卯的生活・緊急短期(であってほしい)連載

ぺーどら日記
5

 

2000.7.6(木)


いよいよ、待望の路上教習の日!
だというのに、なかなか予約が取れずに、昨日午後の電話でやっと午後2時からの予約を取った。子供たちは3時過ぎに帰ってくるから、3時まで走って送迎バスに乗れば間に合いそうだ。

ちょっと気持ち的にも余裕が出たのか、ある予定を思いつく。教習所のそばに住んでいる友人の家に電話して、その日、教習時間までお邪魔してくることになった。友人もペーパードライバーで、私より以前に思い立って練習したりしていたことがあるのだが、最愛の息子に「お母さん、危ないからやめて」と言われ断念したいきさつがある。病弱な息子の通院のためにと思い立ったのに、当の息子にそう言われてしまって、とたんにやる気をなくしたのだそうだ。

友人は私の決意をとても喜んでくれた。「まだまだ、大丈夫だよ」と言ってみたのだが、彼女は家のローンもあるし、とても2台も車を持つ余裕はないわ、と小さな声で言った。我が家の場合はオットの車が会社から支給されているものなので、まだどうにかなる、恵まれていると思わなければいけない。

よく、「ローンもないし、車の心配もないんだから、お金貯まるでしょう〜」と言われたりするのだが、足りないことはあっても余っているということがない。人様より贅沢をしている気もないし、一体その分のお金はどこへ行っているのかと自分でも不思議だったが、最近やっと原因がわかった。我が家は医療費がとてつもなくかかるのだ。喘息持ちの次男は小児科と耳鼻科の薬を切らしたことがない。東京では、喘息などは公費で治療が受けられたりするようだが、それも地域によって違うそうで、岩手県ではそういうありがたい制度がないのだ。その他にも、家族が医者にかかることがあるから医療費は毎月バカにならない。

まあ、お金のことはとにかく、他愛もない話であっという間に時間は過ぎ、教習時間30分前には私は教習所に来ていた。

教習所の前には書店やゲームセンターといった時間つぶしの場所がある。今まで教習終了とともに送迎バスに飛び乗っていたので、これらの店には入ったことがなかった。今日はちょっと時間もあるし、と書店に入るが、何だかとても緊張しているようで、雑誌を手に取っても心ここにあらず、参ったことに「マリコ現象」まで起き始める始末。とうとう観念して、教習所のイスで運命の時を待つことにした。

教習所には、ちょっとしたコーヒースタンドのような場所があり、コーヒーとクッキーで向かい合って学科の本を読む主婦とおぼしき女性達の姿もあった。免許取得までの道のりは長い。ここにいる人達は、みんなしっかり自分流のパターンで教習時間をやりくりしているのだろう。主婦とコギャルが親しそうに「どうだった?」なんて言い合っている姿もあって、何となく、疎外感。そして、ちょっぴりうらやましかったりして・・・。

前置きが長かったが(私も実際、長いこと教習時間を待ち続けていた気持ち)、やっと配車受付。胃袋がキューッと縮まっていくのを感じながら、指定された番号の教習車の横で待つ。とうとう教習開始のチャイムが鳴って、やっと教官がやって来た。


 

2000.7.6 その2(木)


「それじゃ、坂道の方から外へ出ましょう」言われるままにコース内の坂道発進を練習した場所へ。今までの習慣で、ついポールの前で止まってしまった。「止まらないで、そのまま走っていいんだよぉ」やらなくても良かった坂道発進をして、何だか早々に前途多難〜? 坂を降りきったところが外への出口、ちょうど信号がある。これから路上に向かう教習車が、坂からズラリと長い列になってソロソロと出掛けていく。

外の世界のスピードは速い。特にこの道路は大きいし、制限速度もいきなり50kmと教習所内とは別世界。それでも隣にプロがいる安心感でどうにか加速。盛岡ならではの、どこまでもまっすぐに延びる広い道路をガーッと走る。久しぶりに、忘れていた何とも言えない爽快感を味わう。しかし指示されて道を曲がると、とたんに幅が狭かったり、車が多い道に入ってしまった。

さすが地元だけあって、しばらく走ると生活圏内の道に入ってきた。私が決意を固めたスイミングスクール前の道路を走りながら、先生にそのことを話したりする余裕もちょっと出てきた。「ここ、月いくらなんですか〜?」やはり幼稚園児のお子さんを他のスイミングスクールに通わせているという、同年代くらいの先生。今は奥様が車で送迎しているそうだ。そこは、送迎バスがないので私が候補から外したところだった。

徐々に車は教習所への帰りの道を走っている。国道は我が家の目の前でもあるが、いつもかなり交通量が多くて危険な道路である。左車線を走っていたら前方に停車しているトラックあり! 「後ろを確認して、ウインカーを出して、入れるようならスーッと自然に・・・」先生は簡単そうに言うが、車線変更ほどコワいものはないと私は思う。どの車も走っているのだ。ミラーで見ても、その間隔が十分なのか、詰まっているのかなんて判断できない〜〜! おまけに右車線に並んで走ってくる車までいるのだ。しかし、ボヤボヤしていると私の車は止まらなければならなくなる〜! 「ほら、譲ってくれたみたいだから、今のうちに」右車線を走ってきていた車がウインカーに気づいて速度を落としてくれたようだ。先生に言われるままに隣の車線に滑り込む。そして停車していたトラックをよけ、またもとの車線へ。ドーッと汗が噴き出る感じ。隣で指示されたから出来たようなものの、自分だけの判断で出来るようになるにはまだまだ経験不足であろう。

ようやく教習所に帰ってきた。他にも路上を無事終えて戻ってきた車がゆっくりと息を整えるようにコースを回っていた。今まで、何気なく見ていた路上教習の車。これからは「あ〜あ、へたくそ」なんて目で見ないで欲しい。かなり必死で、一生懸命に走っているのだから。頑張れ教習車! ベテランドライバーさん、意地悪しないでやさしく見守って欲しい。教習者はその親切をきっと忘れないと思うから。

そして明日は路上の2回目。これでペーパー卒業と、私は自分で秘かに決意していた地点にさしかかっていた。