菜の花畑で春風を感じている準「もう、春なんだなあ」
第56話:仲直り
 今日は日曜日です。
 準はお昼ご飯のラーメンを食べながら、考えごとをしています。
 「どうした、準。あ、またもらしたのか?」
 「…今日は違うもん」
 お父さんの軽口にも、あまり乗ってきません。
 「学校でいやなことでもあったのか?」
 「ちょっとね…」
 「ふうん。…なあ、ご飯食べたら、ちょっと出かけないか」
 「うん、いいよ」

 昨日までの雨も上がり、とてもいいお天気です。準は、車の後部座席から、お父さんに話しかけました。
 「あのね、仲良しの友だち二人が、けんかを始めちゃったの。二人とも、もう口きかないとか言ってるんだ」
 「そうか」
 「それでね、ぼく、どっちの味方をしたらいいのかわかんなくて」
 「なるほど。で、準は二人のどちらが正しいと思うんだ?」
 「わかんない。どっちもどっちだと思うけど…」
 「じゃあ、準はどっちと仲良くしたいと思うんだ?」
 「二人とも好きだよ」
 「だったら、どっちとも友だちでいたらいいじゃないか」
 「だけど、間に入って大変なんだけど」
 「せっかく友だちになったんだから、どっちを選ぶとか感心しないな」
 「だったら、どうしたらいいの。二人を仲直りさせるなんて、ぼくにできるかなあ」
 「準は、今まで通り二人とも仲良くすればいいじゃないか。その二人だって、もともと友だちなんだから、そのうちきっと、前みたいに仲良しに戻ると思うけどな」
 「そうだねえ」
 準はこくりと頷きました。

 「ほら、着いたぞ」
 車を降りると、そこは一面の菜の花畑でした。
 「うわぁ、きれい」
 準は歓声を上げました。うららかな陽気のなか、春風が菜の花をなでて渡っていきます。準は、両手を広げて風を感じました。
 …明日、二人と話をしてみよう。
 なんだか、二人を仲直りさせることが、できそうな気がしてきました。準の気持ちのなかにも、そっと春が訪れたような、日曜日の午後でした。 

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