「・・・ん?。あ、ああっ」
準は、自分がおしっこをしてるのに気づいて、あわてて跳ね起きました。とっさにパジャマのズボンを脱いだのですが、もうあらかた出てしまった後で手遅れです。準はあきらめて、そのままおしまいまでしてしまいました。
冬なので、部屋のなかでも結構寒いのです。電気をつけると、ふとんからほのかに湯気が上がっています。
「あーあ。・・・やっちゃった」
またおねしょです。でも、いつも準の場合、明け方にして朝まで気づかないというパターンが多いのですが、やってる最中に目が覚めたというのは初めてです。おまけに時計を見るとまだ3時半。冷えた上に、寒くて面倒なので、寝る前にトイレに行きたいと思ってもそのまま寝てしまったのがいけなかったみたいです。
「どうしよう・・・」
服は着替えるにしても、ふとんはどうしようもありません。このまま朝まで起きてるわけにはいきません。
「はっくしょん!」
濡れたパンツはたちまち冷たくなりました。それでなくても寒いのに、このままでは風邪をひいてしまいます。準はパンツを脱ぐと、そっと部屋を出ました。
「おかあさん・・・」
準はお父さんとお母さんが寝ている部屋のドアを開けると、小さい声でお母さんを呼びました。
「どうしたの・・・」
お母さんは、半分寝たまま返事をしました。不思議なもので、母親というのはどんなに熟睡していても、我が子の声だけは聞こえるものなのです。
「おしっこ・・・」
「ひとりで行けるでしょう」
お母さんは目をつぶったまま答えます。
「・・・もう出ちゃったの」
「えっ」
見ると、びしょぬれでパンツもはいていない準が立っています。半べそで寒そうにふるえています。
「あらあら・・・。さあ、こっちに来なさい」
お母さんは起きあがると、脱衣所へ準を連れていきました。パジャマの上を脱がすと、タオルで体を拭きました。
「明日の朝、お湯を沸かすからもう一度拭くのよ」
そう言うと、替わりのパンツとパジャマを出してきました。準は手早くそれに着替えました。
「押し入れから別のふとん出すのも大変だし・・・。お母さんのふとんでいっしょに寝る?」
「うん」
準は即座に返事をすると、先にふとんに潜り込みました。お母さんのふとんはとても暖かく、懐かしい匂いがします。あとからお母さんが入ってきて、すっかり冷え切った準を温めるように、ぴったりと体をくっつけました。こうして同じふとんで寝るのは久しぶりです。準もだいぶ大きくなって窮屈ですが、寝れないことはありません。
「もうおふとん濡らさないでよ。寝るところなくなっちゃうから」
お母さんが笑いながら言いました。
「大丈夫だよ・・・たぶん」
「もう・・・。夕べ、寝る前にちゃんとトイレに行ったの」
「ごめんなさい」
「だめでしょう。今度したら、おふとん入れてあげないからね」
「・・・・・・」
準の返事がありません。もうすっかり安心しきって、すやすやと寝息を立てています。お母さんも、息子の体から漂ってくるほのかなおしっこのにおいに包まれて、眠りにつきました。
翌朝、準が目を覚ますと、もうお母さんは起きていました。ふとんを抜け出して自分の部屋に行くと、脱ぎ散らしたパンツやパジャマ、びしょぬれのふとんはもうきれいに片づけられていました。まるで、夕べのことは全部夢だったみたい・・・。
「準ちゃん。お湯を沸かしたから着替える前にちゃんと拭きなさい」
お母さんに言われて、やっぱりあのおねしょは現実だったんだと思いました。
「う、うん・・・」
寒いし面倒なので、準はちょっとイヤそうに返事をしました。
「おしっこ臭いってみんなに笑われてもいいの?」
お母さんが笑って言いました。
「はあい」
準は照れ笑いを浮かべて返事をしました。おねしょは冷たくて気持ち悪いけど、お母さんのふとんで寝れるんならそれも悪くないなと、ちょっとだけ思う準くんなのでした。
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