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27/Mar Lancaster, Bowland Forest, Peak District

1.27/Mar
(1)Lancaster Castle

27/Marchの行程
三日目.最終日だが,昨日から怪しかった天気は本格的に雨になり,気温もぐっと下がってしまった.まあ,雨の降らない泊まりツーリングは日本でもあり得なかったので,天気の不安定なことが有名なここイギリスに来て日本以上のものを期待する方が不自然である,と思いつつもしぶしぶ合羽と靴カバー,荷物にはザックカバーをつけていわゆるフル装備.やはりこれは必要だったか.朝飯が8時30分スタートだったのと,荷物の整理と雨具の装着に手間取り,出発は9時30分になってしまった.しかも雨.かなり冴えない最終日のスタートとなった.A6を南下して,Bowland Forestの入り口,Lancasterを目指す.雨が激しいので速度の速いM道路は使わなかった.


遠くに見えるあの建物は気になった

Lancasterの街並み
Lancasterに着くと,さすがに歴史深い街並み.街に入るや否や,あっちに城,こっちに変なでっかい建物と,いろいろ興味深いものが現れてきた.危険な夜のPeak Districtを走る事だけは避けたいため,Lancasterについては単にさっさと通過するだけの予定であったのだが,こうもいろいろ見せられるとかなわん.急遽,この目立つ城だけでも見ていくことにした.なんとかなるだろ.


Lancaster Castle
果たしてそのLancaster Castleだが,入ってみるとガイド付きのツアーに参加しなければならず,30分程も待つ羽目になった.時間ないのになあ.いよいよ暗闇のしかも雨のPeak District強制走破の危険性が高まってくる.そんなの命がけだ.また,写真撮影も不可とのこと.残念.ツアーが始まる前にいろいろな説明パネルを眺め回していたが,とにかくここは昔から裁判所・監獄として機能していたようで,19世紀末までは実際に使用されていたらしい.また,中世のころは有名な魔女狩りで捕らえられたかわいそうな人たちの裁判や処刑も実施されていたり,その他 多くの罪人を処刑したりオーストラリアに流刑したりしていたそうな.ただ,面白かったのは,当時,容疑者として拘置されていた人たちの中で裕福なものは,一定のお金を払うことでこの監獄の中でもとても普通かそれ以上の待遇を受けることができたとすること.個室に使用人までつけることが出来たそうな.パネルにはそういう金持ち容疑者がみんなでトランプをやって遊ぶ様子を描いた絵もある.まるでホテル住まいのようだったとある.ガイドツアーが始まると,そうした裁判所,牢獄,死刑執行の道具,手かせ,足かせの道具などを見ることが出来て,それなりに興味深いのだが,まず,英語によるガイドなので,はっきりいって内容はよく聞き取れなかった..残念..ガイドのおっさんももうちょっとゆっくりしゃべってくれりゃあいいものを,完全に遠慮なし.しかも,ガイド歴何年か知らんが,妙にこなれた若干謡うような節回しでしゃべるのでこっちはさっぱりわからん.さりとて城内にある説明パネルは少ないのでよくわからないままツアーは終わってしまった..もっと英語力が必要だなあと実感してしまった.

なんとなく消化不良のまま,Lancaster Castleの見学は終了.このときすでに12時半.いかんいかん,早いこと行かねばと若干あせりつつ,Lancasterを後にし,Bowland Forestの入り口を探す.

(2)Bowland Forest
Bowland Forestに続く道はイギリスの道路行政区分上Unclassfiedに分類され,文字通りの名も無き道.なのでその入り口を探すのに若干苦労したが,その地帯の中にあるAbbeysteadという地名の入った立て看板を見つけ,そいつを辿って農場地帯を右に左に進む.雨は小康状態となったものの,気温は低く雲も低く,なんとも晴れやかではない気分.しかも農場地帯なのでトラクターが落っことしていった糞だか土だかわからない茶色い塊が道にはいっぱい落ちているし,キジ(とても多い)やら狐やらが路上でたくさん死んでるし,バイクで走るにはなんだかなあという感じ.ともかく気が抜けない走りであった.


ハイカーの起点.カフェスタンドがある

Packed Lunchの中身.

そうこうやってるうちに農場地帯は抜け,木々はまばらなものの,どうやらここがForestかなあというべき地帯に入っていることに気が付く.ただし本当に木は少ない.日本の林道だと左右は雑木林が続いたりするものだが,ここは全くそういうことはなく,いつもの芝生にぽつぽつと松の木が生えている程度.これがForestかなあと自分の考えを正しつつ,やっぱりこれって昔は森だったところをただ単に伐採しちゃってこんなになってしまったんじゃないかなあと疑ってみる.まばらであるとは行っても木は生えているわけで,ということはこの辺は木が生えるポテンシャルは持っているわけで,なのに生えていないってことは切ってしまってその後家畜が芽を食べてしまうので生えてこないだけか? この謎は日本の植生と比較してしまうと必ず出てくる問題なので,やはりイギリス環境史を調べないとなあという気が強くなる.

