今日は七夕です。
準は色紙を切ったり貼ったりして、七夕飾りをつくりました。
お願いごとを書いた短冊も、いっぱいつけました。
「あら、きれいにできたわね」
窓の外に竹を立てていると、お母さんがほめてくれました。
「ねえ、チカチカする電球、出してよ」
「バカねえ。それはクリスマスツリーでしょ」
「そうだっけ。エヘヘヘ・・・」
これに電飾つけたらさぞきれいだろうなと思ってた準は、ちょっとがっかりです。
「アルタイルとベガ、あっちの方かなあ」
準は東の方の空を見ています。でも、まだ梅雨のさなか。今日もどんよりと曇っていて、星ひとつ見えません。
「ねえ、あのふたり1年に一回しか逢えないんでしょう。なんかかわいそうだねえ」
「でも、雲の向こうで逢ってるんじゃないの。誰にも見られなくて喜んでるかもね」
「そうか、そうだねえ」
そのとき、準はふと思い立って、お母さんに言いました。
「ねえ、この夏休み、蛍くんのうちに遊びに行ってもいい?」
準には蛍くんという親友がいます。でも、遠くに住んでいるので、手紙をやりとりするだけで直接逢ったことがないのです。それでもふたりは仲良しです。
「いいけど、ひとりで遠くへ行けるの?」
「平気だよ。ぼく電車のことよく知ってるし」
「でも、よそのうちにお泊まりできるの?」
「・・・だ、大丈夫だよ」
「くまちゃん抱っこしてたら、蛍くんに笑われるわよ」
お母さんは笑ってそういいましたが、準はちょっと心配になってきました。でも、不安よりも蛍くんに逢いたい気持ちが勝っています。準は決心しました。
「ぼく、がんばってみるよ」
「そう。それならお父さんから蛍くんのお父さんに話してもらうわ。あちらのご都合があるからどうなるかわからないけどね」
「うん!」
なんだかこの夏休みは、準にとって忘れられないものになりそうです。
寝る時間です。準はパジャマに着替えて窓の外を見ています。
「あら、くまちゃんは卒業したんじゃなかったの?」
準がくまちゃんを持っているのを見て、お母さんがそう言いました。
「でも、こいつが寂しがるといけないし、うちにいるときはいっしょに寝てやろうかな、なんて・・・」
「ふふふふ。早く寝なさいね」
「はあい」
お母さんが行ったあと、準はもう一つ短冊を飾りました。それにはこう書いてあります。
”蛍くんにあいたい!”
「ぼくのお願い、叶いますように」
曇り空に向かって、準はそっとつぶやきました。 |