片瀬山 cafe & sweet C's Libre (シーズリーブル) げんばルポ

片瀬山の大通りに面したイートインカフェの現場の様子をご覧いただけます。 オリジナルのアイアンワーク、アンティーク家具、ドアなどを取り入れたレトロな建築です。 単に懐古趣味のパーツを集めるということでは無くオリジナルのデザインを行っています。

ヴォリュームスタディー

敷地は10%勾配幅員16mの道路に面しています。

通りから見たときのデザインを検討しました。 2階部分を張り出して強調する案に決定です。

ファサードスタディー1

正面となる部分のデザインと色使い等の検討です。

白をベースに黒の要素を配したデザインとなりました。

ファサードスタディー2

正面の色使いについて再検討です。

白の要素を多くして1階部分には緩やかなバリヤとなるアイアンワークの鉄扉を付けることとなりました。

歩行者に対するアピール

歩道を歩いてくる人の目線の検討です。

歩道から見ると正面より側面が目立つことがわかります。 2階側面の窓を奥に伸ばしてアイキャッチとすることにしました。

雨樋もデザインの邪魔となるので内樋に変更です。

アイアンワークファサードのスタディー

アイアンワークの鉄扉デザインの検討です。

「直線的な枝」「曲線を描く枝」「樹木と大地よりの芽吹き」と3つのパターンをエスキスしました。

「樹木と大地よりの芽吹き」に決定です。

アンティークサイドボード

クライアントが選んだアンティークのサイドボードをキヤアンティークスに確認しに行きました。インテリアデザインの重要な要素となります。

このサイドボードを核としてデザインを広げていきます。

根伐り(ねぎり)

基礎の形状に地面を掘っていきます。

今回は地盤調査のセカンドオピニオンにより改良工事は不要ということになり地盤保証を付けて改良無しで進めることとなりました。

地盤改良というと良い面ばかりがうたわれていますがもし将来土地を売却する事になった場合地盤改良材が地中埋設物となり撤去のためにかなりの費用が発生することも考えられます。

少しでも怪しければ地盤改良という風潮には疑問を感じます。

配筋

基礎の配筋が終了しました。検査も済んでコンクリートの打設を待っています。

鉄筋はあらかた工場で加工してきますが細かい調整など現場での加工も発生します。 そんなときに使う鉄筋曲げ機です。 スイッチを入れるとローラーが動いてグニュっと一瞬で曲がります。

基礎梁の型枠とアンカーボルト

べた基礎の立ち上がり部分の型枠が組み上がりました。

コンクリートの打設前に上部構造と基礎をつなぐアンカーボルトを所定の位置にセットします。一本一本種類と位置を確認しました。

土台

コンクリートの基礎の上に木の構造の一番初めとなる土台を敷き込みました。

地震や台風の時に力が集中する部分には「ダブル壁」を採用し強度を確保しています。 逃げの寸法があまりないので慎重に施工してもらいます。

屋根の材料

屋根に使う鈑金材の色を決めます。

この家では出来てしまうとほとんど目にすることはありませんがわずか見えるに縁の部分と外壁とのバランス。夏の太陽からのエネルギーを出来るだけ反射できるようにギングロを選びました。

空中に跳ね出した床

階の床の一部は1階より飛び出ています。1階より2階の方が大きいのです。 そしてその飛び出た部分の下には柱がありません。 空中に浮いた状態で成立するように設計してあります。

これには理由が2つ。 1つは下部の構造を自由に考える事ができること。 もう一つは建築確認申請上の理由です。

木造住宅の柱に鉄骨があると混構造とみなされ鉄骨造としても手続きが必要になる。 木の柱が鉄に置き換わるだけで鉛直荷重のみを受け持つ設計なのに決まりなのでダメだそうです。これを避けるための策でもあります。

