卯的生活・緊急短期(であってほしい)連載

ぺーどら日記
6

 

2000.7.7(金)


路上教習2回目で七夕のこの日、私はこれで教習所でのペーパードライバー教習は最後にしたいと思っていた。

今までで、かかったお金は約3万円。主婦にとって、このくらいが限度の金額でもあるし、いつまでもノンビリお遊び気分でもいられないな、と考えていた。5千円も出せば、まだ教官の親切な指導のもと、有意義な50分を過ごすことが出来るだろう。しかし、教習所に通うこと自体が特別なことなのである。他にもペーパーから勇気を持って運転し始めた人達は沢山いる。その人達は自分の力で頑張っているのだという意識が、いつも私の頭の中にあったのだった。15年という月日に甘えてはいたが、そこそこ運転のイロハを思い出したところで、今度は自力で少しずつ頑張っていかなくては。

「特に目立ったミスもありませんから、あとは慣れですね。回数乗ることです。もう1回も走れば、あとは大丈夫じゃないかな」
昨日の先生の言葉も私を決意させていた。ペーパードライバー講習は、本来の免許取得のためのそれと違って、特に期限も「何回乗らなければいけない」という決まりもないそうだ。だから自分で「良し!」と思ったらそこが卒業。「あとは、またわからないことがあったときにでも乗りに来て」先生のあたたかい言葉を胸に、この日、最後の教習に挑む。

2回目の教習は、最後にふさわしいような実践的な事柄がたくさんあった。まず、路上に出て信号のないT字路をそろそろと確認しながら左折。すると、曲がった左前方で「キキキキ〜ッというブレーキ音がした。すかさず「ぶつかったな」という先生の声。見ると、前方に事故をおこしたらしい2台の車が止まっている。後続車が前の車によそ見か何かしていてぶつかったらしく、前の車の後部ウインドウが見事に割れて素通し状態。慎重に車線変更しながら横を通り過ぎる。目の当たりにしたこの事故は、きっと日常茶飯事のことに違いない。

また、しばらく走ると前方に紅葉マークの車。年輩のドライバーはあたりを確認して道路に合流しようとキョロキョロしているが、私の存在には気づかないようで、こちらを確認しないでソロソロと動き始めた〜! 「危ない!」と言う先生、思わずよけようとハンドルを切り、右車線にはみ出そうとする私の車。ガツン!と、初めて「教官ブレーキ」がかかった。「こういうときは、とにかくブレーキ。ハンドルを切ったらダメ、隣にも車が来ているんだからね」相手側の不注意とはいえ、事故が起きてしまえばそんなことは意味がないだろう。いかに未然に事故を防ぐか。車を再スタートさせながら、高鳴る心臓の鼓動とともに、しっかりと頭に叩き込んだ。

それから、やっとホッとしたのも束の間、前方に停車している車をよけるために余裕で車線変更・・・のはずだった。バックミラーで後続車確認、いない。サイドミラーで隣の車線を確認し、いざ!と思ったところで「車来てるよ」と先生の一言。「エッ?」と思った次の瞬間、横をかなりのスピードで車が通過した。「きちんと目で確認しないとね。ミラーに写っていなくても、今みたいにすぐそこまで車が来ていることがあるからね」ああ、またも教訓。生きた授業。昔、免許を取るために路上を仮免で運転していたときに、こんなにも痛切に感じたことはあっただろうか。

思えば、免許を取ったばかりの頃は、それほど必要に迫られてというのではなく、何となく免許があれば便利だし、友達もみんな取ってるし〜といった漠然とした気持ちしかなかったような気がする。しかし今は違う。長いこと助手席でオットの運転を見た来たし、何よりも「絶対に自分で運転するのだ」という思いがあり、目的もある。ここであきらめたら、きっともう一生自分では運転しないだろうという確信も。

今日はもう、コンピューターにカードを入れて予約を取ることもなく、そのまま送迎バスに乗り込んだ。背後に教習所のざわめきを感じながら、やっとここまで来たぞ、という安堵感と、何とも言えない寂しさ。もうここへは来ない。そう心の中でつぶやきながら。自分だけの卒業。さあ、これからがホントの修行の始まりだ。これからは、ぺーどら日記・自立編なのだ。車も買わなければならないし、それにともなう保険やら手続きやら、色々なことがあるんだろうなぁ〜。感傷にひたっていられるのも、きっと今のうちだけだろうね。とにかく、アッという間の1週間、お疲れサマでした〜。