きみが片翼 -You're my better half- vol.3 |
遠くで、ポーン、ポーンと音が聞こえる。
宇宙港の連絡船の着陸音を知らせるアナウンスにもれなくついてくる音に似た、その柔らかい電子音はハープの音色の高いAの音だ。
だが、その柔らかいはずの音が、今は迫力があるほど幾度となく鳴り響いている。
布団を被って聞こえない振りをしていたが、騒音が酷くてこれ以上は眠れない。
「ったくうるせーな。誰だァ? こんな朝っぱらから!」
浅い眠りを邪魔されて、こめかみに不機嫌マークをみっつほど浮かべながら、
相良仁は枕元の眼鏡をむんずと掴むと寝台からのっそりと起き上がった。
気ままな一人暮らしをしている仁の休日の朝は通常遅い。
枕元の時計を見ると朝の八時。普段なら、まだ夢の世界で至福の時を存分に味わっている時間だった。
銀河連邦政府の官舎が並び立つ区画の最北端にある独身寮の仁の部屋は、ひとり住まいにはありふれたワンルームだ。
簡易キッチンとユニットバスワンルーム。リビング兼ダイニング兼寝室である部屋の側面には大きめなクローゼットがついている。
寝に帰っているような人間には充分であろう設備が整っていた。
仁は寝ぼけた頭をガシガシと掻きながら、名残惜しそうに寝台のぬくもりから離れた。
リモコンでスイッチを押すと、
「はいはい、誰ですかぁ」
部屋の壁が大きな画面に変化する。
訪問者を確認しようと即座にインターフォンに接続すると、玄関の防犯カメラの画像が映し出された。
──今日は寝て暮らそうって、わざわざ切ってたのによォ。
「まったくアナログの呼び鈴を使うとは……。いったいどこのどいつだよ……」
だが、その仁の不機嫌な顔が困惑のそれに変わったのは、まさに一瞬のことだった。
「おいおい、よしてくれよ。ここは男子寮なんだぜ……?」
画面いっぱいに映った訪問者の顔に、仁は愕然と動けなくなる。
ましてや、
「チビー、寝てるのー? もう朝よー!」
男とははるかに違う甲高い声で、それも場所を構わず声を張り上げて扉を叩き割る勢いでドンドンやられては、これはもう唸るしかない。
「げ、マジかよ……」
何しろここは男ばかりが住んでいる女人禁制の独身寮なのである。つまり、お年頃の男だらけ。
そんな男だけの寮生活の中で、この闖入者は目立ちすぎた。
一部の輩がナイショで彼女を連れ込んでるのを仁は薄々知っている。
だが、それはあくまで、「ナイショ」で「コソコソと」が基本なのだ。こんな大っぴらな女の訪問など許されるわけがない。
いくらガリオのお天道様が許しても、独身寮の寮則が許してくれないのだ。
明日は我が身。みんな我が身に脛を持つ身なので、今のところは隣人の不祥事に黙認を貫いてくれているらしい。
とはいえ、その寛大なお情けもいつまで持つかわからない。
いつ割れるかわからない氷の上を歩いているような緊張感で仁の胃がぎゅっと萎縮した。
──ったく、身体に悪ィぜ……。
玄関扉の向こう側では、仁のそんな複雑な心中にお構いなく、リリアの声が今も廊下に響き渡っていた。
「チビぃー、そこにいるんでしょー? 早く出てきなさいよー」
文化の相違か、異種族の感覚とのすれ違いか。
地球人種とセリーア人には海溝より遥かに深い壁があるように思えるのは仁の気のせいだろうか。
「どうやってあいつ、エントランスのセキュリティを抜けたんだ……?」
どやどやと廊下に雑音がだんだんと大音量になっていくのは、他の階からも野次馬が沸いて出てきたせいだろう。
リリアの無鉄砲ともいえる豪胆さに思わず仁は眩暈を感じながら慌てに慌てて、うなぎの寝床のような廊下へと飛び出した。
仁の部屋は、玄関に続く廊下の一番部屋寄りの左側にバスルームの入り口がある。
その向かいにちょこんと設置されている簡易キッチンの隣りの洗濯機の上には、山となっている汚れ物。
仁は洗濯機の前を素通りしようとした足を一旦引き返すと、
「クソッ!」
山のような汚れ物をすべて洗濯機の中に力任せに押し込んではバタンと乱暴に蓋を閉め、一目散に玄関へと向かう。
その急ぎ足の足元の、洗濯機の並びの延長線には、雑誌の束が高々と積まれ、今か今かと資源回収の日を待っていた。
