卯的生活・緊急短期(であってほしい)連載

ぺーどら日記
9

 

2000.7.15(土)午後


何となく「ミラ・ショック」から立ち直れず、めいった気分のまま昼食をすませた。しかし頭の中は中古車のことばかり。他に、ワゴンRのような型もいいな、と思っていたのでその話もミラを見る前にしていたのだが、ワゴンRなら38万でお買い得なものがあるという。エアコンもカーステレオも付いているのだが、ちょうど車検が切れているから約10万のプラスになるであろうという話。たまたまその車はかなり離れた場所にあるそうで(地名を聞いたが忘れてしまった。オットが言うには車でも2時間かかるらしい)、写真を撮ってきてメールで送ってくれる、ということになっていた。

「やっぱり、38万のワゴンRかなぁ。でも、予算がなぁ」
「他にも見て回ればいいじゃない。何も、絶対そこで買わなきゃイケナイって訳じゃないんだから」

オットが「そのくらい、どーってことないよ」とばかりに言ったその言葉で、単純な私はすっかり元気を取り戻した。台風が接近していたので怪しい空模様の中、とにかく一台でも多くの車を見てみたくなっていた。昼食の後はゴロ寝が欠かせないオットを無理に引っ張り出して、私達はまた中古車探しを始めた。

とにかく暑い。今年の盛岡は去年にもまして猛暑である。中古車センターは、この暑さの中、沢山の車体に反射する太陽の光でさらに暑さを増しているようだった。じっくり見る、というよりも、お目当ての型の車を探して掲示してある値段をパッと見ては次へ行く、といった駆け足の作業。

我が家からそれほど遠くないスバルの中古車センターに足を踏み入れてキョロキョロしていたら、セールスマンが汗をかきかき近付いてきて話しかけてきた。私は手頃な軽自動車を探していると言い、ワゴンRタイプの車を見せてもらうことにした。

高い! スバルの車内で展示用に使っていたという車で2000kmしか走っていない新品同様だというお薦めの車。軽く100万を超えている。予算は30万前後。どんなに譲っても、50万くらいまでしか出せないことは確実だ。こんなぺーどらな私が、子供の送り迎えのためだけにちょこちょこ乗る車に贅沢は言っていられないのだ。大きなコトを言えるのは、中古車を乗り回せるようになってから・・・と秘かに決めていたし。

「実は、今、38万というワゴンRの話を聞いてきたばっかりで」

汗を噴き出しながら一生懸命に説明してくれるセールスマンの人柄の良さに、つい私は今日の出来事を話していた。18万のミラを見てショックを受けたこと、予算は50万までしか出せないことなどを包み隠さず話した。真剣な眼差しで私の話を聞いていた彼は言った。

「個人のところというのは、とにかく売ったら売りっぱなしです。安く買ったと喜んでいても、すぐにどこかがおかしくなって修理しなければならなくなったという話も沢山聞いています。彼らが保証してくれるのは売るまで、です。だからこそ、安く出せるのです。私どもは、スバルという看板を背負っていますから、いい加減なものをお売りすることは出来ません。ご購入が決まれば、しっかりと車検を取りますし、そのための整備もします。ここにある車の値段には、全てそこまでの金額も含まれているのです」

そして、彼が薦めてくれた車は、一番小さな型の軽自動車だった。ちょうど今日明日は半年に一度の感謝デーで、特別価格で出しているのだという。これなら、車検や車庫証明の費用、新品の冬タイヤも含め、さらに1年間の保証を付けてくれるというのだ。

エアコン、カーステレオ付き、パワステでパワーウィンドウ(今までのオットの車は手動しかなかった)、しっかり整備して車検を取って・・・というセールスマンの話に、私がグラリときたのは言うまでもない。でも、でも、ここで決めて良いモノだろうか?オットはニヤニヤしながら「好きにしたら」と言うだけだ。

結局、その場は「商談中」ということで他も見て決めることにした。ああ、どうしよう。迷い、悩みながらもこの気持ちは、いつもの、あの気持ちに間違いなかった。「もっとよく考えてから」とその場を離れても、結局はそれが欲しくてたまらなくなり、手にしてしまう私の熱くなりやすい性格。

車はVIVIOという車種で、色はシルバー。小さくてツードアだけど、運転席の乗り心地は悪くない。オットの車に比べると、ギアがきゃしゃで棒っきれのようだ。クラッチもブレーキもアクセルも、やっぱり小ぶり。ここらへんが軽と普通車の差なのだろうか。

翌日は台風の接近による大雨だったが、私は朝一で契約を済ませていた。ついに出会った、私の相棒のエンジンをかけさせてもらいながら「早くウチにおいでね」とささやいていたのだった。