今日の一枚    第1回〜第5回

 第1回
●Heitor Villa-Lobos
 Complete Music for Solo Guiter

 Norbert Kraft(g)
 *NAXOS: 8.553987

 渋谷HMVで1曲目のショーロス第1番を聴いて、衝動買いしてしまいました。ヴィラ=ロボスの曲はメランコリックな魅力があり、バッキアーナス・ブラジレイラスもさることながらギター曲もよい作品が多い。しかし、私が持っているCDは演奏がいまいちで、この魅力を充分に生かしきれていないのではと思っていました。ところが、ノルベルト・クラフトのギターを聴いたところ、これまでの演奏とはちと違った良さが感じられました。特にショーロスで、クラフトが奏でるフォルテがなかなかにインパクトがあって良かったですね。
(2000.11.16)
 第2回
●チャールズ・アイヴズ
 交響曲第2番
 交響曲第3番“キャンプ・ミーティング”

 マイケル・ティルソン・トーマス/コンセルトヘボウ管弦楽団
 *SONY Classical: SRCR 8519(国内盤)

 じつは、25日のオフ会でちらっとアイヴスの名前が出てきたので、久々に引っ張り出して聴いてみました。彼は生命保険会社のビジネスマンを本業とする日曜作曲家ではありますが、本業の合間に作曲をしたとは思えないほど完成度の高い作品を残しています。
 アイヴスの交響曲の中では、アメリカのコネティカット州の民謡や愛国歌などがふんだんに使われている交響曲第2番がもっともメジャーで面白いのではないかと思います。私はアイヴスの作品の中でアメリカ的色彩の色濃いこの曲が1番好きですね。ティルソン=トーマス/コンセルトヘボウoの演奏は、威勢が良くはきはきとした明るい演奏で、この曲の代表的な名演といえるでしょう。この他に初演者のバーンスタイン/ニューヨーク・フィルの演奏や、最近ではNAXOSからシャーマーホーン/ナッシュヴィルsoの演奏などが出て、わりとアイヴスの曲も入手しやすくなりました。
(2000.11.27)
 第3回
●Antonín Dvorák
 String Quartet No.9&Terzetto

 Vlach Quartet Prague
 *NAXOS:8.553373
 
 ナクソスのドヴォルザーク室内楽チクルスのうちの1枚で、このシリーズはヴラフ四重奏団が演奏を行っています。このヴラフ四重奏団はプラハを本拠として活躍するチェコの代表的な弦楽四重奏団で、演奏がすこぶるうまい。まず、彼らの演奏は安心して聴いていられる類の演奏です。いまのメンバーは、昔のメンバーがどっしりとした線の太い演奏をしていたのに比べて、わりとライトな音の響きをさせています。それでも、ドヴォルザーク特有のメリハリを利かせた明快さは新旧ともに共通しています。
 今回挙げたアルバムのなかで弦楽四重奏曲第9番は、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲の中でも私が最も好きな曲です。哀愁を漂わせつつも力強い骨太な曲といえると思います。ドヴォルザークの室内楽というと弦楽四重奏曲第12番(俗にアメリカと呼ばれている曲)とピアノ五重奏曲が有名ですが、この他の曲もドヴォルザークらしく民謡の旋律をさりげなく挿入させていたりして、非常にわかりやすく聴きやすく作られています。彼は、後期ロマン派へ至る時期に、音を重層的に響かせることに重点を置くポリフォニックな作風とは一線を画し、一本の芯となる旋律を強調することにより、曲を明確に描くモノフォニックな傾向の強い作曲家で、このことが彼の曲がわかりやすいことの所以でしょう。
 じつは、この演奏以外にさらに名演といえるものがあるのですが、これがスメタナ四重奏団による1963年の録音(Supraphon)だったりします。曲の明快さ、力強さではこの盤が上をいっています。第1楽章はどは緊迫感のあるなかなかすごい演奏です。とりあえず、入手しやすい名演としてNAXOS盤をあげておきますが、もし機会があれば、このSupraphon盤も聴かれるといいですよ。
(2000.11.28)
 第4回
●Johannes Brahms
 【CD1】 Symphony No.1, Academic Overture, Tragic Overture
 【CD2】 Symphony No.2, Variations on a Theme by Haydn

 Daniel Barenboim/Chicago Symphony Orchestra
 *TELDEC: 8573-82128-2

 2枚組のうち、1枚目の交響曲第1番が今回のメインです。バレンボイムは、最近またブレイクしている細君であったデュ・プレとは違い、一般にあまり評価の高い指揮者ではありません。かくいう私も、この指揮者のこと好きじゃあなかったんですよね。以前にバイロイトで「ニーベルンゲンの指環」を彼が振ったときの演奏がすこぶるよろしくなかったので、バレンボイムの私の中での評価はだいぶ下がり気味だったのですが、ひょんなことから彼がCSOと入れたマーラーの交響曲第5番(TELDEC)を聴いて以来、割といい演奏をするんだなあと見直すようになりました。
 さて、ブラームスの交響曲第1番についてですが、どっしりとした骨太な演奏です。バレンボイムは、かなり昔から自分のことをフルトヴェングラーの弟子と称していましたが、この演奏を聴いていると、基本線はフルトヴェングラーに倣っていることがありありとわかります。しかし、フルトヴェングラーほどにはテンポを大きく揺らせたり、ティンパニ低弦をごうごううならせたりすることはありません。それでも第4楽章は燃えていたようで、クライマックスへ向けての盛り上がりはかなり熱っぽく力が入っていました。大学祝典序曲や悲劇的序曲もイイ線いっています。
(2000.11.29)
 第5回
●Joulun ihmemaa (Christmas Wonderland)
 Osmo Vänskä/Lahti Symphony Orchestra & Laulupuu Choir of Lahti
 *BIS: CD-947

 このアルバムは、シベリウスを筆頭としたフィンランドの作曲家をメインとしたクリスマスにちなんだ曲を集めたものです。毎年12月に入ると、「しんぐる・べ〜、じんぐる・べ〜」という耳にたこが出来るほど聴かされつづけ、俗っぽいイメージが定着してしまったクリスマス・ソングを耳にする機会が多くなってきます。この「Joulun ihmemaa」というアルバムは、非常に多様なクリスマスの情景が描かれています。もちろん、この中には世界的に有名なフェリクス・バーナードの「ウィンター・ワンダーランド」やルロイ・アンダーソンの「橇乗り」、「クリスマスの星」などの曲も含まれています。しかし、一般に出まわっているクリスマス・ソング集とは雰囲気が異なって、単に陽気であるだけではなく、ある時には静謐に、またある時にはメランコリックな郷愁を誘い、またまたある時には力強くというように一本調子ではないところが良い。軽快でありながらも叙情性を感じさせるところが心憎い演出である。
 オズモ・ヴァンスカ/ラハティ交響楽団とラウルプー合唱団の演奏もすばらしい。特にラウルプー合唱団(少年少女合唱団)の歌声は、ウィーン少年合唱団に勝るとも劣らない可憐な歌唱を聴かせてくれます。
(2000.12.04)
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