そんな山積みの雑誌に足をぶつけて呻くように暴言を吐きながら、仁は息を乱しながら玄関扉のロックを解除する。
途端、仁の視界に白と薄いピンクの風景が真っ先に飛び込んできた。
リリアの乳白色の長い髪が、桜色のワンピースの向こう側で、一瞬ふわりと拡がったように見えた。
実際、その幻想的な情景を目にしながら、「マジに夢で終ってくれ」と仁はどれほど心から願ったことだろう。
目の前にあるものこそが現実だと無情にも彼の鼓膜をリリアの声が叱咤するまで、仁は本気で現実逃避をしかけていた。
「起きてんなら早く出てよねっ。寝込んでいるのかと心配するじゃない」
「おまえは息子の身辺チェックをしに来た母親かよっ! こんなとこまで何しに来やがったっ!」
今日は休日のはずである。
地上勤務の長所は、一定期間働けば、ちゃんと休みが巡ってくることだ。
高い給料分をもらっているだけあって、ほとんどのELGは年中がら年中、銀河連邦諸国を仕事で飛び回っている。
惑星探索や調査で長期出張となれば、休日なんぞ任務遂行まで皆無のようなもの。
やっと仕事が一段落しても本来休まなければならない休日分全部を休もうとしたところで、次の仕事が大手を振って待っている。
それほどELGは多忙だった。
有給休暇さえ消化しきれないのに長期の代休など取れるはずもない。
結局、すべて残業手当となって給料に加算され、労働時間を給料に転化することで一応の解決とされていた。
妻帯者なら妻が勝手に夫の給料を使いまくるところだろうが。
将来使い道があるわけでもない、日々食べているだけあればいいという地味な生活を送っているひとり者は得てして給料を使う暇も気力もないもので、貯蓄は増える一方だった。
本来、お金は何かを得るために必要なものである。
あっても用をなさなければ価値など下がる。
恋人がいるならまだマシだろう。使い道の方向性が見えてくる。
だが、多忙な勤務状況を理解してくれる恋人はそう多くない。
それは、ELG妻帯者の結婚までの交際期間を調べるとわかる。
統計では一年未満が七割を占め、先手必勝とばかりに早々に結婚話を進めるELGが多い傾向があるようだ。
だが一方で、一年未満で幸せなはずの結婚生活にピリオドを打つカップルも七割いる。
多忙を極めるELGの哀しい私生活は、そんな調査結果にさえ浮き彫りとなって容易に伺えた。
その点、出張ばかりの外回りと違い、地上勤務は五日働けば二日の休暇を取ることができる。
仁の仕事は生き物相手なので休みは定まってないが、それでも研究所勤めの特権とばかりに同僚と相談しながらも好きな日を選んで休みをとっていた。
仁は今、貴重なガイダルシンガーの種子三百粒のうちの三十粒を三粒ずつプランターに植えて、気温、土壌の質、日照時間、湿度、水遣りなど、異なる十パターンの環境で育てている。
現在、発芽し、本葉をつけてきたところで、プランターはどれも成長状態が安定しており、今のうちに休暇をとっておこうと、昨日の夕方、オーウェンに休む旨を伝えておいた……はずだった。
仁の休みは銀河連邦の労働基準法に則(のっと)ったもので、けっしてズル休みしたわけではなかった。
最近、仁とオーウェンの食卓には必ずリリアの姿があった。
彼女は仁たちが料理するのをコバンザメのようにくっついて、いつも興味津々にじっと見ていたものだ。
だから仁もそれなりにリリアを気づかって、彼女の食事の世話を昨日のうちにちゃんとオーウェンに頼んでおいたし、仕事の引継ぎも済ませておいたのだ。
なのにどうしてリリアがここにいるのか。
「今日は俺、休みなんだよ。わかったらさっさと帰ってくれ」
仁は開け放しの扉の内側で立ちすくみながら懇願してみた。
だが、リリアは一言、「ご飯を作って!」と言うだけで、帰る素振りなどまったく見せない。
「うわっ、セリーア人だぜ」
「げ、初めて見た……」
両者を見守る寮の男たちの勝手気ままな声が仁の耳にわんさか入ってくるのがすごく煩(わずら)わしかった。
「何で相良のとこに? 知り合いか?」
「環境庁と共同研究してるってのは本当だったんだなあ」
「可愛い子じゃん」
こんな目立つ存在に関わっていたら、ここままでは寮での平穏な生活さえも失うことになってしまう。
そう即座に判断した仁は、
「とにかく帰れ。飯は明後日作ってやるからっ!
