今日の一枚    第6回〜第10回

 第6回
●アントニン・ドヴォルザーク
 交響曲第8番ト長調Op.88 B163
 交響曲第4番ニ短調Op.13 B41

 ヴァツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
 *DENON=Supraphon:COCO-7625(国内盤) =交響曲全集(COCO-7621〜6)

 ドヴォルザークの交響曲は第7番〜第9番については頻繁に演奏され、CD化もされるのですが、それより前の交響曲は日本で演奏される機会があまりありません。ごくたまに第1番(「ズロニツェの鐘」とよばれている)や第5番あたりが演奏されたことがあったと思いますが、なかなか耳にすることがないですね。でも、演奏されることがないからといってつまんないかというとさにあらず。ドヴォルザークの交響曲はいずれも曲の構成もしっかりしていて、相変わらず明快にハキハキと音を鳴らせています。聴いているとこちらが元気になってくる気がします。
 ところで今回注目の曲は、交響曲第4番です。あまり注目されることがない曲ではありますが、この曲から後期の交響曲にみられるドヴォルザークの個性的な作風が顕著にあらわれてくるようになります。終楽章の最後の盛り上がりもエネルギッシュな高揚感があり、前向きに前向きにと進んでいくかのような印象を強く受けます。
(2000.12.08)
 第7回
●Vitezslav Novák
 In the Tatra mountains Op.26
 Eternal longing Op.33
 Slovak Suite Op.32

 Libor Pesek/Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
 *Virgin:7243 5 45251 2 4

 ドヴォルザークの弟子のノヴァークの管弦楽作品集です。この方は、ブルックナーの交響曲の校訂版で有名なノヴァークとは別人です。聴いてみてつくづく思うのですが、ドヴォルザークの弟子でも作風はかなり違っています。どちらかというとロマン派に近いかな。このアルバムに収められている曲はいずれもおとなしめの曲ですが、3つ目のスロヴァーク組曲は、ハープも登場すればオルガンまで使いよるという贅沢な作品です。非常にロマンティック。3曲目なんかは特に輪をかけてロマンティック(「愛するものたち」なんてタイトルがついているぐらいだから当然か)で聴きごたえ充分。これからのクリスマス・シーズンを静かに過ごすBGMとしても最高です。是非、お試しあれ。
(2000.12.13)
 第8回
ラフマニノフ
 交響曲第2番ホ短調 Op.27(完全全曲版)

スクリアビン
 法悦の詩(交響曲第4番)Op.54

 ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団
 *BMG:BVCC-38057(国内盤)

 今回はラフマニノフの交響曲第2番です。この曲はアンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団のものが名演として知られていますが、ラフマニノフとも親交のあったオーマンディによる演奏もなかなか捨てがたい魅力があります。オーマンディ&フィラデルフィアのコンビによる同曲の演奏はCBS盤と今回のRCA盤の2種類ありますが、CBS盤は第1楽章と第4楽章でかなりカットされている部分があるのが難点ですが、演奏に関しては文句なく素晴らしい出来です。今回取り上げたRCA盤の方はカットなしの全曲演奏を行っていますが、CBS盤と比べると音質の悪さも手伝ってか多少ぎこちなさと音の硬さが目立ち、今一歩の出来となってしまっています(CBSの方は1959年録音で、1973年録音のRCA盤よりも1959年録音のCBS盤の方が何故か音質が良い)。また、妙に音の分離が良すぎるのでかえって不自然に聞こえてしまうところもあったりします。オーマンディ・ファンの私としては、彼のラフマニノフにかなり期待していたのですが非常に残念でした。やはり、完全全曲版はプレヴィン/LSOに軍配が上がってしまいますね。
(2000.12.19)
 第9回
Erich Wolfgang Korngold
 Symphony in F Sharp Op.40
 Much Ado About Nothing − Suite for Chamber Orchestra Op.11

 Andre Previn/London Symphony Orchestra
*DG: 453 436-2

 20世紀前半のアメリカ映画音楽の分野で一時代を築いたコルンゴルトの交響曲です。ユダヤ人であった彼は、ナチスの台頭によって祖国オーストリアを追われ、アメリカに移住してからは映画音楽作曲家として生計を立てて行くことになりましたが、もともと純クラシックの作曲家で、幼い頃から神童としてウィーンの音楽界を沸かせていたそうです。彼の交響曲は基本的に後期ロマン派に属する作風ですが、映画音楽で培われた多彩な表現もその中に盛りこまれています。中でも第3楽章は後期ロマン派的傾向が色濃く映し出されていて、マーラーやシェーンベルクを彷彿とさせ、リムスキー=コルサコフ風の旋律も垣間見られます。また、第4楽章は第1〜第3楽章の主要動機を随所に散りばめつつ、少々暗めな叙情性をちらつかせながらも全体としては勝達とした活気あふれる曲にしあがっています。プレヴィン/LSOの演奏も抜群の出来です!
(2000.12.20)
 第10回
Uuno Klami
 Symphonie enfantine Op.17
 Hommageà Haendel for piano and strings Op.21
 Sarja jousiorkesterille(Suite for String Orchestra)
 Sarja pienelle orkesterille(Suite for Small Orchestra) Op.37

 Jean Jacques Kantorow/Tapiola Sinfonietta
 Timo Koskinen(p)
*BIS: CD-806

 ウーノ・クラミはシベリウス後のフィンランドを代表する作曲家の一人で、2000年は彼の生誕100年にあたる年だったのですが、あまり注目されることもなかったかわいそうな人物です。彼の作品はパリに留学した時に影響を受けた印象派と新古典派の作風によって彩られています。代表作の「カレワラ組曲」はストラヴィンスキー調の新古典派的作風で、組曲「海の情景」は印象派的です。作品によって使い分けがされているわけですね。今回紹介しましたCDは印象派的な作風が色濃いものを集めた作品集です。特にお薦めなのが1曲目の「子どもの交響曲」という作品。第1楽章の初っ端から素朴で美しい旋律を聴かせてくれます。2曲目のピアノと弦楽オーケストラによる「ヘンデルへのオマージュ」も一聴の価値ある名品です。4楽章のピアノによる目くるめく速いタッチのフレーズには耳を奪われます。全編を通じて小編成のオーケストラならではの雰囲気を漂わせたGoodなアルバムです。
(2000.12.27)

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