仮面ライダーSPIRITS
 
1号編 摩天楼の疾風(かぜ)

エピソード紹介

 現代のニューヨーク。被害者が体液の大半を失っている奇怪な連続殺人事件、ハーレムで多発する失踪事件、そして巨大な怪鳥の目撃記録などの怪異が相次ぐ。FBIに戻ったものの、事情を知りすぎたために閑職に追いやられている滝和也は、シニカルな態度で事件を公表しようとしないFBIを批判する。
「いいんですかね、そんな手まわしの悪いことやってて…この国に仮面ライダーはいないんだぜ」
 周囲は、無償で戦う仮面の戦士の存在など作り話と一笑に付す。

 ハーレムに見回りに出る滝。「仮面ライダー」の活躍を語る滝はハーレムの子供達の人気者である。滝が演じてみせるライダーの技に無邪気に喜ぶ子供達。そして滝は思いを馳せる。
(戦友よ……お前は今、どこで戦ってる……)
 そんな滝にリーダー格の少年、スパイクが言う。
「あのスンゲェ空手といい、そうやってバイクにまたがって現れるところといい、仮面ライダーってさ、タキさんの事じゃねぇの?」

 夜になり、滝はハーレムの無人教会に新しく赴任した神父を訪ねる。昼間、神父はホームレスの人々を招いていたが、滝が訪れたときには彼らの姿はなく、神父は皆は食事をすませて帰ったと言う。その教会の天井には無数のコウモリの影が…。

 そして再びハーレムで吸血鬼出現の報がもたらされる。襲われた子供達はそれでも仮面ライダーを信じる。
「なんでライダーは助けに来てくれないんだよお!!」
 FBIが包囲した吸血鬼、それはスパイクの変わり果てた姿だった。神父によってスパイクは怪人へと改造され、次第に人間の心さえも失われていく。凶暴化したスパイクに襲われながらも滝は必死で説得を続ける。
「昔…仮面ライダーって男がいた…!! あいつもお前みたいにクソどもに体をバケモン同然にされちまった…。けどなあ…あいつはそのゴリゴリした体で悪党と戦い続けたんだよ!!」
 僅かな理性と神父の指令との間で苦しむスパイクは、トレードマークの髑髏のバンダナを落として飛び去り、
滝はスパイクのバンダナを握りしめてひとつの決意を固める。

 神父と吸血鬼達がアジトとする教会に、バイクに乗った謎の男が扉を突き破って現れる。黒のライダースーツに髑髏のペイントのヘルメットの男は「仮面ライダー」を名乗った。弾薬付きのナックル、スタンガンを仕込んだブーツからライダーパンチ、ライダーキックを放ち、吸血鬼達をなぎ倒すライダー。
「カメンライダー…か。嫌な名前だ…。私の愛しい彼らを壊した男の名もそうでした」
 ショッカーの残党らしき神父の攻撃でヘルメットを割られると、その素顔は滝。正体を現したコウモリ怪人の神父に滝は太刀打ちできない。
「カメンライダー…だって…? どこが? ククク、あんな小さき者も救えずに…」
 コウモリ神父の手に捕らえられ、今まさにとどめを刺されようとする時。バイクのエンジン音が響き渡りサイクロン号のヘッドライトが彼らを照らし出す。
「スマンな……滝 遅くなった」
 あの本郷猛が帰ってきた。バイク上で仮面ライダーへと変身した本郷は、傷ついた滝へと歩み寄り、その肩に手を置いて言う。
「敵は多いな、滝… いや…大したことはないか… …今夜はお前と俺でダブルライダーだからな」

 ニューヨーク市街へと逃亡した神父と吸血鬼達を追って、仮面ライダーはサイクロンで摩天楼を駆け抜け、バイクアクションと必殺技で市街戦をくりひろげる。滝もまたアメリカンバイクで神父を追跡し、橋の欄干を駆け上がって空を飛ぶコウモリ神父に追いすがる。滝の上からのバイクアタック、下からの1号の電光ライダーキック、2人のライダーのコンビ技によって神父を粉砕。

 本郷が持ってきたワクチンによってスパイクは人間に戻り、歌手を目指してアマチュアナイトの舞台に立った。そして本郷は新たな戦いの始まりを告げて旅立って行く。


感想
 たまたま本屋で見かけた時にこの1話目のあたりをパラ見して、「へえ、村枝さんが『仮面ライダー』コミカライズかあ。…でもオリジナル?っていうか新作? 原作知らなくても読めそうだから買ってみるか」…というのが、私と『仮面ライダーSPIRITS』との出会いでした。自分にとっては第一期の仮面ライダーは生まれる前の番組ですし、これまで特撮番組にはほとんど興味がなく、仮面ライダーについての知識は、外見とキックが必殺技ということ、主題歌をなんとなく。(変身ポーズもちゃんと知っていた訳ではなかったかも)
 そんな訳で、本郷登場まではオリジナルの話と思って読み進めていた……というか、滝も当初は村枝オリジナルキャラかと思ったくらいで(ホプキンスの説明で脇キャラだったんだと認識致しましたが(汗))。
 現代版の『仮面ライダー』か〜と、斬新に思いながらなかなか面白く読み進み、普通の人間である滝が伝説となった仮面ライダーの魂を受け継いで戦う話と思っていたら(だって思うでしょ?!)満を持しての本郷の登場! カラー見開きでの変身シーン! ……痺れるほど感動しました。それに続く「お前と俺でダブルライダーだからな」のくだりにも。超人的な孤高のヒーローではなく普通の人間の視点に降りてきてくれた描き方に、「こういうヒーローものが見たかったんだよ!」と、ラストの滝と本郷のコンビ技まで一気に読ませてもらいました。
 また、摩天楼の中での戦闘シーンも、意外と都会的シチュエーションが格好良く決まっていて、現代版仮面ライダーとして魅せてくれたと思います。
 あ、滝のバイクは見比べた限り、また2話目で使っているノートPCがバイオというあたりからも、現代を感じさせるアイテムとして「ワルキューレ」っぽいのですが、特に記述はないし確証がないので、一旦エピソード紹介の文中に入れたのは消しました。知らない人に分かりにくいし。(※ワルキューレ:ホンダの1520ccバイク。F6エンジン積んでます。登場は96年だっけ?)
 初回ということで1話完結、また1号編というより実質的な主人公は滝ですが、単発で読むには完成度は随一のエピソードではないかと思います。



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