産業技術総合研究所の地質調査総合センターの依頼で登攀研修の入門編を丹沢で行った。彼らは未知の沢を踏査することがままある。その安全性を高め、調査が進むよう、懸垂下降とフォロワーとしての登攀を中心に練習してもらった。
初心者も3日間で実用レベルにしたい。3人以上のパーティーで強力なリーダーがいることを前提に、確実&スピーディに行動できることが最低目標。実際には応用判断することもあるのでそのような例も体験してもらった。
なお天気が悪く、写真が見にくい。過去の講習記録も参考にされたい:
2007/2/21-23 登攀研修 2005/7/6-8 登攀研修初級 |
2007年7月3日(火) |
懸垂岩で懸垂下降と3人(以上)パーティのフォロー登攀練習
室内で確保システム、ロープの種類、まとめ方、結び方、ムーヴ学習 |
4日(水) |
源次郎沢で登攀と懸垂下降の実践練習 |
5日(木) |
ボードでアクシデント対応練習;墜落、ロワーダウン・トップロープ、自己脱出、仮固定 |
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A 懸垂下降 |
下りやすさと仮固定しやすさでエイト環を基本に練習した |
A1 下降手順 |
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ロープのセット
手袋をつける
セルフビレイを取る
よくあるのは枝にスリングをタイオフし、ハーネスから出したセルフビレイ用のひも(デイジーチェーンなど)の環付きビナをかける
エイト環にロープをセット
大きい方の環をハーネスのビナにかけておいてセットし、小さい方の環にかけ直す
別のビナに掛けておいてもよい(が、環付きビナの作業でひと手間増える)
ロープ、エイト環、体重によっては2重巻きも
下る体勢で体重をかけてセルフビレイを外す
これでセットミスによる事故を防ぐ
ビナを2本のロープの間にかける
下る
下の手が重要。落ちそうになって上側をつかんでも止まらない。
足場に立てないときは、岩に垂直につっぱる
左右の手で、またATCでも練習
下から墜落防止
下から引くと止まる。落石注意
着地
しゃがみこんでロープをくりだしてからエイト環をはずすとよい
上に合図する
回収
末端の結びをほどき、一端を引く。もうひとりがまとめると早い。
下降が続くときなど、両末端からまとめて2塊にすると便利だ
その間に別メンバーが次の下降支点工作に行くと早く進める |
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A2 ロープのセット |
経験者はこちらも練習 |
今回は15cm径ぐらいのしっかりした立ち木が多いので、タイオフ。
ロープをタイオフしたスリングに通し、末端をまとめてエイトノット。
セルフビレイをとり、ロープを投げる
2つに分けるなら、支点側を先に投げ、末端側を後で投げる |
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B ロープで確保した登攀
(主にフォロー) |
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B1 トップが登るのを確保する手順 |
ビレイデバイスはATCを基本として練習 |
エイトノットでロープをハーネスにつなぐ
基本として腰ベルトかビレイループに直結
衝撃を受けなければ環付きビナでもよいが
確保用の支点を取る
支点作りは別項
メインロープをインクノットで支点に固定
確保支点と第1中間支点の間に立ってボディのATCでビレイする(ことが多い)。位置関係を考えて
グラウンドフォールが気になるとき、後に支点が取れないときはリードに近寄ることもある。落石注意。
ロープをたるみ過ぎないように繰り出す
中間支点にクリップする前後で出し引きあり
トップが終了点に着いたら(「ビレイ解除」)ビレイ終了
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トップはハーケンでもカムでも突っ込んで登るのである。最初の中間支点を取ったら、確保者はトップがグラウンドフォールしないように気を張るべし |
B2 ミドル(セカンド)が登る |
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トップがロープを終了点に固定するのを基本パターンとする
ミドルはアッセンダー・プルージックなどでロープをたどって登る
アセンション、タイブロック、プルージック、クレムハイスト、ハブ巻き、バッチマン などあるが、プルージックなどはロープとスリング径(固さも)で効き具合が違うので注意。タイブロックもロープ径やビナの断面と重さでずり下がるようだと危険
セカンドは中間支点を回収する
ただし屈曲ルートなどでは残し、ラストが回収する
短い段差では、末端で引き上げて投げるのを繰り返すと早い
投げにくいときは中間エイトノットにビナをかけて登り、ピストンすることもある
ツインやダブルで2人引き上げもある
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B3 ラストが登る |
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末端にハーネスを結び、上から確保するのを基本とする
ロープを残して上から回収すると、万一ひっかかったときに危険
余ったロープを上から引き上げ、いっぱいになったら上で確保の準備をし、それからラストが登る
ATCガイド、ルベルソなどが便利である
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ATCガイド(青いテープはヌンチャクのなごりで、関係ない) |
B4 支点 |
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木や枝にタイオフ、岩にスリングをかける
カム、ハーケン、ボルト
引かれる方向が重要。方向制限にカムは手軽
心配ならバックアップ
ハーケンを設置・回収するのにワイヤーループ、ハンマーにひもとビナ がついているとよい
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大岩にスリング
ばたつかないよう、結んである |
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左側がひっかかりがやや悪いので、カムで引いて動かないようにした |
B5 荷上げ |
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空身で登ってザックを引き上げることもある
ただ引っ張るのは非常に疲れる。確保器やアッセンダー、ビナでの折り返しで力をセーブ
短い段差では1/2システムが簡単
ビナ断面形状で抵抗がずいぶん違う
プーリーを使うとよい |
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C アクシデント対応 |
すいすい行くとは限りません。そのときにどうするか。 |
C1 リード墜落を止める |
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グラウンドフォールが心配なときはロープの繰り出しを最短にする。
体重差の影響が大きいことは実感しました
後に支点を取らないときは岩に近づいた方が安全(落石注意)
手袋(綿混か皮)
クリップする直前に落ちるのが墜落距離が大きい
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C2 ロワーダウン、トップロープ |
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墜落して、下ろした方が早ければそのままビレイをゆるめて下ろす(ロワーダウン)。ロープを張りながら登ればトップロープ状態と同じだ。
アクシデントでなくても使える技術だが、支点はカラビナで。スリングは切れる。プーリーは流れすぎる |
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C3 自己脱出 |
フォローでもリードでもありうる。懸垂下降からも |
ロープとアッセンダー(スリング)の相性が重要
体重も
出発前に、メインロープ径、各自の持つアッセンダー・スリングを確認すること。
9mm未満なら5mmスリングが利かないこともあるので、4mmも準備するとよい(静加重のみ)
芯抜きのプルージック用スリングを作る人もいる。
ハーネスと足用と2つがよい。スリングの長さで操作性が変わる
デイジーチェーン有効 |
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C4 懸垂下降の仮固定 |
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ひと(ふた)ひねり+ぐるぐる巻き+はさんでビナ留め
何回かやることがわかっていれば、エイト環を高めにセットして下にプルージックというのも
崖上からアプローチして断面観察にも使える?
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C5 懸垂下降から自己脱出 |
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仮固定+プルージック
メイン2本で太くなるが、必ずしも太いスリングでOKとは限らない
アッセンダーも使える??? |
D その他 |
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ヒル
虫除けスプレーで落ちる、ストッキングが有効だそうだ
大水は怖い。岩っぽい沢は出水が早い
ロープのまとめ方
アルパインコイルとマウンテニーアズコイル。振り分けが楽だしキンクしないが、絡む。
インクノット、エイトノット はぜひすいすいできるように覚えて
続「生と死の分岐点」は実例がたくさん。事故例、ロープなど耐久性についてわかりやすい |