今日のところはホテルでも三ツ星ンとこでもいいからレストランで済ませとけよ。
研究所に行けばオーウェンだっているし。あいつもそこそこ料理できっからさ。
なあ、頼むからここは大人しく帰ってくれ」
お願いします、と真摯な面持ちでリリアに頭を下げて頼んだのだった。
が、しかし。
「ええーっ。お腹ペコペコなのにぃ。だって、もう八時なのよぉ。
ちょこちょこっと作ってくれたっていいじゃない」
今から外に食べに行きたくないし、できればおいしいご飯にありつきたい。
そう、リリアは駄々を捏ねて、仁の切実な願いなど、スパッと綺麗に一掃する。
寝起きで機嫌が悪いところに突然降って沸いた切実な問題。
思わず頭が痛くなってきて、仁は嫌そうに顔をしかめると、
「おまえなあ、いい加減にしろよっ!」
怒鳴り散らして相手が怯んだ隙に扉を閉めてやる、とパネルに指を滑らせようとした、のだが……。
仁の行動よりも早く、出勤前の外務省勤めの隣人が、
「おいおい。ここで問題を起こしてもらっては困るよ。
使徒星との外交は断然的にこっちが不利なの知ってるだろう?」
連邦の立場を重んじてほしい、と縋るように訴えてくるから、ほとほと困ってしまった。
星間外交の問題を俺に託すなよ、と言いたくなる。
「なら、俺にどうしろってんだよ」
「ここはとにかく接待と思って、な? 頼むよ、相良。このことは上にも報告しとくからさ」
接待にかかった食材は外務省の予算から落とすから、とまで説得されては、仁もここは降参せざるを得ないのか、と一瞬心がゆらりと揺らいだ。
が、即座に、いや、やはりここは断固として拒否するべきだろう、と奮起する。
そして、そんな仁の微妙な心の揺れに生じた千載一遇の隙を逃すようなリリアではなかった。
「お邪魔しまぁ〜す♪」
まるで通い慣れたかのような軽い足取りで、さっさと仁の部屋に上がってゆく。
「セリーア人は最上級の賓客だ。
外務省としても最高の接待を心がけているんだが、どうにも彼らは気難しくてね……。
な、ここはひとつよろしく頼むよ」
「あのなあ、頼むって言われてもよ……」
外務省には縁もゆかりも恩もない仁は、内心、ぽんと気軽に肩を叩いてくれるなと叫んでいた。
「俺は環境庁の人間なんだぞ? 接待だったらそっちでやってくれよ」
「同じ連邦政府の官吏じゃないか。
この件については、すべての省庁が一丸となって取り組むべき問題だと思わないのかい?」
「俺は日頃から、充〜分っ、協力しているぜ?
分け隔てなく連邦政府一丸となって協力し合おうってんなら、そっちももちっと俺を助けてくれたっていいだろが」
「いや、あのね。ほら。やっぱり接待というものは気心しれた者があたったほうが相手も喜ぶだろう?」
「何だそりゃ」
完全な擦(なす)り合いだな、と仁は思った。
だが、そんなふうに長引くかと思われた外務省と環境庁の擦り合いは、
「ねえ、まだあ? さっきっからわたし、お腹空いてるって言ってんじゃないのよっ!」
空腹に苛立つセリーア人の鶴の一声で決着が着いた。
「すでにあちらは食べるつもり満々で席についていらっしゃるじゃないか。
とういうわけで、接待費に時間外労働費を別につけとくから、よろしく!」
そう言って、外務省勤めの隣人が拝むように「この通り!」と手を合わせてきて。
「わかったよ! ただし今回だけだぞっ!」
結局、仁は苦虫を潰したような顔で頷くことになってしまったのだった。
認めたくないことだが、実のところ、仁は抵抗するだけ無駄だとすでにわかっていた。
外務省の面子はともかく、ああなったらリリアはおいしいものにありつくまで絶対どんなに説得しても腰を上げようとしないからだ。
付き合いが浅いくせに、そんなふうにリリアの行動パターンをしっかり把握している自分がつくづく恨めしい。
仁は深く息を吐いた。
気を取りなして。
「おいっ! 約束したのちゃんと覚えとけよ! 外務省宛てに絶対、食費請求してやるからな!」
「構わないよ。ただし、領収書は用意してくれよ。監査が入っても大丈夫なようにね」
口先でなんぼの仕事をしている外務省の人間相手に、口の達者さで太刀打ちしようなんて無理な注文なのだ。
そのことをよく知っている仁は、小さく悪態をつくと、
「ほらほら見せモンじゃねーんだよ! あんたたちは今日仕事だろう? チンタラしてたら遅刻するぜ」
野次馬根性むき出しで集まった男たちを蹴散らすと、さっさと玄関扉を閉めて部屋の中に戻って行った。
「おい、若作り! 急に来られても食材ほとんどねーぞ。チャーハンくらいしか作れねえからな」
こうなったらさっさと作ってさっさと食べさせて、早々にリリアに帰ってもらおう。
仁は卵とネギ、そして冷凍ご飯を取り出して、手早く調理をしだした。
そうして、あっという間にチャーハンが完成した。
できあがったチャーハンからふわりと湯気が白くのぼっている。おしいそうな匂いが漂っていた。
その出来立てほやほやの、卵が絡んだ黄金色の、熱々、パラパラのご飯の照り具合がこれまたとてもすばらしく、リリアの食欲をますますそそる。
「う〜ん、おいしいィ」
とろけるような笑顔でチャーハンを口に運ぶリリアは文句なしに愛らしかった。
美少女と言っても過言ではないだろう。
ただし、そのウルサイ口を塞げば、の話であるが。
仁は早食いで食事を済ますと、思いついたように洗濯機を回して洗い物を済ませた。
「幸せいっぱいだわあ」
食事を済ませ、仁の寝台に寄りかかって両手を上に持ち上げて気持ち良さそうに伸びをするリリアを、「そこ邪魔。ちょっとどけよ」とあれこれ退かしながら部屋中を簡単に掃除したあと、
「俺、シャワー浴びるから。その間にもう帰れよ?
