サンタクロースを待つ準
第52話:クリスマスの夜
 「どうも最近、サンタクロースってほんとはいないんじゃないかという気がしてきたよ」
 準がぽつりと言いました。今夜はクリスマス・イブ。家族でケーキを食べた後のことです。
 「そ、そんなことはないぞ、なあ」
 「そうよ、ほほほほ」
 お父さんとお母さんは、あわててそう言って、ぎこちなく笑いました。
 どちらかというとおくての準も、もう4年生です。何でも無邪気に信じていた幼い頃と違って、そろそろ世間が見えはじめる頃なのです。
 「どうして準はそう思うんだ?」
 お父さんが訊きました。
 「…だって、うち煙突ないもん」
 準が答えました。
 「な、なんだそんなことか。それなら、おまえ…。そう、準が寝てから、玄関から『こんばんはー』って来るんだ」
 「えっ、そうなの?」
 「そうそう。じゃないと、セコムしてる家だったら大変だろ?」
 「ふうん」
 どうも今一つ納得していないようです。
 「ほらほら、準が信じていないと、来るものも来てくれないぞ。」
 「…そうだね」
 「準はプレゼントほしくないのか?。だったら、明日の朝を楽しみに待つんだね」
 「うん!」
 準はようやくにっこりとうなづきました。

 「ほら、準ちゃん、窓を閉めなさい。寒いでしょ」
 お母さんが言いました。準はさっきから外を見ています。
 「はあい」
 準は窓を閉めました。
 「もう遅いわよ。早く着替えて歯を磨いて、おしっこして寝なさいね」
 「うん。おやすみなさい」
 準は二階の自分の部屋に上がっていきました。

 準がほんとうにサンタクロースの存在を信じているのかは、お父さんにもお母さんにもわかりません。でも、それが誰であれ、準の枕元に、プレゼントを置いてくれる人がいるのは確かなのです。 

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