<エピローグ>
松永零太郎様
拝啓 めっきり秋めいてまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
先日は、有藤君にご面会くださったとのこと、どうもありがとうございました。彼も大変喜んでおりました。最近では、漢字ドリルを始めたそうですよ、というのは冗談ですが。
彼の目論見に気付いてやれなかったこと、今でも大変悔いております。いえ、もしかしたら、心のどこかで薄々勘付いていたのかもしれない。しかし、わが身可愛さのあまり……。そんな気がしてなりません。
せめてもの罪滅ぼしと言ってはなんですが、彼ら(如月さんと鷹野さんの弁護もお受けしました)の量刑を少しでも軽くすべく、前進全霊で弁護してゆきたいと思っております。
先日、近江宇野グループの宇野会長と会食する機会がありました。その際、日本一の探偵はあなた様だと、会長はしきりにほめておられました。今となっては、どうでもいいお話かもしれませんが。
それではまた。皆様のご健康を心よりお祈り申し上げております。
敬具
2005年10月20日
美津島威
追伸 こちらの銘菓を別便にてお送りいたしました。ご笑納下さい。
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「――ですって。お父さん、美津島先生ったら、全身全霊という字を間違えていらっしゃるわ。お菓子のお礼に、漢字ドリルでも届けて差し上げようかしら。ねえ、どう思う?」
<了>