それとさ、おまえ、ホテルに行き先言ってきたんだろうな?
セリーア人が行方不明になったら外務大臣の首が飛ぶぞ?」
おそらく今頃は外務省勤めの隣人がセリーア人の居所を報告しているだろうけどな、と思いながら、仁は鼻歌交じりにバスルームに消えていった。
パジャマ代わりのスエットを脱ぎ、さっぱりとシャワーを浴びて、フード付きのトレーナーとジーパンに着替えて出てきた時にはいつも通りの平穏な日常生活がきっと戻っているはずさ、と期待しながら……。
ところが。
「ね、お昼は何を作ってくれるの?」
バスルームから出てきた仁を、リリアは待っていましたとばかりに待ち構えていた。
昼食のメニューを尋ねてくるセリーア人に帰る気配などまったくないのは明白だった。
「ここに居つくんじゃねえよ! 仕事したくないんならさっさとホテルに帰ればいいだろっ。
おまえには五つ星ホテルの最上階スイートが用意されてるだろーが。
そこでルームサービスでも頼んで自分の部屋で寛げよっ」
「いいじゃない。どうせひとり分もふたり分も作るの一緒なんでしょ?」
「一緒じゃねえって! 第一、作るのは俺だぞ?
おまえなあ、男の部屋にのこのこ来るなよな。アブねえだろーが。
あ、でもよく考えたら、おまえ、ババアだもんな。俺のほうがその気になれねえし安心か」
この場合、安心するのは果たしてどちらなのだろうか。
「何がババアよ! こんなかわいいピチピチな女の子捕まえて」
「捕まえてなんかねえよっ! おまえが押し掛けてきたんだろうがっ」
口を酸っぱくして現状を正確に説明しようとする仁だったが、その説明を相手がちゃんと聞いているかははなはだ怪しかった。
「とにかく、お昼ご飯作ってよ」
「おまえなあ、俺は寝起きだったんだぞ。貴重な休日、台無しにしやがって」
「チビだって洗濯とかすることあったんじゃないの?
早く起きて、やるべきことさっさと済ませてよかったじゃない」
「おまえに起こされなかったら俺は昼まで寝てた!
俺はこれから寝直すんだからいい加減帰れよ。メシなら明後日作ってやるから」
「明後日も作ってほしいけど、今日も明日も作ってほしいわ」
「……。おまえ、それ、今日も明日も俺が仕事休みだってわかってて言ってんじゃねえだろうな?」
その仁の質問に対し、リリアはにっこりと見惚れるほどの極上の微笑みを浮かべた。
「だぁって、食事は一日三度、ちゃんと食べなきゃ」
リリアの言っていることは正論だが、ここで安易に頷くことは仁にはできない。
「チビって実はマメよねえ。ここも、男のひとり暮らしにしては結構キレイにしてるし」
洗濯機や掃除機で手早く家事を済ませた仁の手腕をリリアが感心する。
改めて言われるとやっぱり照れくさくて、少しだけ顔を赤らめながら仁が声を張り上げた。
「そんなモン、褒めんでいいわ。もういいだろ? 俺の部屋を見て満足したなら早(は)よけーれ!」
「お昼食べるまで満足しないわよ」
頑固として動こうとしないリリアはこのあとの食事もここで摂る気充分だった。
「そんなことばっかり言ってると、いい加減、おまえを食っちまうぞ?」
脅し文句のつもりで、ここが男の一人暮らしの部屋なのだと仁が強調すると、
「やれるもんならやってみなさいよ」
リリアは「お手並み拝見」と余裕の笑顔を浮かべてくる。
「言ったな!」
「言ったわよ」
言ったところでそれがどうした、とふんぞり返るリリアの白い顎に手をかけ、ぐいと上に向けて唇を寄せようとした仁が、触れる寸前、ほら、やるのは簡単なんだ、と言うふうに黒色と乳白色の目を合わせてニタリと笑うと、瞬時にリリアが仁の胸を両手でドンと突き飛ばした。
すかさず、台所に置いてあった包丁がビュンと鋭い風音を立てながら仁目掛けて飛んでくる。
「うわっ、あぶねっ」
リリアが念動力を発揮したのだった。
「本当にやろうとしたわね?」
「やってねえだろっ! それにホンキでやろうとも思っちゃいねえっ!」
気がつけば、包丁の尖った刀先が仁の喉元に向けられたまま、寸前でピタリとその動きを止めて宙に浮いていた。
「男はすぐそう言うのよっ。
準強制わいせつ罪だろうが強制わいせつ罪だろうが、そんなの強姦罪と一緒なんだからっ。
本人の承諾なしのこういう行為はすべて、殺人罪に匹敵する極悪非道の重犯罪よ。わかってる?」
目には目を、歯には歯を。 重犯罪には重犯罪を。
「おまえはメソポタミア人じゃねーだろが。ハンムラピ法典なんか持ち出すなっ!
