「どうも最近、サンタクロースってほんとはいないんじゃないかという気がしてきたよ」
準がぽつりと言いました。今夜はクリスマス・イブ。家族でケーキを食べた後のことです。
「そ、そんなことはないぞ、なあ」
「そうよ、ほほほほ」
お父さんとお母さんは、あわててそう言って、ぎこちなく笑いました。
どちらかというとおくての準も、もう4年生です。何でも無邪気に信じていた幼い頃と違って、そろそろ世間が見えはじめる頃なのです。
「どうして準はそう思うんだ?」
お父さんが訊きました。
「…だって、うち煙突ないもん」
準が答えました。
「な、なんだそんなことか。それなら、おまえ…。そう、準が寝てから、玄関から『こんばんはー』って来るんだ」
「えっ、そうなの?」
「そうそう。じゃないと、セコムしてる家だったら大変だろ?」
「ふうん」
どうも今一つ納得していないようです。
「ほらほら、準が信じていないと、来るものも来てくれないぞ。」
「…そうだね」
「準はプレゼントほしくないのか?。だったら、明日の朝を楽しみに待つんだね」
「うん!」
準はようやくにっこりとうなづきました。
「ほら、準ちゃん、窓を閉めなさい。寒いでしょ」
お母さんが言いました。準はさっきから外を見ています。
「はあい」
準は窓を閉めました。
「もう遅いわよ。早く着替えて歯を磨いて、おしっこして寝なさいね」
「うん。おやすみなさい」
準は二階の自分の部屋に上がっていきました。
準がほんとうにサンタクロースの存在を信じているのかは、お父さんにもお母さんにもわかりません。でも、それが誰であれ、準の枕元に、プレゼントを置いてくれる人がいるのは確かなのです。 |