内樋

屋根の傾斜が正面側に向かっています。 雨水がこちらへ向かって流れてきますので通常は軒先に雨樋が出て来てしまいます。

デザイン上雨樋は出したくないので屋根の先端側に内樋を作ります。小さい樋だとつまりや漏水の心配がありますので大きい樋を作ります。 屋根にバルコニーがあるような感じです。

それにしても屋根の上は気持ちがいいです。地上よりわずか10メートル足らずですが景色が全く違うんです。

二重屋根

屋根の下地は空気層を2重に作ります。

外部に面する場所(屋根や外壁)は内部との気温差が大きいのでその場所の湿度が大きかったり空気の動きがないと結露の危険があります。

外壁では通気層を作る仕様が一般的ですが屋根にも同じような通気層を設けます。写真の緑の部分が一重目でその上の合板部分が二重目となりその隙間が通気槽になります。

内樋防水

内樋の防水層をFRPで作りました。

ガラス繊維で強化された樹脂層で船のようなものです。 水がたまってプールになっても大丈夫なように作りました。

網目状の部分が雨水排水口ですが万が一ここが詰まったときはどうするか。その横にある穴がオーバーフロー管となっていますのでそこから排水される仕掛けです。外から見てここから雨水が出て来たら本管が詰まっているかもしれないので要チェックです。

ユニークな金物

地震や台風の時などに木造部分をコンクリートの基礎にしっかりと留めつけるホールダウン金物です。

いろいろな種類がありますがこの金物はヒゲのおじいさんのように見えなくもない。 実直なおじいさんがボルトを抱えてもしもに備える。よろしくお願いいたします。

白アリのバリア

木造の建物は白アリの攻撃があることを前提に考えます。

化学的な薬品を使うことが多いのですが今回は「ホウ酸」を使うことにしました。 「アリ」といっていますが実は白アリはゴキブリに近い生物です。 ゴキブリ駆除で使った事がある方もいるかと思いますがホウ酸には白アリ(ゴキブリ)を寄せ付けない力があり安全性も期待できます。

現場では雨に濡らさないようにする必要があり少々面倒ですが採用しました。

通常は地上1m程度の高さまでのみの施工ですがカンザイシロアリにも対応できるよう屋根まで全ての構造材と主な下地材にホウ酸溶液を噴霧しました。

コストは少々かかりますがシロアリに対する1つの回答ではないかと思っています。

中間検査

木の骨組とその留め付け金物工事が終わった段階で中間検査を受けます。

最近は民間の機関で受けることも多いのですが風致地区の手続きなどもありましたので市役所にお願いしました。

検査官2人でかなり細かい部分までチェックが入りましたが無事パスとなりました。

壁を貫通するパイプ

換気扇や吸気口など外壁を貫通して設置される設備があります。

木造の場合は一定の間隔で下地(間柱)が入りますがデザイン上、丁度その場所に設置したいことが良くあるんです。そんなときは大工さんにお願いして間柱を切り欠き補強してもらいデザインした位置に取り付けられるようにしてもらいます。