それに俺はやってねーっつってんだろっ」
喉仏が上下するたび、ナイフの冷たい感触を、触れなくても仁はしっかり感じていた。
リリアの殺気が刃先の冷たい温度となって、冷気となって伝わってくる。
「確かにこの場合は未遂だけど。
女性の立場から言わせてもらえば未遂だろうが何だろうが精神的な打撃は大きいわ」
「精神的打撃が大きいわりにはおまえ、平然としてるじゃねえか。
それによ、この場合の俺の男としての立場はどうなるんだ?」
「そんなモン、塵と化してるに決まってるじゃない。あるようでないものなのよ」
「何だそりゃ。言っとくけどな、俺は好きなヤツしか口説かねえし近づかねえよ。
だから、おまえにはしてねえだろう?」
仁の言葉にリリアの頬がわずかに引きつった。
「その言い方、ホント小憎らしいわね」
途端、リリアの拳が仁の頬に綺麗に決まる。
「何しやがる!」
仁の憤慨に、ふん、と鼻息荒く、リリアは肩で息を吐くと、
「これでチャラにしてあげるわ。それとご飯、おいしいのを作ってよね。
わたしはまだ精神的疲労で胸がドキドキいってるのよっ! こんなの食べなきゃ落ち着きそうにないわ」
これもそれもあんたのせいよっ!と最後に叫んでは、ぷいっと横を向いて、ぎゅっと口を結んでしまった。
それは怒っているというよりも、何かに必死に耐えている様子だった。
急に黙り込んだリリアはさっきとは打って変わって元気がないように見える。
途端に仁のほうも怒る気が失せてしまった。
殴られた頬はまだヒリヒリと痛い。
怒る権利は当然あるとは思う。
だが、この場合、自分にも少しは非があるかもしれないと仁も一応軽くだが反省する。
決断したら仁は早い。
腫れているだろうはずの頬を手のひらで擦りながら、ひとりの成人男子として、仁は素直に謝ることにした。
「はいはい、俺が悪うございましたよ……」
お姫さまはどうやらオカンムリらしい。
──俺の休日はいったいどこに行ったんだ……?。
仁は冷蔵庫の中身の寂しさに我が身を重ねて、床に向かって盛大な溜息をひとつ零していた。
その後、急いで買い出しをしてきた仁が、リリアの機嫌を取り戻すのはそれほど難しくなかった。
特大のフルーツパフェがリリアのしかめっ面を瞬時に笑顔に変えたのだ。
「おまえ、食いモンに釣られてホイホイ男についてくんじゃねえぞ?」
──これじゃあ、どっちが年上だかわかったモンじゃねえな。
生クリームの付いたスプーンを嘗める美少女の行く末に、仁は一抹の不安を感じる。
「わたし、尻軽オンナじゃないわよ?」
特大パフェに零れんばかりの笑顔で挑むセリーア人はグラビアモデル真っ青の外見をしている。
──これで五十に手が届くってんだからよぉ。こいつの外見に騙される男たちにホント同情するぜ。
食事中のリリアはとても大人しい。
大人しいと二割増しにかわいく見える。
俺は餌で釣っているわけではないぞ、と自分に言い訳しながらも、仁から見てリリアは食べ物に釣られてホイホイついて行きそうな、そういう危ういところがあるように思えた。
──行動が動物的っつーか、野性的っつーか。
そこで仁はハタと思い出した。
「なあ、若作り。おまえってば、本来の専門は動物行動学だって言ってたよな?」
同じ生物学でも植物専門の自分とは確か畑違いだったはずだと思って、興味本位で訊いてみた。
「そうよ。こっちでいうとこの哺乳類、爬虫類、鳥類……、今まで何でも調べてきたわ。
回廊をわたる寸前まで請け負ってたのは鳥類だけどね。たとえば……そうね、サミュエ種って知ってる?
