7フィートハーシェル鏡の複製(7)


 ピッチの固さの調節とピッチ盤作りで意外に難航して'04年9月中旬に入ってようやくピッチ研磨が開始しました。はじめはピッチ盤との密着を良くするために計画より多少軟らかめのピッチ盤を使用してみました。軟らかめといってもガラス鏡研磨では普通の固さです。ベンガラもごく薄いものを使用しましたが、研磨が進行するとともに傷(スリーク)が多数発生した上、双曲線的な鏡面になっていくため、これを修正しようと研磨を続けると最終的にレモンピール状の汚れた鏡面になっていくことが分かりました。今回のレモンピールは試作品のときに無数に生じていたピンホール周辺の凹みととは異なり、鏡面を肉眼で見てもほとんど分からない程度の不規則面ですが、フーコーテストではかなり汚い感じに見えます。これを写真に撮ってみるとかなりひどい散光が生じていることが分かります。それで、砂擂りに戻って再研磨をすることにしました。
 続いて2面のうちの他の鏡材のピッチ研磨を同じピッチ盤で行ってみました。今度は少し濃いめのベンガラを使用してみると、研磨時間が短縮されて早く金属面が得られますがレモンピール状の不規則面も早々と発生します。ただ、スリークは減少したようで、ベンガラが少なくなったときにスリークができることも分かってきました。しかし、レモンピール状の不規則面のためにこれも砂擂りへ戻ることになりました。
 ここで鏡材の厚さが18mmのものをA面、16mmのものをB面と名づけて、A面・B面を交互に研磨して、一方がある程度良い面として出来上がれば他方をそれ以上の製品となるように研磨していくことをくり返すことによって、より完成度の高い鏡面を目指す方針をとることにしました。
 A面は3回目(2度目の再研磨)のピッチ研磨で、レモンピール状の不規則面はかなりひどいもののマズマズという面が出来上がりました。一応これを確保しておき、B面をこれより良好な面に研磨することに専念しました。B面では砂擂りへ戻っては繰り返し再研磨を行うものの,スリークやレモンピールあるいは全面一様な研磨面が得られないなどの失敗を重ねて、7回目の再研磨でようやくある程度良好と思える面に到達しました。しかし、これももう少し完成度を高めてパラボラ化しようと思ったのが失敗のもとになりました。固めのピッチ盤のためと思われますが、パラボラ化のためのオーバーハング法(横ずらし法ともいう)の研磨をわずか2分間行っただけで、ターンダウンを作ってしまいました。恐らく、中央が強く研磨されてやや平滑なまま球面半径を短縮させ、周辺部が相対的に半径を長くしてしまったのではないかと考えられます。
しかし、これら2面を一応望遠鏡に組み込んで天体の像を観察することにしました。

日本ハーシェル協会ニューズレター第135号より転載


7フィートハーシェル鏡の複製(8)

協会と協会員の活動トップにもどる

日本ハーシェル協会ホームページ