しばらくそういったまばらな林地帯を進んで行くと,カフェスタンドがあってまわりに車が10台ぐらい止まっている場所に出たので,とにかくここで昼飯を食べることにした.このカフェスタンドは人が集まるところならどこでも日本のたこ焼きの屋台ぐらいの出没率で出没する.売ってるものはほとんどどこも同じで,ハンバーガーやChips,ソーセージなどの食べ物とコーヒー,ジュースなどである.あんまり安くは無いが,寒くて冷え切った時には暖かいコーヒー(インスタントの場合も多い)を買うことの出来るカフェスタンドはありがたい.今回の場合は水筒にコーヒーもあるし,YHで買ったPacked Lunchもあるので用は無いけど.
Packed Lunchはあけてみると丸パンのサンドイッチ2個とりんごジュース,そしてりんご,あとはCrispとチョコバーがいくつかだった.これで3,4ポンドならそんなものかと落胆も喜びもせず淡々と食べる.食べるのだが時間が無いという意識があるので,全部食べることはなく,サンドイッチ一個とCrisp,ジュースのみ食べて後はおやつに残しておく.食べている間にも何台かのバイクが目の前を通り過ぎていく.みんなこれから下命が向かおうとしている方角から来るが,合羽など着ていないことから,向こうも雨は降っていないと確信.体は冷えてしまっているが,なんとか自分を奮い立たせる.日暮れまでにはPeak Districtを抜けねば.もう必死.ほんとにあの道は怖いんだって.

(3)Tractor集団
と,急いでBowland Forestは突破したのだが,ここでなんともイギリスらしい障害が現れた.NewtonからClitheroeへの道々,Vintage Tractor on Tourなどと称した看板を掲げて大量のトラクターが道を塞いでいるのである.いや,塞いではいない.ただただのろいだけである.トラクターだからただでさえ遅いのに,Vintageだからきっと最新式よりもっと遅いのであろう.ただ残念ながら私はトラクター通ではないので何がどうVintageかどうかわからなかったし,間近でオンボロトラクターやぴかぴかトラクターを見ても何の感慨も無い.ただ単に著しく通行を阻害するものである.などと,焦る気持ちから身もふたも無いことを考えたりしたが,まあ,好きにやっとくれ.そのかわり道はあけてね.最後はほぼあきらめ,トラクターの列に混じって沿道の人々の眼差しを一緒に受けながら,半ば凱旋するかのようにClitheroeの街に入る.


1.トラクターがやってくる

2.どんどんやってくる

3.まだまだくる

4.どしどし来る

5.ひたすらトラクター

6.これで終わりではなかった

(4)Peak Districtへ

林の中
大都市を走るのは嫌いなためManchesterの東をかすめ,Stalybridgeという街を抜ける.この時16時10分.ここを抜けたらPeak Districtの入り口の町であるGlossopまではすぐだった.A57,Snake Passに入っていく.ここはこの名前の通りくねくねしているのかなと思ってかつて期待して通ったことがあるがそんなにくねくねしていないのでがっかりした道.だが,ここは時と場合によっては恐ろしい.あんまりくねくねしていない田舎のA道路だと,制限速度は60マイル.100km/h弱.そしてイギリス人はおばちゃんもじいちゃんもきっちりこの速度を保って走る.経験上,滑りやすいとか暗いとかの理由で速度を緩めてくれたりすることを期待してはいけない.油断して50マイルそこそこだとぴったり後ろに付かれる.晴れていたらいいが,こんな雨の日にここを100kmで走るのはきつい.そして街灯もなく頼りないキャッツアイのみになる夜なんかもっと怖い.SZRのライトは暗いのでさらに怖い.よって,今日みたいな日に日が暮れてからここを走るのはいやだなあと思って昼間せっせと距離を稼いできた.
そしてなんとか,最悪の事態は回避でき,日のあるうちにやってくることが出来た.でも雨..前を走るおばちゃんのHONDAのJazz(日本名Fit,バイクじゃない)はきっちり60マイル.カーブでも手を緩めることなく若干ロールしながら60マイル.日本の県道並みの道幅でしかも雨なのに.後ろのRover75かなんかもきっちり迫ってくるので,バイクのこっちは転ばないように着いていくので必死.転んだら後ろのヤツに100km/hでひかれるんだよなと考える.いつも死ぬかも知れん状況を思い浮かべつつ,なるべくそうならないように手を尽くしながら距離をかせいでいく.こんな時は周囲の景色はやはりどうでもよくなる.3秒おきに覗くミラーと回転数,速度,路面以外はあんまり目に入らない(この時覚えているのは分けのわからない速度ですれ違ったFerrari).無事に走り抜けるために時として全神経を走るためだけに使う必要があるのがこの乗り物であり,その感覚は得がたく貴重じゃないかなあと思う.そして自分はそんな張り詰めた自分が好きだからいつも乗っているのだなあと思う.

まあしかし,後ろの車から見れば雨の中,大荷物を抱えたテンパッたあぶなっかしいヤツにしか過ぎないんだろうが,そんなことは知らん.こっちはとにかく必死なのだ.もうちっとは車間を空けとくれ.

2.到着
Peak District,Bakewell,Matlockを抜け,18時30分にDerbyの自宅アパートのガレージに到着.Matlockあたりで雨が上がり,気分もよくなり,若干凱旋気分でDerby入り.Peak Districtでの緊張感が解け,不思議な達成感とともにSZRをガレージにしまう.よかったよかった.イギリス初のお泊りツーリングは無事終了.距離的には496マイル(約800km)とあんまり伸びてはいないが,新しい発見と課題がいっぱいであった.Lake DistrictのHonister Passはまたゆっくり行こうと思える場所であった.一日中ローリングしてもいいと思う.夏にまた行くのだろうか.

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