数年前、こちらの連邦主席さんに一羽贈ったはずなんだけど?」
サミュエ種は使徒星の鳥で、種の保存法に基づく「星間希少生物」の鳥類に指定されている貴重種だった。
「そりゃ知ってるさ。白くて綺麗な鳥だろ? データ画像でなら見たことあるぜ」
セリーア人が回廊を渡ってくることすら難しいのだ。使徒星からの贈り物は貴重この上ないものになる。
ましてや、サミュエ種は人語を解する鳥と言われている。
α類コミュニケーション・テレパシーを使って、会話も楽しめるというから驚いたものだ。
「サミュエ種はβ類のほうが得意なのよ。──ああ、β類ってのはわたしたちセリーア人の言葉ね。
サミュエ種って、普通はペットとして飼われているの。品種改良種は性格が比較的大人しいのよ。
本来っていうか、野生のサミュエ種はそれはそれは凶暴でね、『認知』されるのも大変なの」
「あ? 認知って何?」
学生時代は生物学部に身を置いていた仁である。
仁は植物専門に違いないが、生物全般にも興味が尽きない。
「サミュエ種独特の基本行動のひとつなんだけど。
彼らは自分以外の存在を、『上位』、『認知』、『下位』に分類するのよ。
特に『上位』は唯一の存在。つまりボスね。『下位』は自分より下のモノ。
自分が納得してテリトリーに入るのを許すのは『認知』まで。
ペット用のサミュエ種は『認知』の許容範囲が広めなの。だから友達感覚で飼い主に懐くのよ」
仁はリリアの言葉に疑問を抱いた。
たとえば、しつけの行き届いた飼い犬は主人をボスと敬い、ボスより決して前を行かないものだが、リリアの言うサミュエ種と飼い主の関係はそういうものでもないらしい。
「飼い主がボスじゃないのか?」
「えっとね。これもサミュエ種の特徴のひとつなんだけど。
不思議なことに、サミュエ種にとってボスは別格なのよね。
言ったでしょ? サミュエ種は『上位』、『認知』、『下位』の三つに分類するって。
彼らにとって『上位』は常に一羽。それも生涯にただ一羽、なの。
野生のサミュエ種は普通、集団営巣地を作って暮らしているわ。
そこのオスのボスがそのコロニーのサミュエ種たち全部のただ一羽の『上位』。
もちろん、コロニーにはほかにもオスが多くいるし、オスたちはそれぞれ番いのメスとの間に卵を儲けるからボスだけの一夫多妻制というわけでもないわ。
それにね、生まれてくる雛が父親を『上位』には置くとは限らないし、コロニーのボスを『上位』にするとも限らないのよ。『上位』は自分で選んだただ一羽を指すの。
まあ、普通はそのコロニーのボスなんだけどね……。
だから、余所(よそ)から来たオスが自分たちのボスを倒したら大変よぉ。
コロニー内のすべてのサミュエ種がみんなして新しいボスを攻撃しちゃうんだから。
そして、余所モノを倒したあとの次のボスってね、これがまたサミュエ種独特の決め方なんだけど、まだ『上位』を決めていなかった雛たちが決めるのよ。
コロニー内のオスの中から雛たちが『上位』に誰を選んだかによって決められるの。
つまり、多数決ってことね。
ボスに選ばれたオスを『上位』に置かなかった雛たちはそのボスを『認知』してコロニー内に残るか、自分たちが選んだ『上位』と共にコロニーを出てゆくか、それは自由みたい。
調べたけど、その選択はコロニーによってまちまちだったわ」
上下関係にならない親や兄弟たちは認知し合い、同胞として同じテリトリーにいることを認め合っているのだとリリアは続けた。
「それじゃ、ペットにするのは大変だろう? 飼い主の言うこと聞かない言葉がわかる鳥なんてさ」
「そうなのよねえ。
だから、ペット用のサミュエ種はすべて専門の飼育所が請け負って卵を孵すことになってるのよ。
飼い鳥が卵を産んだら飼育所が卵を預かって、暗闇の中で卵を孵して、飼い主を最初に目にするようにずっと暗闇の中で育てるの。
もしくは同じペット用のサミュエ種にある程度の大きさになるまで雛を育ててもらうかだけど。
雛のほとんどはその育ての親鳥を『上位』に置くから、ボスの鶴の一声を使って飼い主を認知するよう言い聞かせるってわけ。
だいたい、そういう育ての親鳥に選ばれるのは飼い主を『上位』に置いているオスだから、結局はセリーア人の意向に合うようペット用化されてるってことなのよね」
「ふうん。性格が穏やかに品種改良された上にボスからの命令で駄目押しするのか。手の凝ったもんだ」
「でも、品種改良って良し悪しなのよねえ。知ってる? 本来、サミュエ種って共鳴能力を持ってるのよ。
共鳴能力はそれぞれの共鳴値によってレベルゼロからレべル五まで定められてて、野生のサミュエ種の場合はレベル二、共鳴値は一.二倍だって言われてるわ。
だけど、品種改良化されたサミュエ種はレベルゼロ、共鳴値一倍なのよ。
つまり、これでは共鳴能力がないのと一緒ね。
ちなみにオーウェンもレベルゼロのようだけど……。
一部の羽根なしの子孫の中にはレベル一とか二って人たちがいるらしいけど、彼はわたしが見たところ、そっちの才はないようね。
共鳴能力が著しいのはやっぱり羽根なしよ。それも男の。
女の羽根なしが最高レベル三、最低レベル一に比べて、男の羽根なしは少なくてもレベル三はあるもの。
中にはレベル五の最高値の者もいるわ。そうなると共鳴能力一.五倍よ!
