おふろにはいる準
第12話:父の日
 「お父さん、ぼく大変なことしてしまった・・・」
 日曜日の夜、夕食後お父さんがくつろいでいると、準が話しかけてきました。
 「またもらしたのか」
 「そ、そうじゃなくて・・・」
 お父さんは軽口をたたきますが、準は真剣な顔です。
 「どうしたの?」
 「あの、ほら、今日は父の日でしょ」
 「そうだっけな」
 「で、いろいろプレゼント考えてたんだけど、いいの思いつかなくて。お小遣いもうないし、肩たたき券とかは月並みだし・・・」
 「そうか・・・」
 「ごめんなさい」
 準はお父さんに謝りました。
 「ようし、準、裸になれ」
 「へ?」
 「いっしょに気持ちいいことしよう」
 「お、お父さん?!」

 「どうだ、準。気持ちいいだろう」
 「ああっ、とてもいい感じだよ」

 ・・・って、別にお父さんが趣味に走ったわけではありません。二人はいっしょにおふろに入っているのです。お父さんは、息子の背中を流してやりながら言いました。
 「準、おまえ垢だらけだぞ、ちゃんと洗ってるのか。風呂でなにやってるんだ」
 「え、・・・まあいろいろとね」
 「お母さんとは、一緒にはいってるんだろ」
 「う〜ん、時々だけど・・・」
 お父さんは準の背中にお湯をかけてやりました。
 「よし、今度は準がやってみろ」
 「うん」
 スポンジにたっぷり石鹸をつけて、今度は準がお父さんの背中を洗います。
 「だめだめ、もっと力入れなきゃ」
 「うん」
 準は、力を込めてこすりました。
 「お父さん、ごめんなさい」
 「え、何が?」
 「ほら、父の日のこと・・・」
 「ああ、それだったら、今やってくれてるのがプレゼントだよ」
 「・・・?」
 「こうやって息子とスキンシップが楽しめるなんて最高だよ。またいっしょに入ろうな」
 「うん!」
 
 その日の学校に出す日記に、準はこう書きました。
 − 今日ぼくは、お父さんとおふろでサロンシップしました −
 ・・・言葉の意味はわかってないが、お父さんが喜んでくれてとてもうれしい準くんでした。

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