出来上がってしまうとその苦労は見えませんが頑張ってくれました。

階段室

住宅の中を縦に貫く空間です。

段板が施工される前ですので小屋裏から1階まで望むことが出来ます。

電線の滝

分電盤(ブレーカー)が付く場所に家中の電線が集まって来てまるで滝のようです。

どの線がどこに行っているのか電気屋さんはわかるんです。 よく見ると秘密の記号が書かれています。

天井埋め込みのエアコン

壁掛けタイプのエアコンはデザイン上邪魔になる事があります。

そこで今回は「天カセ」と呼ばれる天井埋め込みタイプのエアコンを採用しました。

冷媒管やドレーン管などの配管類も当然天井や壁などの中に隠します。

天井からの光り

天井の下地ボードの一部が張られました。

そこに開けられたトップライトからの光りがまぶしいです。

グラスウール

壁の断熱材グラスウールがきれいに張られました。

経験上、断熱材を上手に張る大工さんは他の仕事も丁寧なことが多いです。

鉄骨の柱

外部に露出する鉄骨の柱です。

熱々に溶けた亜鉛のプールにくぐらせてメッキを施してあります。 時間が経つとくすんだ灰色に変化しますが出来たてなのでピカピカです。

このままでも沿岸地域でも使えるような防錆性能を持っていますが今回はこの上にさらに塗装を施す予定です。

木の丸柱

玄関ホールに露出する木の丸柱です。

カウンターを貫通するようにデザインしてあります。

大工さんがピッタリと納めてくれました。

階段室の天井

室内階段は踊り場部分にも段がある回り階段です。

段の裏側(下の階の天井)部分をどの様に仕上げていくか悩みますが大工さんと現場で細かく打ち合わせして階段がそのまま裏返しになったようなデザインになるよう納めてもらいました。

外壁左官の下地

外壁は左官仕上げとなります。

モルタルを塗る前に波形の金網を張り付けます。 すきまにモルタルが入り込んでガッチリ食いつきます。

ブラッククロス

店舗用トイレの壁紙をダマスク柄のブラッククロスとしました。

単純に黒いだけでなく光沢の違いで柄を表現している面白いクロスです。 見る方向によって表情が変わります。

アーチの出入り口

店舗用トイレにむかう途中にアーチ状の開口部があります。

主に直線を使ったデザインの中のアクセントとなります。

アイアンブラック

鉄部の塗装は特殊な塗料を使います。 アイアンワークの表面の様な風合いを出すために金属粉の入った塗料です。

塗り上がりはマットなブラックですが使い込むと渋く光ってくるようで経年変化が楽しみです。

鉄扉のレール

1階正面にシャッターや手摺の実用的要素とデザインの要素を併せ持つアイアンワークの鉄扉を設置します。

巾2m、高さ3m、重量100kgの引き戸となりますので吊り戸として作ります。 吊り戸にすれば少ない力で楽に動かすことができるんです。

その扉の下ががバタバタと動かないようレールに沿って動くようにします。耐久性を考慮してステンレスで作ります。

ラフパターン

外壁の左官仕上げをラフパターン(ビードロ)としました。

近くで見るとかなりラフに思いますが遠景ではいい感じです。 設計のイメージとピッタリです。

鉄工所

ファサード鉄扉の加工の打合せをしに鉄工所まで出かけました。

有機的な形のパーツがどのように作られていくかご紹介します。

まずiPadにスタイラスペンでスケッチしてその手書きの曲線をデジタルデータとしてCADに落とし込みます。寸法や各部の調整を行った後にポストスクリプトのデータに変換して加工業者さんにメールで送ります。厚さ約1cmの鉄板からレーザーカッターで切り出してもらいました。