黙識族男性最高値であるレベル十、つまり回廊渡り判定値十以上の回廊渡り成功率百パーセントのセリーア人たったひとりで、レベル五の羽根なしを連れての回廊渡りをした場合、成功率は七十五パーセントになるんだからすごいわ!
たったひとりで誰かを連れて帰るのに、これだけの数値はそれはもう見事としかいいようがないわよね」
回廊渡りは通常、複数のセリーア人で行われるとリリアは言う。
各セリーア人の能力値の和を人数で割った平均値が回廊渡り判定値であり、判定値の整数がレベル値で表され、十倍した数値が回廊渡り成功率となるらしい。
「なら、おまえはレベルいくつなわけ?」
「わたし? わたしはレベル八よ」
「何だ。おまえ、十じゃないんかよ」
「あんた、アホねえ。ほんとに何も知らないんだから。それでELGなんてよくやってられるわねえ。
セリーア人の女性の最高値はレベル八なのよ。それも黙識族出身でしか出せない数値だわ。
ちなみに黙識族でない女性の最高値は六。
男性の場合は七だけど、黙識族に比べたらやっぱり低いのよ。
レベル九や十は黙識族出身の男子しか得られないし、特にレベル十なんて、黙識族の中でもほんの一握りしかいないんだから」
レベル十がいい男だったら、ちょっとくらいの性格の悪さなんて女はみんな目を瞑るってくらいお買い得なのよ、とリリアは冗談めかした。
「レベル八ならば十倍して八十パーセントの成功率なんだろう?
おまえならひとりで回廊を渡れるんじゃないか?」
「確かにね。回廊渡りの認定ボーダーは判定値六だもの。
でも、ひとりであの暗黒の回廊を渡るには強靭な精神力が必要だから……。
もしひとりで渡らなくちゃならないのなら、わたしだったら野生のサミュエ種でも連れて翔びたいところね。
共鳴能力があれば、回廊渡り判定値もわたしのレベル八に共鳴値一.二を掛けた九.六になるし、サミュエ種はセリーア人と同調することで回廊渡りの負担にはならないから、すごく重宝するし。
ただし……言ったでしょ? 品種改良されたサミュエ種には共鳴能力がないの。
野生のサミュエ種を連れて翔ぶのはわたし自身が認知されてないと無理なのよ。
なのに、野生の場合、認知されるのもなかなか大変とくるんだから参っちゃうわ。
コロニーからはぐれたサミュエ種の卵や雛だったらうまく育てれば何とかなるかもしれないけど、でもそんなのは滅多にいやしない……。
それに、いたとしてもそういうサミュエ種の性格は野生そのもの、とても穏やかとは言えないからウルサイ鳥なのは間違いないわ」
でも他にも方法はあることにはあるのよね……、とリリアは一瞬考えるように言葉を区切った。
「あのね、共鳴能力を持つのはサミュエ種だけじゃないって言ったでしょ?
地球人種との混血種である羽根なしも持ってるの。
そうは言っても、いくらレベル八のわたしだけで羽根なしを連れて帰るのは難しいんだけど」
リリアは、連れて帰るのが男の羽根なしで、仮にその羽根なしが共鳴能力最高のレベル五だとしても、ふたりで回廊を渡るには判定値は六にしかならないから無理があるととても残念そうに語った。
「サミュエ種はわたしたちとの同調によって負担にはならないけど、羽根なしは思いっきり人ひとり分だもの。
共鳴はとても魅力的な能力だけど……、大勢のセリーア人で回廊を渡るのならともかく、セリーア人ひとりで羽根なしを抱(かか)えて翔ぶなんて無謀の極みだわ。
ボーダーぎりぎりの危険なんてわざわざ冒(おか)すもんじゃないでしょ?」
そう言いながら、リリアは溶けかけたアイスクリームをスプーンで掬った。
そして、何気ない会話の延長の先にふっと付け足したように、
「オーウェンって、ご先祖さまのセリーア人のこと、あまり好きじゃないのかしら」
突然、そんなことを言い出した。
「わたし自身がセリーア人だから、もしかしたら同胞を弁護するように聞こえてしまうかもしれないけど。
常識的に考えて、オーウェンのお祖母さんが使徒星に行くには複数のセリーア人の協力が必要不可欠だったでしょうね……。
女の羽根なしの場合、共鳴能力は最高値でもレベル三。
おそらく可能性は限りなく低いと思うけど、もし仮にオーウェンの祖先の個人能力値が最高のレベル十だったとしても、共鳴能力レベル三の娘を連れて回廊を飛ぶのは難しいと思うのよ。
回廊渡り判定値は、ふたりの能力を掛けた数字の平均値だから、六.五にしかならない。
六十五パーセントで渡るのは……わたしだったら止めておくわ」
リリアの話を聞きながら、仁はオーウェンが以前、セリーア人の曽祖父は妻を見送ったのち、使徒星に帰って行ったと言っていたのを思い出していた。
「それに、判定値以外にも渡れない理由ってのがもしかしたらあったかもしれないじゃない?
