだった。アンテナは近くの陵の竹藪から取ってきた竹を支柱にした7MZ用の約6mH×20mLのダイポールアンテナだった。電信(モールス信号)の練習をしていたが全く上達しなかった。1960年前後数年間の子供のころの話です。

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