手書きの曲線がそのまま再現されていてちょっと感動です。

それぞれの部品を溶接して組み立ててもらうのですが位置決めが難しいので大判プリンターを使って原寸大の型紙を打ち出しました。

それをもとにして組み立てをしてもらえばイメージ通りに出来上がります。

アルミサッシに押されて最近では作ることも少なくなったスチールサッシも作ってもらいます。スレンダーで鋼材のエッジを効かせたデザインをすることができます。

気密性や断熱性、使い勝手やメンテナンス性はアルミサッシには及びませんが雰囲気はピカイチです。

手摺

前回作ってもらった芽吹きのパーツをコンクリートの床に設置しました。

デザインの要素でもありますが転落防止の手摺も兼ねています。

スタッコ

店舗の内壁はスタッコ(漆喰)仕上げです。

外壁の左官の表情とは反対にわずかなコテ跡だけを出すシンプルな仕上げとしてもらいました。塗ったばかりでテカリがありますが時間が経つとしっとりと落ち着いてきます。

スチールサッシ

鉄工所で作ってもらったスチールサッシを建物に取付て塗装し周辺のすきまをシールします。

シールするところが多いので職人さんには苦労をかけました。

アンティークドア

以前にクライアントとキヤアンティークスで選んだステンドグラス入りのアンティークドアを取り付けてもらいました。

店舗とバックルームの境界となります。押しても引いても開け閉めできるグラビティーヒンジという丁番でつり込んでもらいました。

このままでもそれなりに良い雰囲気はありますが後で壁面と同じ色で塗装をしてもらいます。押板も陶器製のアンティークです。

大工さんの作った枠とドアの寸法が微妙に違うので建具屋さんに調整してもらっています。

石貼りのパターン

エントランスピロティーの床には大小様々な寸法の石材を張ります。

どの様に貼っていくか職人さんとパターンの打合せをしました。

キッチンのタイル

最近のキッチンの壁はお手入れが楽ということからキッチンパネルを使う事が多いのですがこちらではタイルを貼りました。

揺らぎのある釉薬のかかった色幅のあるタイルです。質感があっていい感じです。

石割り付けと手摺

ピロティー床の石貼りが進んでいます。

スチールの手摺もタイルから芽吹いているようでイメージ通りです。

アンティーク硝子とスチールサッシ

スチールサッシにガラスが入りました。

開閉調整器や引き寄せハンドルなどもアイアンワークのものを使って雰囲気を壊さないように注意します。

懐かしさを感じさせながらもオリジナルデザインのサッシとすることができました。

ガラスは表面に揺らぎのあるアンティークガラスです。

店舗厨房

業務用のキッチンなどもセットされて店舗の厨房が出来つつあります。

こちらは実用性を重視したデザインになっています。

トイレの手洗い

人造大理石のカウンターを曲線加工し手洗い器と一体化させます。

タイルはガラスモザイク、スイッチはトグルスイッチとしました。

芝生の駐車場

建物脇には芝生の駐車場を作ります。

芝生に直に車を乗せると痛んでしまうので縁石を並べてその間に芝生を植えてもらいます。

ファサードの鉄扉

アイアンワークの鉄扉がつり込まれました。

お店がオープンしているときには右側に引き込まれて芽吹きの手摺だけが残ります。

クローズしているときは鉄扉がスライドしてきて芽吹きの手摺と一致して全体のデザインが完成する仕掛けです。

スチール階段

ピロティーから2階に上がる階段はデザインの要でもあります。

ギザギザと折れ曲がりを繰り返す側板にハードウッドの段板のみを仕込んだストリップ階段です。

段板には表も裏も木の表情とする為にちょっとした仕掛けがしてあるのですがこの加工が大変だったようで大工さんは工作機械を2台駄目にしたと嘆いていました。

お陰様で思っていたとおりの階段が出来ました。ありがとうございます。

シャンデリア

アンティークのカップボードとシャンデリアが入り ケーキ用のディスプレイ冷蔵庫もセットされちょっとお店らしくなってきました。

サインプレート

お店のサインプレートです。

こちらもスチールプレートをレーザーカットして作りました。

こんな感じに壁からすこし浮かせて取り付けます。

Rの手摺

手摺の一部はR加工したスチールパイプです。

圧迫感を無くしつつ機能は持たせるデザインとしています。

アプローチ

歩道と駐車場からエントランスまでは黒いピンコロ石を敷きつめました。

アスファルトでは少々味気ないですがこれだけでずいぶん感じが変わります。

可変棚

店舗のディスプレイ用棚は可動、角度可変としディスプレイする商品によって位置、角度ともに自由に調整可能です。

棚受け金物はしっくい壁と同じく白色のレールを壁の内部に埋め込んで目立たないようにして棚板だけが浮かんでいるようなデザインです。

植栽

最後の仕上げとしてガーデナーに植栽をお願いしました。 建築には植栽の力も大きく影響してきます。

皆様のおかげで良い建物になりました。 現場監督さんをはじめ尽力くださった方々に感謝いたします。

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