例えば、その時にはもう、オーウェンのお祖母さんはすでに成人していて、こっちで幸せな家庭を築いていたかもしれないわ。
そういう理由があったのなら、それこそ娘を連れて帰るのは難しかったでしょうね……」
真実は当事者にしかわからない。
それでも、オーウェンの祖母はこちらで生活し、子供を育て、孫に恵まれた人生を送った事実は残っている。
「ねえ」
「あん?」
「あんたって、少しサミュエ種に似てるわ」
「へ?」
リリアが、「はい」とスプーンに苺とバニラアイスを掬って仁に向けて差し出した。
「それも野生のサミュエ種」
「性格が乱暴だって言いたいのかよ?」
おまえ、ケンカ売る気か? 人にメシ作らせておいていい根性しているじゃねえか、と仁がムッとすると。
「野生のサミュエ種はね、性格は凶暴で口がすごく悪いけど仲間をとても大切にするのよ。
『上位』のボスにはもちろんだけど『認知』した相手にもね。一度、懐に入れた相手には優しいの」
あんたは野生のサミュエ種みたいだわ。
そうして、リリアは、「はい、どうぞ」と更にスプーンを仁に近づける。
おいしいものを相手に分け与えようとするリリアの仕種はとても自然だ。
それが間接キスになることなど全然考えていないのだろう。
「おまえのほうこそ……」
野生のサミュエ種そのものだ、と言い掛けて、仁は思わず口を噤(つぐ)んだ。
仁は一瞬の躊躇のあと、自分に向かって差し出されたスプーンのアイスをパクリと口に入れ、その冷たさに顔をしかめた。
口の中に広がったバニラアイスが甘くて冷たい。
舌に残るアイスの後味。
その冷たさと甘さを振り返ると、ふとリリアのイメージに重なっては消える。
「おまえこそ……、まるでこのアイスのようだよ」
冷たくて甘い。激しい気性と繊細な情。
その掴みどころのない琴線に触れた瞬間、自分の心まで震えてしまうような気がして、途端に仁は自分自身が怖くなった。
「ねえ、チビ」
身を乗り出して笑顔を近づけられたら……。
「ホントにあんたの料理の腕前には恐れ入ったわ。わたしを虜にするなんて大したモンよ。
ここまでわたしを魅了させといて、今更出し惜しみなんてしないでちょうだい。お願いよ」
仁はますますどうしたらいいかわからなくなる。
「そういうわけでっと。もちろん、夕飯も御馳走してくれるんでしょうね?」
「おい、何でそこで『そういうわけ』なんだよ」
調子良さも天下一品のセリーア人はいつだって何かと笑って誤魔化して、仁の言うことなど聞こうとしない。
「おまえ、いい加減に帰れっ! ここに居つくな! 住み着くな!」
リリアがその夜、仁の寝台を占領して女王様のように仁を扱き使ったかどうかはふたりのみぞ知るところであるが……。
仁の休日が料理に明け暮れて終ったことは、外務省に提出された多数の請求書の日時と金額に顕著なほどあらわれていた。
加えて。
「あー、さっぱりしたっ」
「てめえ、俺の服、勝手に着るんじゃねえ!」
「だって着替え持ってこなかったんですもの。それとも今からブティックに案内してくれるの?」
「こんな時間に開いてる店なんかありっこねえだろっ!」
「だったらいいじゃないの。これ、ちょっと小さい気がしないでもないけど。
ま、何とか着れるからこの際我慢しとこっと」
「おまえ、一言多いんだよ! 文句があるなら裸でいろっ」
残業を終えて帰宅した隣人がかすかに耳にしたその会話……。
その後、官舎に居着いた物好きなセリーア人の噂がなぜか外務省から出回ることになったのだった。
そうして、またひとつ、セリーア人に押し掛けられた男の逸話は増えてゆく──。
illustration * えみこ
えみこのおまけ
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